
ラワン・ラドワン
ジェッダ:聖書の時代から、人間は変わらず紅海に魅せられている。今でもその謎と秘密を解き明かすための深海探査が行われ、独特の海洋環境について新たな発見がなされている。
直近の研究プロジェクトである北東海域の6週間の探査で、驚くべき事実がいくつか明らかになった。
10月に、30人の乗組員がOceanXplorer1に乗り込んだ。OceanXplorer1は、この種の船舶では最先端とされる探査・研究・メディア船である。NEOMメガシティ・プロジェクト、サウジアラビア王国環境・水資源・農業省、キングファハド石油・鉱物大学、キング・アブドゥッラー科学技術大学、そしてナショナルジオグラフィックなどに属する専門家を始め、著名な科学者、海洋学者、研究者が参加した。
今回は960時間以上を費やして1,500平方キロメートルを超える範囲の海底マッピングを行った。海洋生物学の知見を深める発見をしただけではなく、自然界の見方を変え得る想定外の新たな情報も明らかにした。
NEOMの最高環境責任者であるポール・マーシャル氏は、大都市開発が進むサウジアラビアの沖合に広がる手付かずの海とほぼ外的影響を受けていない海洋生物に感銘を受けたようだ。彼は30年以上にわたり、サンゴ礁修復や保全活動の改革などの海洋環境プロジェクトに携わってきた。
アラブニュースの取材に応じたマーシャル氏は、紅海には明らかになっていない可能性が山ほどあることにすぐに気づいたと語った。「王国は、世界の海洋環境の素晴らしい部分を管理して守っています」
海洋探査イニシアチブのOceanXや研究者らと提携したこの紅海探査は、パンデミックの只中というとりわけ困難な時期に始まった。だが、それは多くの課題のひとつに過ぎなかった。
たとえば、OceanXplorerの有人深海探査船は、この種の船舶では最先端である。最深1,000メートルまで探査できるが、その深度では、ほとんどの海域で水温が急激に低下する。比較的浅い紅海では、水温は摂氏20度ほどしか下がらないため、潜水艇が稼働できる深さは約700メートルに限られる。
ある場所では驚愕の出来事が待っていた。チームは、遠隔操作の無人探査機が、沈没船近くの深度約650メートルでそこをすみかとする謎の巨大イカを3度目撃したと考えている。
「長さ約6〜8メートルの巨大イカを至近距離から見ました」とマーシャル氏は言った。「そもそもあれほど大きなイカは多くありません。しかし、これまでに紅海で巨大イカは目的されていません」
「ダイオウイカであれば、水中で撮影されたのは過去に2回だけです。ダイオウイカではないなら、この地域で存在が確認されていない種です。実際は何なのか正確にはわかりませんが、非常に面白い発見であることは確かです」
チームは他にも多くの発見をした。高さ635メートルの尖礁(海底から伸びた柱のような高台)、世界最北に位置する深海の塩水溜まり(周囲の海よりも極端に塩分濃度の高い海底の水溜まり)、プレートの移動によってできた新しい亀裂、そして難破船3艘などだ。
またチームは、近年科学者の関心の的になっているいわゆる「スーパーサンゴ」を調査した。この用語は、気候変動などによって引き起こされる環境の変化に対して特に耐性があると考えられているサンゴ種を指す。
NEOMの海洋保護プログラムのディレクター、アメール・アブドゥラ・イーウィダ氏は、今回の探査のコーディネーター兼主任科学者である。彼は、海洋・サンゴ礁保全科学の分野で国際的に幅広く活動し、汚染など、人間の活動がこの傷つきやすい生息環境に及ぼす影響を扱ってきた。
NEOMにしかない紅海の生息環境には、世界で最も耐性が高いサンゴが存在する。
「サンゴ礁科学の目標のひとつは、極度の熱に耐えるスーパーサンゴの特徴を進化論、生物学、海洋学の面から理解することです」と、イーウィダ氏は述べた。
「NEOMの紅海のサンゴ礁は、何千年にもわたって進化を続け、高温に対する耐性と回復力を獲得してきました。適切に管理・保護すれば、その特性ゆえに、地球規模の気候変動と海の温暖化の影響を受けても生き残る可能性が高くなります」と、イーウィダ氏は述べた。