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アフリカの経済復興:中東からの投資がその鍵となり得るのか?

専門家らは、湾岸協力会議加盟諸国がアフリカに関心を抱く理由は、地域のGDPが堅調でありまた利用可能な資本が豊富にあるためだと解説する。(提供画像)
専門家らは、湾岸協力会議加盟諸国がアフリカに関心を抱く理由は、地域のGDPが堅調でありまた利用可能な資本が豊富にあるためだと解説する。(提供画像)
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21 Aug 2023 12:08:26 GMT9
21 Aug 2023 12:08:26 GMT9
  • サウジアラビア、UAE、そしてカタールがアフリカ開発における中東の役割を主導している
  • フィンテック関連の革新的なソリューションやサービス産業に重点を置くことによってインフラの不足は補い得る

ロバート・ボシアガ

ケニア、ナイロビ:アフリカ諸国の複雑な経済情勢、そしてアフリカ諸国が対峙する数々の課題の渦中で、中東とアフリカのパートナーシップは、依然として発展の恩恵に浴していない地域社会に切実に必要とされている後押しを提供する可能性を秘めた希望の灯りとなっている。

アフリカ大陸において中国からの投資の比重が減じる中、アフリカの経済開発への中東の関与の拡大はアフリカの経済やインフラの切実なニーズに対応する頼みの綱となっている。

サハラ以南のアフリカは、国内総生産の約60%に達する債務負担の増加に苦戦している。この債務負担の水準の高さは20年ぶりである。

この状況は、より高コストの民間資金への移行を引き起こし、債務返済コストとロールオーバーリスクを増大させている。

こうした経済的混乱を背景として、中東とアフリカのパートナーシップが注目を集めつつある。中国が投資誓約を撤回する一方、サウジアラビアやUAE、カタールなどの湾岸協力会議(GCC)加盟諸国がその間隙を埋めようとしているのだ。GCC加盟諸国の投資額は急増しており、2022年には83億ドルに達した。これはパートナーシップの潜在的可能性の高さを示す好ましい兆しである。

「この動向は、アフリカの開発の道程における有力なパートナーとして、こうしたGCC加盟諸国の重要性が高まっていることを示しています」と、投資企業「KI アフリカ」の最高経営責任者(CEO)であるライアン・オグラディ氏は語った。オグラディ氏はドバイと東アフリカを定期的に行き来している。「数十年かけて育まれた中東とアフリカの繋がりは、発展し続けています。それは、貿易関係が増々強固になっていることを意味しています」と、オグラディ氏は付け加えた。

湾岸協力会議加盟諸国の金融セクターの力強さと勃興するフィンテックの将来展望の組み合わせにより、アフリカで事業展開をする際に付き物の不具合は克服され得ると語るKI アフリカのライアン・オグラディCEO。(提供画像)

専門家らは、湾岸協力会議加盟諸国がアフリカに関心を抱く理由は、地域のGDPが堅調でありまた利用可能な資本が豊富にあるためだと解説する。GCC加盟諸国と北アフリカの伝統的な結びつきは、文化的、言語的な親和性により以前から強固だったが、現在、焦点はサハラ以南へと移行しつつあり、新たな協力の道筋が浮上しつつある。UAEに拠点を置く「マシュレク銀行」は、14のアフリカ諸国に対して投資を行い、この新しい協力の可能性を切り開いている。その一方、GCC加盟諸国の資金提供者は、インフラ開発に拍車をかけるために現地金融機関との提携を模索している。

自然資源依存の軽減を目指すGCC加盟諸国の多角化への取り組みは、インフラや通信各種、食料安全保障を含む多種のセクターへの相当量の投資へと繋がっている。特に、カタールの「IASインターナショナル」は、16億ドルの投資を計画している。また、サウジアラビアやUAE、カタール、バーレーン、クウェートは、食料安全保障への懸念により、アフリカで農地を買収しようとしている。

中東・アフリカ間の回廊は、物流の観点から合理的なだけではなく、両地域の政策的目標においても合致しているというわけなのである。アフリカ諸国は多額のインバウンド投資を希求し、潤沢な資本と洗練されたイスラム金融市場を有する中東は人口が増加中のアフリカのニーズに対応可能なのだ。

CNBCによると、湾岸地域の政府系ファンド上位10社の運用資産の合計は、4兆ドル近くである。この総資産額は、分かりやすく表現すると、英国のGDPを上回る金額である。

「アフリカ市場の規模が非常に小さいため、中東とアフリカの間で銀行や市場範囲、取引フローの規模に相当な差があり、それが地域間の協力における課題をもたらしています」と、オグラディ氏は語り、アフリカにおける金融包摂という重要な論点を強調した。

「アフリカでは、女性の37%と男性の48%のみが正式な金融サービスにアクセス可能です」と、オグラディ氏は付け加えた。この不平等は、特に旧来から疎外されてきた人々が強いられてきた不利な立場を解消するための革新的なソリューションの必要性を強く示している。

オグラディ氏は、フィンテックと将来を考慮したソリューションがますます重要視されるようになってきたことを、ドバイでのそれらの進歩に注意を促しつつ、指摘した。その意図は、金融セクターにおける従来の障壁の撤去と、より効果的でコスト効率の高い、アウトリーチ志向の取り組みの創出である。この戦略的な焦点の移行は、GCC加盟諸国のサービス部門と銀行部門における業績の好調や、貿易金融での成功と軌を一にしている。

「湾岸協力会議加盟諸国の金融セクターの力強さと勃興するフィンテックの将来展望の組み合わせにより、アフリカで事業展開をする際に付き物の不具合は克服可能です」とオグラディ氏はコメントし、それらの進歩と革新的なデリバリーメソドロジーの組み合わせが、アフリカの消費者層に一層手ごろな価格での広範なリーチを提供すると予測した。

これは、次に、金融包摂が進捗させ、より幅広い層の人々が正式な金融サービスを利用できるようになる可能性を高め得る。

「リスク要因は投資にはいずれにせよ付き物です」と、オグラディ氏は述べ、リスクは、専門知識、投資戦略の構築、新しい投資ツールによって軽減し得ることを指摘した。取引決済のための通貨ペアリングや保険商品など注目に値する手段は、取引コストを削減し、効率を高めるよう作用し、円滑なビジネス運営を促進する協調的な取り組みを反映したもなののだとオグラディ氏は考えている。

いくつもの進歩をよそに、成長を疎外する課題も複数残存している。

「アフリカの潜在的な可能性の裏側には、ビジネス運営の邪魔になりかねないインフラ不足が隠れています」と、ナイジェリア出身の国際的な起業家であるスボミ・プランプトル氏はアラブニュースに語った。

「不十分な交通網や不安定なエネルギー供給、コミュニケーションの壁によりコストが嵩み、投資家の忍耐が試される状況となり得ます」と、プランプトル氏は付け加えた。

スボミ・プランプトル氏。(提供画像)

世界銀行は、低水準のインフラのために、年間経済成長率が2%もの低下を来し、生産性が驚くべきことに40%も低下していると推定している。

「道路や鉄道、港湾が好ましくない状態にあるため、アフリカ内部の貿易のコストがさらに嵩み、そのため地域経済統合の重要な家庭が阻害されています」と、プランプトル氏は語った。

アフリカの港湾は、設備もまたその稼働も不十分で、世界の他の港湾よりも50%割高である。同様に、鉄道インフラは、一人当たりの所得の高い数ヶ国にのみに集中的に偏在し、広大な地域がその恩恵にまったく浴していない。

課題は残っているものの、プランプトル氏はいくつかの前向きな動向を指摘した。特筆に値することは、通信セクターの目覚ましい成長により、アフリカの携帯電話市場が世界第2位の規模となり依然急拡大中であることだ。

革新的な資金調達手段や国外からの投資の導入は、透明性改善やガバナンス向上の取り組みと共に、アフリカの前向きな発展に貢献している。

とはいえ、アフリカの政治情勢の中で針路を保つことは、常に形状の変化するピースでパズルを繋ぎ合わせるようなものかもしれない。

政治的変化や政策の変更、規制の不確実性は投資家の不意を襲う可能性があり、順応性のある戦略を持っておくことが常に前提となる。アフリカの様々な地域で、不穏な情勢が継続していることから、政治的安定性が投資家の意識の片隅に常駐するようになり、それがリスク評価や投資決定に影響を及ぼしている。

「『アフリカ』を対象とした投資計画や政策が、それぞれの国の固有の要件に適応した取り組みになるように、相違を認識することが非常に重要です」と、エチオピアの事業関連の弁護士であるメタセビア・ハイル・ゼレケ氏はアラブニュースに語った。

こうした状況を背景に、UAEとケニアは、2国間貿易の強化のための包括的な経済パートナーシップ協定の交渉を行っている。民間企業もこの機会を見逃すまいとしており、アフリカ側の企業も国際市場への参入のためにUAEに拠点を置き始めている。

メタセビア・ハイル・ゼレケ氏。

中国からの投資は、特にアフリカ側の債務増大と中国政府によるアフリカ諸国の資源管理関連の問題で、多様な結果と反応をもたらした。

アフリカ諸国の国民は中国の資金に替わる手段を求め、政府もまたそうした手段を探している。GCC加盟諸国には、変化をもたらしつつ、悪評を避けることが可能なはずだ。

GCC加盟諸国とアフリカのパートナーシップは、まったく新規の道程を経て構築するのではなく、地理的な近さを活かしたものであるため、自然な関係の構築に重点を置くことが極めて重要なコンセプトとなる。この取り組みでは、親密性や相互利益、確立されたネットワークの価値が受け入れられ、維持可能な協業関係の基盤が築かれる。

プランプトル氏は、また、中東とアフリカ間の投資回廊におけるガバナンスと透明性の強化の重要性を強調した。パートナーシップを実り多いものとするにあたっては、3つの課題がある。地元住民の参加、土地所有権関連の複雑な問題の解決、地域の紛争の適切な管理である。

プランプトル氏は、中東とアフリカ両地域の投資家と起業家の間の理解や対話、透明性の促進のために、民間主導の取り組みと公共部門の関与の必要性があることを指摘した。

「多様な社会経済的背景と歴史的文脈がアフリカの地域社会を包み込んでいます」と、エチオピアの弁護士であるゼレケ氏は語った。そして、それ故に、現地のニーズに本当に沿った投資を行うためには、開かれた対話と協力が必要となるのだ。

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