タレク・アリ・アフマド
ロンドン:カルロス・ゴーン氏は、金融商品取引法違反の容疑で日本当局に逮捕された後、2019年12月に大阪から大胆な逃亡を企てた。彼は自動車企業経営者から、逃亡者の立場になったが、日本の暗部と呼ばれる法制度を糾弾している。
日本の自動車大手、日産のフランス・レバノン・ブラジル人の元会長は、2018年11月19日に羽田空港で逮捕され、その1年後にプライベートジェットの荷物箱の中に隠れて大胆な逃亡を行った。以来、世界はゴーン氏の顛末を熱心に見守っている。
アラブニュースの独占取材に応じた67歳のゴーン氏は、現在インターポールの最重要指名手配リストに載っている。彼は改めて自身の無実を主張し、強力なビジネス界の陰謀が日本の検察と手を組んで自分の信用を失墜させたのだと非難した。
「日本に行くと、そこは成熟した民主主義国家で、自分の権利が尊重され、公正に扱われるであろうという印象を持ちます。それほど間違ったことはないのです」とゴーン氏はアラブニュースに語っている。
「検察は99.4%の有罪率を有します。つまり、検察があなたに目をつけ、どんな理由であれ、どんな問題であってもあなたを追及すると決めた限り、逃れられる可能性はゼロなのです」。
ゴーン氏は、報酬を過少に申告し、会社の資金を不正に流用して贅沢な生活をしていたという告発を否定している。ゴーン氏は、日産の業績が悪化したことにリンクする企業クーデターの犠牲者であると主張している。日本の自動車メーカーはフランスのパートナーであるルノーに自主権を奪われることに抵抗していたのだと。
そのため、ゴーン氏は彼の言う所による不公平な裁判で起訴されるよりも、1,400万ドルの保釈金を踏み倒してでも逃亡しなければならなかったと語っている。
「会社の幹部、東京の検察官、そして日本の経済産業副大臣である牧原秀樹氏が結託したら、どんな場合でも正義のための場所はもう残されていません。終わっている。勝利の可能性がゼロの致命的タッグなのです」。
ゴーン氏は自分の処遇を、2011年のオリンパスのスキャンダルや、東芝、タカタ、福島のスキャンダルになぞらえ、同じように隠れた手が有利な結果を誘導していると主張している。
ゴーン氏によると、主要メディアが取り上げたのは、今回の騒動の背景にある不透明な世界のほんの一部に過ぎないという。ゴーン氏は、MBCの新しいドキュメンタリー番組 “ラストフライト“(The Last Flight )で事実を明らかにしようとしている。
「現在発表されている、そして今後発表されるであろう記事では、ある特定の側面、ある特定の個人、ある特定の出来事に焦点が当てられています」とゴーン氏は言う。
「私が見たところ、このドキュメンタリーは、何が起こっていたのかを知らなかった、あるいはほとんど知らなかった人に対し、事件がどのようにして始まったのか、主要な役割を担ったのは誰か、どのような力が働いていたかを教えてくれるものだと思う」。
インタビューを受けた人物の中には、日本の法務省関係者、日本の検察官、ゴーン氏の日本の弁護士、フランスの元財務大臣、ゴーン氏の元上司が含まれている。
ゴーン氏と妻のキャロル氏はこの映画の制作に関わっているが、ゴーン氏はこの映画が出来事をバランスよく描写していると主張する。
「このようなドキュメンタリーは、事実をごく客観的に提示し、さまざまな関係者に自らの意見を述べる機会を与えることを目的としています。そのため、一般の人々にとっては、何が起こったかについて偏った1つの声を聞くのではなく、異なる声や異なる立場の意見を聞く機会となるのです」。
ゴーン氏の元同僚であるグレッグ・ケリー氏と、ゴーン氏の逃亡を手助けした2人のアメリカ人、マイケル・テイラー親子の裁判は、このインタビューの時点で継続して行われていた。
月曜日、テイラー親子は、130万ドルと引き換えに、2019年12月にゴーン氏が日本からトルコ経由でレバノンに逃亡するのを幇助したことを認めた。ゴーン氏は、このドキュメンタリーがケリー氏とテイラー親子の裁判の結果に影響を与えることはないと考える。
とはいえ、この映画は、彼が日産・ルノー・三菱アライアンスにおける自分の役割に対する日本政府、フランスのメディア、そしてかつての雇用主が画策した誹謗中傷計画の犠牲者であることを示すという。公の場で異議を唱えることができない攻撃の。
「2018年11月から2019年12月に逃亡するまで、私には話す権限がありませんでした。記者と話すこともできませんでした。記者と話そうとするたびに、非常に高い代償を払ったのです」とゴーン氏は述べている。
「14ヶ月の間、誹謗中傷の情報が次々と出てきたわけです。その情報源は東京で、日本政府、東京地検特捜部、日産自動車が共謀し、残念なことにフランスの公務員、ルノーの共犯者、フランスのメディアが、この人物を支持しないのは、彼が会社で行ってきたことに何か不審な点があるからだ、という切り口で、情報を伝えてきたのです」と述べている。
ゴーン氏はすでに2冊の本で自分の言い分を伝えようとしている。フランス語とアラビア語で出版され、近々英語と日本語にも翻訳される予定の1冊目は、ゴーン氏に向けられた疑惑に反論する内容である。2冊目は妻との共著で、物語の「人間的側面」、つまり「この14ヵ月間、彼女の側と私の側から、この試練にどう対処してきたか」を描いている。
日本を脱出したゴーン氏は、妻の待つ母国レバノンに向かった。それ以来、レバノンに留まっている。
自動車業界の重役としての日々を終えたゴーン氏は、カスリクにある聖霊大学でビジネスプログラムを養成するプロボノ活動に専念している。また、地元のスタートアップ企業にも関わっている。
日産自動車を倒産から救ったことで「ミスター・フィックス・イット」と呼ばれたゴーン氏だが、レバノンを経済的破綻から救うために政治の世界に身を投じることは強く否定している。
「私は自分の名誉を回復し、自分の権利を守り、私に対して行われている、あるいは私にひどい仕打ちをした会社に対してのさまざまな訴訟と闘うことに時間を費やしています」と語る。
レバノンは、様々な面で未曾有の危機に直面している。レバノンの通貨はブラックマーケットで90%以上の価値を失い、ガスや電気の不足に悩まされている。
サアド・ハリーリ首相は、大統領のミシェル・アウン氏と義理の息子であり米国の制裁を受けたゲブラン・バシル元外相の間の無限に続くと思われる争いの中、10ヶ月間の膠着状態を経て、いまだに組閣を試みている。
さらに、2020年8月4日に市内全域を破壊し、200人以上の死者と数千人以上の負傷者を出したベイルート港での爆破事件がレバノンを揺るがしている。それでもゴーン氏は、レバノンが適切な改革を実施すれば、実行可能な解決策が見つかると信じている。
「この問題は非常に複雑で、明白な解決策がないという認識があると思います。それは間違いです。人間が作り出した問題で、人間が解決できないものはありません」。
「それには選択が必要です。選択があれば、レバノンの国民が誰を支持するにせよ、その人物が選択を行い、改革を実行し、その改革が成功することを意味します」。
「このような経済的機能不全に陥っているのは、世界でこの国だけではないのです」。
Twitter: @Tarek_AliAhmad