
ヌール・アルシャエリ
リヤド: パンデミックが一段落した今、サウジアラビアにおけるビジネスのあり方に、フィンテック新企業が変革の風を巻き起こしている。
キャッシュレス決済の促進から財務データ分析、融資の提供まで、こうした企業は従来の銀行業務に代わる、よりシンプルでカスタマイズされた選択肢を提供している。
「サウジアラビアの GDP は驚異的です。サウジでビジネスを展開すればより大きな成功が望めます。エジプトの10倍、UAEと比較すれば少なくとも5倍のポテンシャルがあります」と、FlapKapの共同設立者兼CEOであるアフマド・クーチャ氏はアラブニュースに語っている。
エジプトを拠点とするFlapKapは、AIベースの知見と財務データ分析を提供しており、サウジアラビアへの進出を計画している。
同社はEコマース企業に最先端の知見を提供することで、顧客の広告費を最適化し、利益を最大化している。
また、広告費の支払い方法を柔軟に設定することで、現金の制約を受けずに持続的な成長を実現している。
また、ヨルダンのオンライン決済会社であるHyperPayも、サウジアラビアで存在感を発揮している革新的なフィンテック企業だ。
HyperPayは最近、サウジアラビア中央銀行(SAMA)の完全子会社であるSaudi Paymentsから技術許可を得た。
この技術許可により、電子決済サービス事業者は、国内のすべてのATMと販売所を結ぶ中央決済システムであるMadaを利用できるようになった。
「サウジアラビアでは、何年にもわたってきちんとしたデジタルインフラを整備してきた結果、今ではデジタル決済を導入する準備が整っています。だからアラブ諸国のどの国よりも先を行っているのです」とHyperPayの共同設立者兼CEOであるムハナド・エブウィニ氏は述べた。
ここ最近、フィンテック分野では大きな牽引力が生まれている。2018年に立ち上げられた「Fintech Saudi」プログラムの一環として、SAMAが新規プレーヤーや新製品の参入を許可し、この分野の発展を促進してくれているおかげだ。
フィンテック企業の国内外での競争を後押しすることを目的としたこの取り組みは、現在実を結び始めている。金融の安定性を高め、サウジアラビアの経済発展を支える革新的な企業が増加しているのだ。
Fintech Saudiのレポートによると、2017年から2019年にかけてのフィンテック取引額は前年比18%以上増加し、2019年には200億ドル超に達した。
大手金融機関と競合する第一世代の起業家が増えていることから、同レポートは、2023年には取引額が330億ドルを超えると予想している。
さらに、投資案件の平均規模が世界平均の730万ドルに対し270万ドルと、成長の余地も十分にあることが明らかとなった。
また、以前は貨幣の安全性を確保するために複雑な規則や規制によって管理されていた金融業界が、劇的に変化していることも注目すべき点だ。Fintech Saudiは、真っ向からこの問題に取り組んだ。
金融庁は現在、新興企業に対して規制を丁寧に説明し、より簡単にSAMAから営業許可を取得できるようにすることで、新興企業を支援している。
その結果2021年の最初の8カ月間で16件、総額1億5,720万ドルの取引が行われ、フィンテック分野へのベンチャーキャピタル投資が大幅に増加した。2021年には、フィンテックの新規立ち上げが前年比37%増となった。
このようなフィンテック企業の急速な増加を踏まえ、SAMAと資本市場監督庁は先月、リヤドに世界初となる「金融技術センター」を開設した。
リヤドのキング・アブドゥラー金融街に位置するこの施設は、こうしたフィンテック新興企業に投資機会を提供することを目的としている。サウジアラビアに拠点を置くフィンテック企業の展望が、今や格段に明るくなっていることは間違いない。
先月、サウジアラビアに拠点を置く個人向けローンのデジタル仲介業者であるAribは、ベンチャーキャピタルのMerak Capitalが主導するシードステージの投資ラウンドで、230万ドルを調達した。
フィンテック企業であるAribは、獲得した資金をもとにSAMAが定める要件を満たし、ライセンス取得手続きを完了させ、ポートフォリオに新サービスを導入する予定だ。
2019年に設立されたAribは、ユーザーの信用プロファイルに合わせた自動車ローンプランを提供しており、簡単に融資が受けられる。
「サウジアラビアは、特に金融技術分野における大きな技術革新と、デジタルトランスフォーメーションの著しい成長を目の当たりにしています」とAribのCEOであるワリド・タラート氏は語り、サウジアラビアを覆う変革の暖かい風が吹いているのを確信した。