
東京:日本銀行の内田眞一新副総裁は12日、日銀は賃金の上昇を伴う形で2%のインフレ目標を持続的・安定的に実現できるよう金融緩和を継続していくと述べた。
このコメントは、植田和男総裁が先日示した、基調的なインフレ率が目標の2%に達していないため日銀は当面は超緩和的金融政策を維持するのが適切だとの見解に従ったものだ。
植田総裁が金融政策を維持する姿勢を繰り返し表明したことで、日銀の緩和姿勢が間もなく転換するとの期待は薄れたかもしれない。特に、欧米の銀行部門の問題からの波及リスクに対し世界市場が依然として神経質になっている中、そういった期待が強くなっていた。
内田副総裁は、日本の金融機関は充実した資本基盤と安定的な資金調達基盤を有しているため、今年3月以降の欧米の金融機関の問題からの影響は「限定的」だと述べた。
内田副総裁は信託協会の年次総会で、国際通貨基金(IMF)と世界銀行グループの春季会合に出席するためにワシントンに出張中の植田総裁に代わりスピーチを読み上げた。
内田副総裁は次のように述べた。「今後、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果に加え、価格転嫁の影響も減衰していくため、物価上昇率のプラス幅は、今年度の半ばにかけて、縮小していくとみています」
「日本銀行としては、わが国の経済をしっかりとサポートし、賃金の上昇を伴うかたちで、物価安定の目標を持続的・安定的に実現できるよう、金融緩和を継続していく考えです」
日銀が12日に公表した四半期調査によると、1年後の物価が上がると予想する家計が増えており、日銀に対しイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の修正または撤廃を求める圧力が高まっている。
日銀がインフレの見通しを判断するために綿密に行ったこの調査では、1年後の物価が上がると思うと回答した家計の割合は3月時点で85.7%となっており、昨年12月の85.0%から増えている。
植田総裁は10日、日銀は金融政策正常化が遅くなりすぎることも避けなければならないと述べ、10年物国債利回りをゼロ%程度に抑えるという賛否両論ある政策を転換する可能性に対してオープンであることを示唆した。
ロイター