ラワン・ラドワン
ジェッダ:サウジアラビアの紅海の港町ジェッダでは、待望の再開発計画によりまもなく大規模な模様替えが行われる。2020年代末までに美しい沿岸都市ジェッダを世界で最も暮らしやすい都市の一つに変身させることが狙いだ。
12月にムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下により発表された200億米ドル規模のジェッダセントラルプロジェクトでは、アル・サラム宮殿から市の水処理施設へと北に向かって伸びる、景観の美しいウォーターフロント近辺の570万平米の土地を再開発し、活性化する。
この再開発計画には最先端の海洋水族館、オペラハウス、スポーツ競技場に加え、17,000戸以上の住居、2,700室のホテル客室、マリーナ、ビーチ、またプロジェクト区域の約40パーセントを占める緑地の建設が含まれる。
フェーズ1では遊歩道沿いに埠頭、マリーナ、公園、遊び場が整備された、ジェッダでも最大級の公共ビーチが建設される。これらはすべて2027年までに完成予定となっている。
フェーズ2は2030年までに完成予定で、緑地、革新的な教育施設、モダンと伝統を組み合わせたデザインのモスク、図書館、サンゴの湾、スマートテクノロジーが備わった博物館等の主要施設が含まれる。
プロジェクトのウェブサイトによると、2030年以降に予定されるフェーズ3では施設がさらに充実し、最高国際基準で設計された医療施設が加わるとともに、イノベーションと文化をテーマとする地区で世界レベルの経験が提供されるようになる。
ジェッダの歴史は、小さな漁村であった約3000年前にさかのぼる。それから何世紀も経て、ジェッダは大規模な国際港、主要巡礼ルートの一部、そしてそれ自体が文化・商業の目的地となった。
ヒジュラ紀元、預言者ムハンマド死後の第3代カリフの時代、ウスマーン・イブン・アッファーンがジェッダを聖地メッカへの玄関港と宣言した。しかし、1925年にヒジャーズのイブン=サウード(アブドゥルアズィーズ王)によりサウジアラビア建国のためナジュドの王国に併合されるまで、ジェッダは然るべき注目を浴びなかった。
ジェッダセントラルプロジェクトの開発担当者らはジェッダの豊かな歴史や独特な文化的アイデンティティからインスピレーションを得るとともに、現代の多様性にも敬意を払い、世界的な目的地としての未来の可能性を意識した。
昔からある市の水処理施設や公立病院、24,000人を収容可能なサッカースタジアム等の既存のランドマークは保存かリニューアルを行うか、別の用途に建て変える予定だという。
「水処理施設のあるエリアは他のランドマークと同様に国家所有地であり、国家所有地の証書は公的投資基金(PIL)に移譲されているため土地収用は一切行われていません。当社はPILが所有する会社で、570万平米におよぶ国家所有の敷地を使用する権利を有しています」と、 ジェッダセントラル開発会社(Jeddah Central Development Company)の最高経営責任者、アハメド・アル・スライム氏はサウジアラビアのニュースチャンネル、Al-Ekhbariyahのインタビューで語った。
水処理施設は王国の産業遺産や長年にわたる淡水の探求、そして海との関係に関する展示を行う博物館へと改築される。
再開発の目玉のひとつに位置付けられている海洋水族館は紅海とその自然環境、エコロジー、海洋生物を称えるものとなる。ジェッダを海洋環境保全の地域的および世界的リーダーとして確立させる一助となることを狙う。
サウジ人建築家のムサイド・アル・ガムディ氏にとっては、このユニークな再開発現場からいかに最大の価値を引き出すかが最重要課題だ。氏はアラブニュースに対し、ジェッダセントラルプロジェクトの敷地は高台にある、市内でも最も洗練された政府所有の土地区画の一つであり、250億米ドル以上の価値に相当すると語った。
再開発の一部として建設される生活インフラや施設はこの地域にさらなる収益をもたらし、住民の生活水準向上に寄与すると、氏は述べた。
すでにいくつかの再開発プロジェクトが進行する中、アル・ガムディ氏はジェッダセントラルプロジェクトの目的の一つは新世代の若いプロフェッショナルのニーズに応える住居を提供し、都市の生活水準を全体的に向上することだと考えている。
「市や区域の都市開発の改善や調整を行えば、人々の周辺環境に対する態度や考え方にポジティブな影響をもたらし、コミュニティのすこやかな暮らしにつながることがわかります」と、氏は語った。
プロジェクトに入札した200社以上の企業のうち、最後は大手国際開発企業4社に絞られた。最終的には、ジェッダを拠点とするホサム・アルアブドゥルカリーム建設エンジニアリングコンサルタンツ(Hosam Alabdulkarim Architectural and Engineering Consultants)がプロジェクトの4つの契約の一つを手にした。
再開発される区域は住民および観光客に向けた施設を擁する6つの地区に分割される。海岸沿いでは、マリーナ地区に紅海を見下ろす緑地、娯楽施設、小売店、レストラン等が建設される。
またウォーターフロントでは、ビーチ地区に砂浜の海岸線や、来場客を多数の娯楽・レジャーや飲食施設に導く遊歩道が整備される。スポーツ地区には住民が健康的でアクティブなライフスタイルを享受できる公園や中庭、広場が作られる。
活気ある文化・創造地区はアートやイノベーション、サステナビリティの促進・支援に寄与し、一方健康地区では医療施設や診療所、研究施設が提供される。
そして中央地区は、国内・海外からの観光客がジェッダの都会的な雰囲気を楽しめるハブ(中心)の役割を果たす。
「ジェッダは長年成長を遂げてきた一方、都市計画に関しては常に致命的な問題を抱えていました」とアル・ガムディ氏は語る。
「公共交通を改善し、地域の公園やサービスへのアクセスを改善し、計画に緑地を組み込み、住民のニーズや要件に基づいて都市空間や公共空間を良好な状態に維持すれば、住民の生活の質が上がります」