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フランクリー・スピーキング:世界経済フォーラム(WEF)総裁ボルゲ・ブレンデ氏は語る

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23 May 2022 03:05:31 GMT9
23 May 2022 03:05:31 GMT9
  • WEF総裁は、イランとイスラエルによる違反行為は、ウクライナで行われているものとは比較にならないという見解を示している
  • ブレンデ氏は、現在の戦争がモスクワ版「アフガニスタン紛争、もしくはベトナム戦争」として終わる可能性があると考えている
  • 「世界規模の課題には、世界規模の解決策が必要」であるとして、ダボス会議はこれまで以上に適時なものに

アラブニュース

ダボス会議:世界経済フォーラムの総裁は、ジュネーブに本拠地を置くこの組織が、今年のダボス会議にロシアの高官や企業を招待しない一方で、ウクライナの指導者に、会議出席者に向けた演説を行なうための招待状を送ることによって、モスクワに強いメッセージを送っていると述べた。

「ロシアに関して言えば、私たちは、ロシアの企業や政府関係者を招待しないことにした。何事にも限界というものがある」と、ボルゲ・ブレンデ氏はアラブニュースのトーク番組「フランクリー・スピーキング」で、主要な政策立案者やビジネスリーダーへのインタビューを担当するケイティ・ジェンセンに語った。

「ロシアは基本的な人道法も国際法も破っている。彼らは国連憲章を守っておらず、私たちは多くの残虐行為を見てきた」

そう語ったブレンデ氏は、同時に、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領だけでなく、彼の大臣のうち何人かも「ビデオで」世界経済フォーラムに参加することになるだろうと述べた。

「キエフからは、副首相が2人参加することになっている。外務大臣も対面でダボス会議に参加する」と彼は述べ、「国の再建を確実にする」ために、何人かの最高経営責任者が集まって、ウクライナのためのCEOグループを結成する予定であることも語った。

世界経済フォーラムの決定が正しいことであると説明しながら、彼はこう述べた。「これを解決する鍵は、ウラジーミル・プーチン(大統領)とクレムリンにある。また以前のようにダボス会議に彼らを招待する前に、彼らが再び国際法を遵守するための手段を講じていることを確認する必要がある。私たちはこういった状況下で、そのような合図を送らなければならないという強い道徳的義務も負っている。

ブレンデ氏が「フランクリー・スピーキング」に出演したのは、新型コロナウイルス感染症の流行が始まって以来、初めて対面式で開催される世界経済フォーラム年次総会の前夜祭である。このイベントが日曜日に始まり、5月にダボスで開催されるのは初めてのことだ。

彼は、公平性と橋渡し役としての評判を誇る組織にとって、ある一方を招待しないという決定は、世界経済フォーラム側が議論を促すことに失敗しているに等しいと否定した。

ブレンデ氏は、過去50年間、世界経済フォーラムが常にリーダーを集めようとしてきたのは事実だが、「限界もある」と述べた。

「ウクライナでは戦争が続いており、私たちは毎日、子どもたちが学校で殺されているのを目にしている。女性がレイプされているのも見ている。戦争犯罪が行われているのを目にしているのに、そこには対話の意志がないのだ」と彼は述べ、次のように続けた。

「ダボス会議は、共通の解決策を見出そうとする意欲を示すものであり、少なくとも各国が腰を落ち着けて将来を議論しようとする意欲があれば、それは別のものになる。しかし、今日、ロシア側からはこのような意欲が全く感じられない。だから私たちは、この対話ができないことを非常に残念に思っている。将来的にはうまくいけばいいが、今はとても無理だ」

ノルウェーの元外務大臣であるブレンデ氏は、イスラエルがパレスチナの市民に行っている残虐行為に対する非難と、ウクライナでロシアに向けられている非難を比較することを避け、多くのヨーロッパ人にとって、ウクライナはより身近なものとして見られているからではないかとの指摘もした。

「現在ウクライナで起きていることは容認できるものではなく、戦争は未だ続いている」と彼は繰り返し述べ、ロシアを年次総会に招待することが、例えばイスラエルやイランを招待することと同じではない理由を次のように説明した。

「イスラエルとパレスチナ地域の状況に関しては、少なくとも対話の意志がある。アブラハム合意を通じて見てきたが、ダボス会議では、イスラエルとパレスチナ双方のビジネスリーダーを集めて、『行き詰まりを打開する(Breaking the Impasse)』と呼ばれる新しい提案を行っている。そして、彼らは世界の政治家だけでなく、これらの地域の政治家と一緒にそこに座り、二国家解決策を確立するために進むべき道があるかどうかを議論しているのだ。少なくとも、対話は行われており、私たちは将来の解決策を期待している」

最近ロシアに課された制裁は、この紛争を終わらせるのに十分だと思うか、それともNATOの拡大が解決策になると思うかを問われ、ブレンデ氏はこう答えた。「ロシアはウクライナ軍の強さに驚いていると思う。彼らは首都キエフを2〜3日で掌握するはずだった。第2の都市ハリコフも2〜3日で掌握するはずだった。ウクライナ人の抵抗を目の当たりにした彼らは、きっと驚き、だからこそ撤退もしたのだろう」

今後数ヶ月、ロシアは攻撃を続ける可能性が高いとブレンデ氏は語った。「しかし、ウクライナの戦争は対ロシア版ベトナム戦争、あるいは対ロシア版アフガニスタン紛争といったものに簡単に化けるかもしれない」と彼は述べ、次のように続けた。

「自由を求めるウクライナ人のように、4000万人以上の人々が強く抵抗しているとき、それはロシアにとって極めて大きな難題となる。これは、非常に近代的で強力な軍隊であっても、世界中で自由と闘う人々を殺すことはできないということを示している。それは、多くの国が持ち帰り、反省すべき教訓だと思う」

ダボスでの年次総会は、著名人や世界のリーダーが「再会を果たし、見識を共有し、新鮮な視点を得て、問題解決のための共同体や新構想を構築する」ための「ユニークな協力環境」を提供すると、世界経済フォーラムは述べている。しかし、批評家たちは、むしろこのイベントが、あらかじめ用意された台本に固執する政治家たちを紹介するショーになっていると言う。

ブレンデ氏は、今年の会議では、多くの重要なテーマで進展が見られるだろうと反論した。「例えば、気候変動対策に関しては、新しい連合体ができるだろう」と彼は述べ、次のように続けた。

「私たちは貿易と投資にも力を入れる。貿易の回復なくして真の経済回復はないと理解しているからだ。だからこそ、30人の貿易大臣が(世界貿易機関事務局長のンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏)と共に、新しい関税を課さないことや保護貿易を行わないこと、食品の輸出禁止を行わないことを表明することが非常に重要だ」

「私たちが直面している課題の多くは、ビジネスを抜きにして売ることはできない。だからこそ、ダボス会議の1,400人のCEOや会長と共に、歩みを重ねて行くことができると確信している」と語ったボルゲ氏は、「参加者の25%が女性だ。本来なら50%にすべきだったが、それでも私たちは前進している」と付け加えた。

今週の紙面で、ダボス会議は正しいイメージを与えていないと語ったフィナンシャル・タイムズ紙が最近主張した、「ダボス会議には認識の問題がある」という意見にブレンデ氏は反論した。

「私たちは、あらゆる分野のリーダーを集めることができると思う。批判的になるのは簡単だが、世界経済フォーラムがポジティブな影響を与えていることも、過去に証明されていると思う」と彼は述べ、次のように続けた。

「例えば、GAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)が(2001年に)世界的に発足したのも、ダボス会議においてだった。(反アパルトヘイトの象徴である)ネルソン・マンデラ氏が初めてヨーロッパにやってきて、南アフリカの経済計画を立ち上げたのもここだ」

「今度の会議では、弱い回復が新たな不況に終わらないようにするにはどうしたらいいかということが、本当に重要だ。グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)から、私たちは確実に歩んでいかなければならない。120人のビジネスリーダーが、2050年までにネットゼロを実現することを約束するだろう。このように、企業と政府のリーダーが一堂に会し、変化をもたらす場がまさにここなのだ」

世界中の選ばれた2,500人がダボス会議に集う中、ブレンデ氏は、「世界規模の課題には、世界規模の解決策が必要だ」と、今年の会議がこれ以上ないほど適時であることを語った。

「残念ながら、世界は二極化しており、戦争や、気候変動、そして景気回復の弱体化を解決するための協力はあまり見られない。しかし、ダボス会議では、リーダーを集め、少なくとも民間部門を動員し、これらの非常に重要な分野を支援するよう努力したい」と彼は述べた。

ブレンデ氏はまた、新型コロナウイルス感染症の流行が続いている現実を認め、「次の病気の流行に備えることが非常に重要だ。なぜなら今後数十年の間にも、残念ながら新しい病気やその大流行を見ることになるからだ」と述べた。

「私たちはより自然に近づいた。この10年間で、メキシコの国土と同じ大きさの原生林が世界中で失われ、動物と人間はより近い存在になった。そして、このような病気も増えることだろう」

「そして、忘れてはならないのは、私たちはまだこの危機を脱していないということだ。世界第2位の経済大国である中国は、現在、一部の都市封鎖を行っており、国内のいくつかの大都市が封鎖されている。中国の成長が鈍化しているため、世界経済にも影響を与え、中国からの需要も当然減っていくだろう」

将来を見据えながら、彼は次のように述べた。「今回のパンデミックから学ばなければならないことは、薬をあらかじめ用意しておくことや、医療機器を以前よりずっと近くに置いておかなければならないということだ。何週間もそれらの到着を待っているわけにはいかない。ワクチン接種を迅速に行う必要があるだろう。私たちは、自分たちが大きな代償を払ったことを知っている。このパンデミックによって、これまでに1,500万人が命を落としたのだ」

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