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ウクライナ問題 西側にさらなる努力が求められる理由

ウクライナ東部のドンバス地方の街リシチャンシクで、空爆により崩壊したビル前を歩く女性。2022年5月30日。ロシアによるウクライナ侵攻から96日目。(AFP)
ウクライナ東部のドンバス地方の街リシチャンシクで、空爆により崩壊したビル前を歩く女性。2022年5月30日。ロシアによるウクライナ侵攻から96日目。(AFP)
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02 Jun 2022 05:06:05 GMT9
02 Jun 2022 05:06:05 GMT9

本日アラブニュースに掲載のYouGov世論調査から明らかなのは、NATOと欧州主要国は、中東を含めた世界のさまざまな地域において、自分たちの取っている行動と立場の説明にもっと努めるべきである、ということだ。回答者の多くは特に明確な意見はないと感じているが、紛争ができるだけ早く終結することは強く求めている。

EUと米国は最近実に多くの問題でこうした地域を等閑視しているが、そうした行為はまったく近視眼的である。疑念の晴れない中東の調査対象者がロシアによるウクライナ侵攻で西側諸国が示す立場を理解しない理由は、この世論調査で示されている。

西側主要国に対する信頼は中東では必ずしも高くない。英国、フランス、そして後には米国といった主要国による帝国主義的な植民支配の来歴の数々を考慮に入れるとわからない話ではない。サイクス・ピコ協定やバルフォア宣言といった背信行為のことは、この地域に住む者なら誰でも知っている。さして考えもせず始まった2003年の英米によるイラク戦争が迎えた結末が、イラクがいまだ回復できていない惨状であることは誰もが知っている。これと渡り合うほどのまったく同じ後遺症は、ロシアにはないのだ。

対照的に、ソ連のくびきのもとに置かれていた東欧・バルト諸国に目を向けると様相は一変する。彼らが感じているのははっきりとした脅威だ。NATO加盟へと向かっているフィンランドとスウェーデンが現在感じている脅威と同じほどはっきりしている。ロシアによる侵攻が、分断がはびこっていたそのとき、NATO諸国・欧州をひとつにしたのだ。

この調査から浮き上がるのは、今回の戦争は欧州のものであって地域にとって直接心配の種となるようなものではない、という認識だ。きわめて深刻な波及効果はあるけれども、どちらか一方に肩入れするような紛争ではない。たいていの国で望んでいるのは、戦争の終結と、ロシアと米国双方との関係を維持することだ。

欧州の主要国にとってこの悲惨な戦争の結末を調停することは簡単なことではないことが示されている。第二次大戦後の安全保障にかかわる仕組みはこれで覆されたというのが彼らの認識だ。この戦争をいかにして迅速に終わらせるか、しかし将来のいつかの時点でまたぞろ戦争が始まる可能性のあるような休戦などではなく、確実に恒久的な戦争終結とするにはいかにすべきかが課題だ。欧州の主要国にしてみればロシアの脅威や侵略といったものに脅えながら暮らしたくはないし、ロシア指導部としてもNATOの脅威など感じたくないのははっきりしている。

難題はプーチン氏にいかにしてウクライナから手を引かせるかだ。ロシア軍の進軍は快調とは行かず、「3日戦争」のはずが3カ月を越えてなお戦争状態は続いている。キーウ郊外からもハルキウからもロシアは後退を余儀なくされている。

ウクライナ軍が実際に勝利を収めるという可能性もあった。しかし、勝ってしまえば、傷ついたロシアという熊がどれほど危険な存在になりうるか、という新たな問題も持ち上がる。ロシアに屈辱を与えるのは決して賢明ではあるまい。完全勝利を目指したつもりが、完全敗北で終わりかねない。

フランスのマクロン大統領なんかはプーチン大統領と対話を重ねているじゃないか、と非難する者は多いが、そういう人はものの見方が浅い。プーチン氏が不動の覚悟を決めているようであり単なる撤退はしそうにない、という点では正しいかもしれない。マクロン氏やドイツのオラフ・ショルツ首相みたいなのは、本心では、より広範な平和のためにウクライナは領土を少々失ったっていい、ウクライナは反対だろうが、などと言う者も多い。ショルツ氏は、「ウクライナにおける可及的すみやかな停戦」を求めている。しかしながら、首相就任から日の浅いショルツ氏は、ドイツ議会ではウクライナ問題について腰が重いとして大きな非難を浴びている。イタリアの指導層もNATO加盟国の一部指導部のような直言は避けている。オルバン首相率いるハンガリーは、この問題ではぎりぎり欧州陣営に与するといったところで、近隣諸国、特にポーランドとの間で大きな軋轢を引き起こしているにもかかわらずロシアに対するさらなる制裁をはばんでいる。

これについては反対の意見のほうが説得力がある。ロシアは2014年にクリミアを占拠し自国領に組み入れた。そしてウクライナ東部で戦争を始めた。2022年にはウクライナにふたたび侵攻したし、過去にはジョージアに侵攻しチェチェンを散々な目に遭わせている。ウクライナからさらに少々領土をもぎ取れば満足してロシアは動きを止めるはずだ、などという保証がどこにあるだろうか。今回も侵攻に対して見返りを与えることにならないだろうか。どういった安全保障なら、弱小国やウクライナその国にとって十分といえるのだろうか。

ロシアは軍事的に劣勢であり、となればもしや今が取引を強く求めるときではないのか。少々厚かましいくらいでなければならないかもしれないが、取引を結ぶとすればそれは、少なくとも、2月24日時点以前の前線にまでロシア軍を撤退させる内容であるべきだろう。ロシア側は制裁解除とウクライナ東部のロシア系住民の身の安全を求めるはずだ。

容易には運ばないだろう。信頼というものがまるでない。当事者すべてから信頼を得ている中立的な橋渡し役などがすぐさま現れはしない。中国なら役割を果たせるかもしれないが、ロシア寄りだ。イスラエルとトルコは調停を試みたが失敗した。実行可能な政治プロセスがない場合、事態は急速に悪化しかねない。懸念されるのは、今回のようなアラブ人に対する世論調査がこの先いつかの時点でおこなわれるころには、この紛争がまさしく世界的なものへと広がり、中東も欧州同様危機に見舞われていはしないか、ということだ。

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