
ドバイ:投資会社スカイブリッジ・キャピタルの創業者であり思想リーダーシップフォーラムSALTを設立した、ウォール街の銀行家アンソニー・スカラムーチ氏は、2023年が暗号通貨業界にとって「回復の年」になると今も確信している。
彼は2022年が暗号資産にとって最悪の年であったことは否定しておらず、数十億ドルが市場から消え、多くの企業が閉鎖され、ビットコインはその価値の約60%を失った。しかし、アラブニュースの週刊時事トーク番組「フランクリー・スピーキング」に出演した彼は、「暗号通貨業界にとって朗報は、物事が非常に速く進むことです」と述べた。
「ビットコインの場合、現在およそ30から40%上昇していると思われます。ボラティリティが高いので、変動が激しいですが、暗号通貨にとって今年のスタートは非常に良いものでした……。2月に若干の後退がありましたが、暗号通貨市場は依然として堅調です。私は今年が2023年が暗号通貨業界にとって回復の年になると今も確信しています」
アブダビで第2回Investopia会議に出席していたスカラムーチ氏は、インタビューで幅広い話題に触れ、湾岸地域の経済的機会を称賛し、SALT会議をリヤドで開催する計画を確認した。
多くの著名な実業家と同様に、彼もそれなりの経済的浮き沈みを経験してきた。
昨年、暗号通貨取引所FTXの創業者であるサム・バンクマン=フリード氏(通称SBF)は、スカラムーチ氏が創業した投資会社スカイブリッジ・キャピタルの株式30%を4,500万ドルで取得した。
FTXが倒産したためこの取引は失敗に終わり、この元億万長者は昨年12月に電信送金詐欺、マネーロンダリング、選挙資金違反などうんざりするほど多くの罪で起訴された。
ウォール街でもっとも手ごわい投資銀行家の1人であるスカラムーチ氏は、自分の事業の30%をSBFに譲渡するという決断を、人生最悪の取引だと考えているのだろうか。
2017年に短期間トランプ政権で働いた経験もあるスカラムーチ氏は、「私は彼に事業を譲ったわけではありません。彼はその事業を買収し、4,500万ドルを支払いました。今はそれを破産裁判所から買い戻す手続きをしているところです」と述べた。
「私は彼を信頼していました。彼の父とは親しかったしですし、彼の母親と過ごす機会もありましたし、2人ともスタンフォード大学ロースクールの終身教授だったのです。私にとっては本当に裏切られたようなものです。私は、彼が次世代の暗号通貨取引所、つまり、さまざまな資産の取引所とトークン化モデルを構築するのだと思っていました」
「しかし、もちろん彼は詐欺師でした。それが明らかになった時、私は非常に失望しました」
スカラムーチ氏はこの点に関して重要な点を指摘したいと述べ、「フランクリー・スピーキング」の司会を務めるケイティ―・ジェンセン氏に「私は(SBFを)をサウジアラビアに連れていき、ここUAEにも連れてきました。もし私がそうしていなかったら、あの不正はあれほど早く解明されなかったと思います」と語った。
「物事には理由があって起こることがあります。悪いことにも肯定的な面はあるものです。しかしあれが私にとって最悪のビジネス取引だったことは確かです。あれほどひどいものはないと思います」
スカラムーチ氏によると、スカイブリッジは破産裁判所で自社株を買い戻すことができ、そして同社には「スカイブリッジを何度も繰り返し利用してきた信頼関係のある投資家」が大勢いるという。
スカラムーチ氏は、SBFとの経験を2017年7月に11日間だけホワイトハウスの顧問を務めたときのことと比較して、「トランプ大統領の下で働くよりもはるかに悪いことでした……私にとって不運なことに、最終的に11日間で政権から解任されることよりも、ずっと悪かったと言えるでしょう」 と述べた。
彼は、トランプ大統領の広報部長を短期間務めたことにも、肯定的な面があったと述べている。「それによって経験を積むことができました。大統領のやっていること、米国の人々の価値観に反することに異議を表明する機会を与えてくれたのです。そのような立場にあったのです。そして、多くのことを学びました」
「それは非常に屈辱的な経験でしたが、心理学的にそのように考えることによって、私はその時間を貴重なものだったと思っています。しかし、SBFの件はまったく状況が異なります」
2024年の米国大統領選挙を目前に控え、トランプ氏は再出馬の意向を表明している。スカラムーチ氏はホワイトハウスを去った後、トランプ氏を批判していたが、トランプ元大統領が指名される可能性はあると発言している。
「トランプ大統領に対して批判的だったように、客観的でありたいと思います。現在、もう1人の候補者として発表されているのはニッキー・ヘイリー氏のみです。しかし、もしトランプ氏と共和党の指名を争う共和党員が10人、12人いたとしても、トランプ氏には非常に強い基盤があるので、その指名を勝ち取るでしょう」と彼は述べている。
スカラムーチ氏は当初、在任期間の大半においてトランプ氏を支持していたが、「トランプ氏が議会で4人の女性議員を追及して、彼女たちが元の国に戻る必要があるというようなことを言ったとき、ついて行けないと思いました」と述べた。そして、1月6日に米国議会議事堂で起きた出来事とトランプ氏が政権移行に向けた新政権への支援を拒否したことで、トランプ氏に対してさらに批判的になったと付け加えた。
自身が2024年の大統領選に出馬するのではないかという噂について尋ねられたスカラムーチ氏は、「いいでしょう、私は結婚の再選を目指して出馬します。それ以外には出馬しません」という答えてはぐらかした。