• KAUSTとACWAパワーのパートナーシップは海水淡水化における太陽エネルギーの導入を加速する
• 二酸化炭素削減の解決策を求めて、企業指導者はサウジアラビア王国のトップ研究大学を熱心に活用している

カリーン・マレック

ドバイ：経済界と学術界は相互に排他的であるとみなされることが非常に多い。だが、国家がかつてなく増加する人口の需要を満たしながら、大規模に実現可能な気候変動危機の解決策を探し求める現下の状況では、この2つの勢力の取り組みを一体化する試みは間違いなくメリットがある。

例えば、ACWAパワーとサウジアラビアのキング・アブドゥラー科学技術大学（KAUST）が最近締結したパートナーシップでは、持続可能な海水淡水化における太陽光発電の大規模利用に向けた新たな研究が既に実施されている。

先月、両組織の合同代表団は、第一級の企業経営者、イノベーター、研究者を招き、太陽エネルギー、グリーン水素、人工知能、海水淡水化の専門知識を披露してもらうためのプラットフォームである、イノベーションデイズの第1回会合を開催した。

このイベントでは、グリーンエネルギー源や海水淡水化プロセスが直面する重要な課題について、同プロセスにおける再生可能エネルギーと水素の統合を推進する持続可能な技術の採用を加速する方法などが討議された。

「当社は地域のイノベーションシステムに参加し、地域の一流大学を見極めてこのイノベーションの歩みを開始しました」と、ACWAパワーのイノベーション・新技術担当エグゼクティブバイスプレジデント、トーマス・アルトマン氏がアラブニュースに語った。

サウジアラビアの公的投資基金が所有し、リヤドに本社を置く同社は、MENA地域で発電、海水淡水化、グリーン水素の開発・投資・運営に携わる大手企業である。KAUSTはサウジアラビア王国有数の教育研究機関である。

2019年以来、両組織は「海水淡水化と太陽光発電に関するKAUST-ACWAパワー・センター・フォー・エクセレンス」という研究開発ハブを共同で運営している。

「当社から見てKAUSTにはいくつか利点がありました」とアルトマン氏。「（当初の活動領域は）海水淡水化と太陽エネルギーにおける協力でしたが、今は既に新たな領域へと協力を拡大しています。元々は、当社のプラントの操業効率を高めることを目指していました」

このパートナーシップを通じて既に操業と設計の段階的改善を実現できている、と同氏は付け加えた。

「設計を大幅に改善することができました。アカデミズムの支援により、ラボ試験やパイロット試験を実施し、いくつかのテーマについて非常に深く掘り下げることができました」と、アルトマン氏は述べている。

地域の専門家によると、こうしたパートナーシップは学術界と産業界の素晴らしい融合を表しているという。中東太陽光産業協会（MESIA）の戦略アドバイザーを務めるアブヘイジット・シンハ氏は、このような取り決めは相互に利益になると述べた。

「KAUSTの研究者の側では、自分たちの仮説を検証するための実地の試験設備を手に入れることができます。一方、ACWAパワーの側では、外部の大規模研究開発施設の恩恵を得ることができます」と、同氏はアラブニュースに語った。

「成功の重要なカギは、ときに理論的でもある学者の大胆なアイデアと、産業プレーヤーが求める経済価値のバランスをとることです」

同じくMESIAの戦略アドバイザーであるラエド・ブカイラット氏は、このパートナーシップには、きわめてエネルギー集約的なものになり得る海水淡水化プロセスを、より持続可能なものへと移行させる研究を加速させる利点もあると考えている。

「現在の商業的ソリューションのままでは、世界的に見て、海水淡水化はカーボンフットプリントをかつてなく増加させ、生態環境への影響は増大します」と、同氏はアラブニュースに語った。

「このようなパートナーシップは、緩和策に留まらず、最小限のカーボンフットプリントで淡水を製造できる新たな解決策をもたらすのに役立つでしょう」

サウジアラビアは中東北アフリカ地域最大の海水淡水化市場の1つである。王国の国民と農業部門の淡水需要を満たすために、毎年約20億立方メートルの水が淡水化される。

ブカイラット氏は、KAUSTのような先端的研究機関の取り組みと淡水化業界の主要プレーヤーという組み合わせが、2060年までに正味排出量ゼロというサウジアラビア王国の目標実現に向けたカギになる可能性があると考えている。

「産業プレーヤーと研究機関を結び付け、緊密な対話を通じてKAUSTの科学者が実施する研究を方向づけ誘導するというモデルは、適切なものだ」と、同氏は述べた。

「業界は新技術の導入が可能になり、実験室と現実の場での実施との間に見られる乖離も埋められます」

「このようなモデルは広範に採用されるようになっており、研究大学の側では、影響力の拡大、新たな資金源の確保、産業パートナーへの技術的・商業的優位の提供に役立っています」

サウジアラビアは、国内エネルギー需要を石油とガスに依存する度合いの低減を目指して、再生可能エネルギーへと移行しつつある。当局は、同国の太陽エネルギーの総発電容量を現在の455メガワットから、2025年までにほぼ40ギガワット増やすことを目指している。

この実現に向けて、政府は研究大学に大胆に投資するとともに、海外投資家と国内起業家の双方がグリーン投資や持続可能なソリューションの市場を活性化させるビジネスチャンスを促進している。

このような環境を促進するためにもっと多くのことができる、と企業指導者は考えている。例えば、アルトマン氏は、王国として、ACWAパワーのような企業が新技術をサウジアラビアに持ち込み、当初は小規模展開できるようなプラットフォームを構築すべきであると考えている。

「新プロジェクトでは、開発業者が総容量の1パーセントまで新技術を導入できるようにすることを、当社は提案しています。そのようにすれば、当社は新技術を持ち込み、その後に規模を拡大し、さらに発展させ、成熟度を高めることができます」

「これにより、その多くが再生可能エネルギーと直接結び付いているものですが、新興技術を活用して直ちにサウジアラビア国内での化石燃料の燃焼を削減し、送電網への依存も減らすことができます」

企業と先頭集団の科学者の結び付きを促す、3月に開催されたようなイノベーションデイズは、王国に優れてイノベーティブな環境を構築する上で非常に重要であることが判明する可能性がある。

「主要な関係者は、大学、起業家、当社のような企業、そして政府です」と、アルトマン氏は述べた。

「当社は多くの社内イノベーションを手がけてきましたが、今では技術イノベーションのリーダーも目指すようになりました」

このようなイノベーションの一例が、多くの専門家から未来のクリーンエネルギーとみなされている、水素による電力供給である。太陽エネルギーを使用して製造されるグリーン水素は、サウジアラビア北西部の紅海沿岸で現在具体化しつつあるNEOMメガシティプロジェクトにおけるエネルギー方程式の主要な特徴になっている。

アルトマン氏は、「当社は電気分解による水素製造（エネルギー消費を大幅に低減します）の分野でKAUSTとの協力を拡大し始めていますし、建設中の世界最大の水素プラント（を持つ）NEOMプロジェクトにも株主として参加しています」と語った。

「つまり、当社は既にこの方向に大きな一歩を踏み出しており、現在、次世代電気分解法による水素製造に関するKAUSTのパイロットプラントに取り組んでいます」

シンハ氏によると、企業とのパートナーシップはKAUSTのビジネス計画にとって不可欠なものになっており、既に米国の航空宇宙・兵器・防衛・情報セキュリティ・テクノロジー企業ロッキードマーティンや、サウジアラビアの株式会社で同国の公的投資基金が所有する大手デジタルソリューション企業Elmとも、同じような協定を締結している。

シンハ氏は、「成功の指標の1つは、こうした協力関係の下での特許出願件数です。近い将来にさらに多くのパートナーシップが発表されると予想しています。しかし、長期的には、業界側の企業の大半が1つか2つの学術機関と提携することになる統合が起こるでしょう」と述べた。

KAUSTの研究担当副学長であるドナル・ブラッドリー氏は、同大学ではこのような産業プレーヤーとの研究パートナーシップを通じて、エネルギー、水、環境、食品と健康、デジタル領域にわたる重要なグローバル課題に取り組むことを目指していると述べた。

「当学は、官庁、NEOM、大手企業など王国内のパートナーと緊密に協力しています」と、同氏はアラブニュースに語った。

「ACWAパワーと協力するイノベーションデイズでは、地域や世界のニーズの解決に役立つ技術開発を支援する素晴らしいフォーラムを提供します」