

レイ・ハナニア
ワシントン/シカゴ:ジョー・バイデン氏は20日、分断された米国を再び結束させ、世界への希望の光としての米国の役割を元に戻すことを誓った。第46代米大統領として宣誓就任した後の就任演説でバイデン氏は、疲弊した経済と、40万人以上の米国人の命を奪った新型コロナウイルスのパンデミックという難局に立ち向かうことを誓った。
暴徒が米国連邦議会議事堂を包囲した2週間後、議事堂が数千人の武装した軍隊に取り囲まれる中、バイデン氏はジョン・ロバーツ米最高裁長官の司式で就任の宣誓を行い、78歳で史上最高齢の米国大統領となった。
「こういった課題を乗り越え、魂を取り戻し、米国の未来を確かなものにするには、言葉以上のものが必要です。民主主義の中にある全てのものの中で最も捉え所のないものが必要とされています— 結束です」と同氏は就任演説で述べた。
「赤い州と青い州、地方と都会、保守とリベラルを戦わせるこの無意味な争いを終わらせなければなりません。心をかたくなにさせず、魂を解放すれば、結束させることができます」
バイデン氏は、2週間前に抗議者らが大統領選挙の結果を覆すために襲撃し、5人が死亡し、世界に衝撃を与えた議事堂の階段について語った。
この暴力事件を受けて、民主党が多数を占める米下院は先週、トランプ氏に対し、選挙に不正があったという虚偽の主張をし、支持者に建物を行進するよう扇動したとして、前例のない2度目の弾劾訴追を行った。
「私たちが立っているこの場所で、ほんの数日前に暴動がありました。暴徒は暴力を用いて人々の意思を封じられると考えました。民主主義を妨害しようと、私たちをこの聖地から追い出そうと」とバイデン氏は述べた。「そうはなりませんでした。今日も明日も、決してそうはなりません」
バイデン氏は大統領として最初に、立て続けに大統領令に署名した。イスラム諸国からの入国禁止措置の解除、世界保健機関からの脱退の撤回、貧しい人々に対するCOVID-19からの保護の拡充および立ち退きの禁止、気候変動に関する枠組み「パリ協定」への復帰、不法移民の権利の承認、メキシコとの国境沿いの壁の建設中止などを命じた。
バイデン氏は、移民の市民権取得に対する規制を撤廃し、全ての国からの亡命希望者を支援する法案も提出した。
バイデン氏の副大統領候補であるカマラ・ハリス氏は、ジャマイカとインドから来た移民の娘で、ラテン系で初めて米最高裁のメンバーとなったソニア・ソトマイヨール判事の司式で宣誓就任した後、黒人初の、女性初の、アジア系米国人初の副大統領となった。
規範に従わないトランプ氏は、ホワイトハウスを出る前の最後の慣習に従わず、バイデン氏に会うことや後継者の就任式に出席することを拒否し、平和な政権移譲の確認と見なされる政治的伝統を破った。
11月3日の選挙での敗北を認めなかったトランプ氏は20日朝、大統領としての最後の発言の中でバイデン氏の名を挙げず、自身の政権の業績を褒めちぎり、「何らかの形で」戻ってくると約束した。同氏はその後、エアフォース・ワンでフロリダ州の高級リゾート施設「マーアーラゴ」に向かった。 同氏が同機に乗るのはこれが最後となる。
バイデン氏の就任式には、マイク・ペンス副大統領や議会指導者ら、共和党のトップが、元大統領のバラク・オバマ氏、ジョージ・W・ブッシュ氏、ビル・クリントン氏と共に出席した。
バイデン氏は、国がひどく不安になっているときに就任し、大統領顧問らが言う、パンデミック、景気後退、気候変動、人種的不平等の4つの要素から成る危機に米国は直面している。同氏は、就任初日に多数の大統領令を出すなど、直ちに行動を起こすと約束している。
トランプ氏が根拠もなく選挙不正を主張した激しい選挙戦の後、バイデン氏は、前任者からはめったに聞かれなかった、なだめるような口調で、自分に投票しなかった人たちに対し、自分にチャンスを与えるよう頼んだ。
「私は誓います。全ての米国人のための大統領になることを」と同氏は述べた。「私を支持しなかった人のためにも、支持してくれた人のためにするのと同じように、懸命に闘うと約束します」
同氏の発言は主に国内問題に向けられたものだったが、バイデン氏は自身がメッセージと呼ぶものを国外の人々に伝え、トランプ氏がぼろぼろにした協力関係を修復し、平和、進歩、安全保障を先導し、強力で信頼できるパートナーになると約束した。リスクの大きい、北朝鮮、イラン、中国との紛争については、具体的に言及しなかった。
バイデン氏は就任式を迎え、米国で上院議員を務めた30年以上と、オバマ大統領の下で副大統領を務めた2期を含めた、50年にわたる公職のキャリアの絶頂にある。
だが同氏は、最も経験豊富な政治家でさえ能力を試されるような苦難に直面している。 米国のパンデミックは、トランプ氏が最後に丸一日大統領を務めた19日に、死者数は40万人、感染者数は2400万人に達し、二つの厳しい局面を迎えた—どの国よりも多い数だ。数百万人の米国人が、パンデミックに関連した休業や規制のために失業している。
バイデン氏は、連邦政府の全力を傾けて今回の危機に取り組むと約束した。同氏の最優先事項は、失業手当を強化し、各世帯に直接現金を支給する予定である1兆9000億ドル規模の計画だ。
だが、それをするには、民主党が上下両院で僅差で多数派を確保している、深く二分された議会の承認が必要だ。ハリス氏は20日夜、民主党の新任の上院議員3人を宣誓就任させ、議員数を50対50にし、ハリス氏自身が決定票を持つようにする予定だった。
バイデン氏はすぐさまトランプ時代から心機一転して出直すだろうと顧問らは述べた。同氏は20日、パンデミックや経済、気候変動などの問題に関する15の行政命令に署名した。
今回出された命令には、連邦の敷地内でのマスク着用の義務化、パリ協定への復帰、トランプ氏がイスラム諸国に課した入国禁止措置の終了などが含まれるだろう。
バイデン氏は、最初の100日間に検討する、1億回のCOVID-19ワクチン接種の実施を含む多くの議題を提示したが、上院は、トランプ氏が退任しても進む予定である、トランプ氏の次の弾劾裁判に使われる可能性がある。
この裁判は、ワシントンで新たな超党派の意識を育てるというバイデン氏の約束の初期試験になり得るだろう。
トランプ氏は退任直前に140人以上に恩赦と減刑を実施し、スティーブ・バノン元主席戦略官も恩赦を受けた。バノン氏は、メキシコとの国境に壁を建設するために個人から資金を集める取り組みの一環としてトランプ支持者から金をだまし取ったことを認めていない。
だがトランプ氏は、退任後の訴追を回避するために実施すると推測されていた、自身や家族への恩赦は行わなかった。
(エージェンシーと共同)