
東京: 日銀の黒田東彦総裁は、米中の予備的な貿易協定により世界経済の見通しは明るくなったと述べた。しかし日本の景気回復に対するリスクは依然として高いと警告した。
黒田総裁は、超低金利の長期化が金融機関に打撃を与えていることから、日銀がどれだけマイナス金利を拡大できるかには限界があると述べ、景気刺激策をすぐに拡大する考えがないことを示唆した。
大量資産購入の副作用を緩和する取り組みの一環として、日銀は4月、保有する上場投資信託 (ETF) の一部を貸し出す制度を発表した。
黒田総裁は「確かに海外リスクについては前向きな動きが見られる」と述べ、ブレグジットの混乱に対する懸念が弱まったことや米中の協議が進展していることを歓迎した。
「物事は前進しているが、不確実性は依然として高い。まだ日本経済の下振れリスクに対して警戒が必要」
日銀が短期金利目標をマイナス0.1%、10年債利回りをゼロ%に据え置く決定をした後、黒田総裁は語った。
また日銀は、日本経済が「基調としては緩やかに拡大している 」として判断を据え置き、12月5日に公表された政府の1,220億ドル規模の経済対策により、成長が加速するとの見通しを示した。
しかし日銀は工場生産については悲観的だ。
「工業生産が主に自然災害が原因で減少している」として10月以降、見通しを下方修正した。
こうした判断をすることで、日本は米国連邦準備制度や欧州中央銀行と歩調を合わせている。
東短リサーチのチーフエコノミスト・加藤出氏は「連邦準備制度理事会はおそらく利上げも利下げもしないため、日銀が来年の間に政策を変えることもなく、円は安定した動きを続けるだろう」と述べた。
超低金利の長期化で金融機関の収益が悪化したにもかかわらず、紙幣の大量増刷を長年行っても、日銀が目標とする2%のインフレ上昇を達成できていないため、大規模な景気刺激策を維持せざるを得ない。
安倍晋三首相の経済指南役である浜田宏一氏は日銀のマイナス金利政策を批判し、金利が低すぎると警告した。
黒田総裁は日銀の金融緩和に限界が来ているとの見方に反論し、マイナス金利の拡大は日銀の政策オプションの1つだと述べた。
ロイター通信