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日本の安倍総理大臣は憲法9条を改正するという使命を未だ果たせず

首相が東京で主催する桜を見る会で、芸能人やスポーツ選手とポーズをとる日本の安倍晋三首相(中央左)と昭恵夫人(中央右)。日本政府は2019年11月13日、安倍晋三首相が自身の後援者を招きすぎているという批判を受けた後、毎年恒例の桜を見る会を来年は中止すると発表した。(AFPファイル)
首相が東京で主催する桜を見る会で、芸能人やスポーツ選手とポーズをとる日本の安倍晋三首相(中央左)と昭恵夫人(中央右)。日本政府は2019年11月13日、安倍晋三首相が自身の後援者を招きすぎているという批判を受けた後、毎年恒例の桜を見る会を来年は中止すると発表した。(AFPファイル)
14 Nov 2019 04:11:26 GMT9

ロイター通信、東京

安倍晋三総理大臣は7年前、中国からの脅威の拡大を受けての日本の防衛力強化と憲法9条の改正を掲げて総理大臣に返り咲いた。

順調にいけば日本で在任期間が最長の総理大臣になる勢いの安倍総理大臣は、1つ目の約束は果たした。しかし2つ目はまだ目処が立っていない。

そのため、アメリカのトランプ大統領が日米の安全保障同盟を「不公平」だと批判する中、日本は未だできることが限られており、アメリカの同盟国として完全な役回りを演じることができていない。

トランプ大統領は、中国が周辺地域で軍事力を誇示し北朝鮮が核・ミサイル開発を推し進める中、同盟関係の根幹である日米安全保障条約の改正さえ示唆した。

安倍総理大臣の在任期間中、それまで長年減少していた日本の防衛費は10%上昇し、海外でも活動できるよう自衛隊の能力を拡大してきた。2014年には、憲法を解釈し直すことで自衛隊は海外で戦闘ができるようになった。これは第二次世界大戦以降初めてのことであり、歴史的な動きである。

しかし保守主義の安倍総理大臣は、平和主義を掲げる憲法9条の改正というレガシーを確保することができておらず、そこには自衛隊を遠く海外の危険な任務に派遣することへの警戒心やアメリカ主導の戦争に巻き込まれることへの恐れが日本人の間で拭えていないことが見て取れる。

「日本人にとって、憲法9条は聖書のようなものです」と、与党である自由民主党の船田元議員はロイター通信に語った。同議員は憲法9条の改正を議論する審査会のトップを以前務めてい た。

日本の憲法はアメリカが書いたものであり、保守派からは恥ずべき敗戦の象徴とみられているが、海外の紛争に巻き込まれないようにするためのブレーキと見る声もある。どちらの側にとっても、改正されることになればそれは極めて象徴的な出来事となる。

今週テレビ局のNHKが行なった調査によると、有権者は安倍総理大臣の安全保障と外交政策には最高評価を与えた。しかし朝日新聞が今年これまでに行なった調査では、憲法9条の改正関して反対は64%、賛成は28%だった。

憲法に何らかの変更を加えるには、衆議院と参議院両方の3分の2以上の賛成と、国民投票で半数以上の賛成が必要となる。

2007年に就任後1年で問題続きのため辞任した安倍総理大臣は、2012年12月に再び総理大臣に返り咲いた。11月20日には、20世紀初頭に桂太郎総理大臣が打ち立てた在任2,886日という記録を破ることになる。

安倍総理大臣の自由民主党総裁としての任期は党則が変更されない限り2021年9月に終了し、そうなると安倍総理大臣は総理大臣を辞任することになる。

戦力投射、世論

昨年発表された防衛に関する5ヶ年計画では、防衛支出に25.5兆円(2337億ドル)が割り当てられており、これはその前の5年間から6.4%増加している。また同計画では、2隻の軍艦を空母化することも掲げられている。空母を保有するのは第二次世界大戦以降初めてのこととなり、海上自衛隊が完全な外洋海軍に一段階近づくことを意味する。

内閣が憲法解釈を変更した1年後、議会では集団的自衛権の行使の禁止を廃止する法律が制定された。共同的自衛権とは、日本の存続に危機が生じた場合、攻撃を受けた同盟国を日本が防衛する権利である。

こうした動きによって憲法9条の範囲で可能な行為がさらに拡大されている。憲法9条は、文字通り受け取れば常備軍の維持を禁じているものであるが、過去の政権によって拡大解釈され、自衛のための武装は可能となっている。

「戦後日本に課された制約はもうほとんど残っていません」と、マサチューセッツ工科大学の国際研究センターでディレクターを務めるリチャード・サミュエルズ氏は言う。

「憲法9条から距離を置く動きは、(安倍)政権下で最速で推し進められました」

しかし、安倍総理大臣は世論と自由民主党が連立を組むハト派寄りの公明党に押され、妥協を強いられている。

「理論的には、安倍総理大臣は ... 日本を集団的利益のために戦闘時にアメリカを支援することができる国に一段階近づけるための道筋はつけた状態です」とカリフォルニア大学サンディエゴ校のエリス・クラウス名誉教授は語る。

「しかし日本が実際にそうすることになる可能性があるとは思いません」

個人としての使命

先月日本は、中東の海運路での海上自衛隊の任務を提案した。アメリカ主導の同盟によって商船の防衛が行われているが、それに参加するのではなく、研究と情報収集を可能にする日本の法律のもと、日本独自で行うというものだ。

それでさえ、リベラル派のメディアからは慎重論が飛び出した。安倍総理大臣にとっては、憲法改正は個人としての使命である。安倍総理大臣の祖父にあたる岸信介元総理大臣も憲法改正を目指したが、日米安全保障条約への世論の大反発を受けて1960年に総理大臣を辞任しているのだ。

「安倍総理大臣がどのような人物かというだけの問題ではなく、安倍総理大臣の祖父がどのような人物だったかという問題であり、それこそ安倍総理大臣の考え方のベースになっています」とサミュエルズ氏は言う。「その観点から、日本は変わった、第二次世界大戦の敗戦にはもはや縛られない、という考え方が出てくるのです」

安倍総理大臣は、憲法9条に自衛隊として知られる日本の軍力の存在を書き込むことを提案しており、これは過去に自由民主党から提案されたより大幅な改正と比べれば軽微な修正となる。

自由民主党内の反対派からは、それには政治的労力が多く必要な割には得るものが少なく、無駄な労力になるとの声が上がっているが、専門家からは何らかの改正を行うことで将来より大きな改正を行う足がかりになるとの声も上がっている。

安倍総理大臣がこの使命を捨て去ることはないように見受けられる。

「安倍総理大臣の根幹的な思想はナショナリズムであり、憲法9条を改正しない限り(アメリカによる)占領体制から独立することはできないわけです」と、慶応大学で政治学の教授を務める添谷芳秀氏は言う。「彼は決して改正を諦めないと私は思います」

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