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コロナ禍_オンラインの世界の新時代

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19 Jul 2021 05:07:26 GMT9
19 Jul 2021 05:07:26 GMT9

ナデル・サムーリ

大阪:デジタル革新によって人々の焦点はすでにオンラインのバーチャルな世界へと移されたが、パンデミックによってその流れは更に強いものとなり、「触れ合い」の要素は物理的にも比喩的にも不在のものとなってしまった。

「私たちは2次元の世界に捉われた3次元の生き物です。何かが間違っていると明らかに感じるのですが、それが何であるかがなかなかわからないのです。3次元の世界でこの人を見たり、見られたりしたいと、頭の片隅で自分にこう語りかけているように感じるのです」と、K・アヤコさんはアラブニュース日本版に語った。

アヤコさんは8年近くにわたってとある世界的な大手テクノロジー企業の東京オフィスにて広報のトップを務めてきた。その優れたコミュニケーションおよびマーケティングスキルのおかげで、彼女はオンライン上で人々とやり取りすることに熟練している。

「実際のところ、頭では3次元の情報を求めているのです。同じ空間を人々と共有することによって得られる情報というのが現実世界にはたくさんあるからです。実際の空間ではたくさんの情報を読み取ったり、与えたりしています。それと、心理的により安全な感じを覚えるのかもしれません。物理的に触れ合うのはやり過ぎかもしれませんが、比喩的に他の人々と触れ合うということは本物の3次元の世界の中でならもっと自然に起こることなのです」と、アヤコさんは続けて述べた。

この2年間で、人々は主にオンラインで互いに影響を与え合ってきた。そこで、こんな質問は妥当かと思う。どれくらい効果があるのか?現実のオフィス環境と同じように、私たちは情報を保てているのだろうか?

「オフィスでなら皆のオーラを見ることができます。同じオフィスにいれば同僚の確認をすることができますし、彼らが何をしようとしているのかを知ったり、体調のサインを読み取ったりすることもできます。バーチャルなやり取りではそうしたことはできません。その代わりに別のやり方でそうした情報を得なければなりません。適切な質問をしたり、いつも以上に話をしたりといったやり方です。ですが、そうして余計な仕事が増えれば、脳にとってストレスにもなり得ます」

触れ合いという物理的な観点から議論し日本のことを調べるのは興味深いことだ。なぜなら、日本の文化では新型コロナウイルス以前より物理的な触れ合いというのが希薄だったからだ。日本では、握手やハグやキスの代わりにお辞儀をし、人々は大声を使わず丁寧に話し、マスクは以前より採用されて頻繁に利用されていた。

「確かに、新型コロナウイルス以前から人との距離はすでに保たれていました。それは感染拡大が限定的だった大きな理由の1つです。一方で、東京の満員電車は人々が密接に接触し合うという状況を引き起こしていました」と、アヤコさんは述べた。それからアヤコさんは、日本人が比較的ジェスチャーに乏しいと思われながらも、非常に微妙な目のサインや手の動きなど、日本人がいかにやり取りの中で「何かを言われずともそれを読み取る」ことができるのかを説明してくれた。

「ですが、日本でオンライン会議を行う際に、そうした文化の大部分がなくなってしまいます。なぜなら、実際の会議では独特なアイコンタクトや微妙な手の動きが大きな役割を担っていますが、オンラインでは同じようにサインを読み取ることができないからです。ですので、参加者はいつもとは違ってもっと声を使わなければいけなくなります。声を使って参加しなければ、会議に参加や貢献をしていないと思われるかもしれないからです」と、アヤコさんは言う。

オンライン会議のジレンマの1つが、ビデオをオフにしていると、現在進んでいる会話に関してその人がどんな表情をしているのか、一切のヒントやフィードバックを得ることができないという点だ。「ねえ、いるの?」などと言って互いの反応を求め合うこともあるかもしれない。

オンラインでならいつでも相手とやり取りができる。だが、その相手は本当にそこにいるのだろうか?

「それは日本企業の上司たちがコロナ禍の中でも未だに対面での会議を求める理由の1つです。そういう文脈が欲しいのです」とアヤコさんは説明する。

アヤコさんは、そうした触れ合いや誰かの近くにいるということは不可欠だと考えているが、オンラインで会う方が相応しい人とならオンラインで仕事の会議をした方がいいし、本当の触れ合いの要素は家族や友人や大切な人たちから成る小さな輪の中で求めればいい、と主張している。

実際に会うという行為は特別なものとなるのだろうか?

「触れ合いは別の場所で求めればいいと思います。私の『触れ合いの輪』の中にいて欲しいのは私の最も大事な人たちです。オフィスの休憩室で同僚と過ごすのは恋しいですが、混雑したスターバックスも座れる席のない電車も恋しいとは思いません」とアヤコさんははっきりと述べた。

果たしてオンラインでのやり取りは、ランチに行くときに友人が軽く肩を叩いてくれることや、都市のどこでもない場所や、街中や、モールや、目的地にたどり着く前の電車の中などで起こる偶然で予期しない出会いの埋め合わせとなるのだろうか?

「テクノロジーの働きは進化しています。ですが、驚くべきことに、人々が互いと接する方法は、その基本的なジェスチャーや誰かに近づきたいという気持ちの面では、変わっていません。テクノロジーはそうしたプロセスを、よりスムーズなビデオでの会話や、背景の変更や、その他の方法で促進してくれるに過ぎません」とアヤコさんは言う。

バーチャルなコミュニケーションは、やり取りの中で本当は何が起きているのかを読み解くための更なる問いを投げかけることになるかもしれない。しかし、テクノロジーは距離を超越し、幸か不幸か、特にパンデミック中において、通常なら起こりにくかったであろう人との繋がりを可能にしている。

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