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アラブの若者が抱く不安、失業が上位

アルジェリアで論議を呼ぶ大統領選挙戦。改革派の抵抗運動の中核となる若者たちと、彼らが権力に恋々としているとみなす老齢の特権層との間の深い溝が際立つ。(AFP)
アルジェリアで論議を呼ぶ大統領選挙戦。改革派の抵抗運動の中核となる若者たちと、彼らが権力に恋々としているとみなす老齢の特権層との間の深い溝が際立つ。(AFP)
11 Dec 2019 09:12:57 GMT9

Jumana Khamis,ドバイ

  • 30歳未満の若者の55%、最大の問題は政治腐敗と回答
  • 専門家「中東・北アフリカ地域では高い失業率は政治腐敗と一体」

その国の将来いかんは若者の質にかかっている、とはよく言われることだ。経験上も、若者が高いレベルで労力や政論に参加している国は社会の発展に前向きの影響を与えうる。若者がこうした機会に恵まれているアラブの国々は数えるほどしかないのは憂うべきことである。

アラブ世界は人口の65%が30歳未満の層だ。アラブニュースでYouGovが実施したアラブ戦略フォーラム調査研究によると、この層の55%は自国の最大の問題は政治腐敗とみており、これに失業(46%)、政治不信(36%)が続く。

同研究は、中東18カ国の18歳以上のアラビア語話者3,079人と面談し、その懸念する内実を把握しようとした。また、イスラム教と政治がアラブ人として生きる中でどう交わるのか、その意見を測った。

アラブ世界で2番目に大きな関心事は、男女問わず生活費を稼ぐ能力だ。これを焦慮の問題と考えるのは、18~25歳の層(47%)のほうが40歳以上の層(37%)よりも高かった。

専門家によれば、その国が制度的にどれほど腐敗しているかという問題と失業の間には直接の関連がありうる。これは、透明性の欠如と投資および経済活動の手控えには関係性があることがわかっているためだ。

中東政治を研究する、シャルジャ・アメリカン大学のアビール・アルナジャル准教授は、政策設計の誤りがアラブ経済圏への信頼をおとしめ雇用の創出を妨げているとしている。

持続不能の戦略、工業・農業・その他開発計画への投資不足により、アラブ諸国の多くが経済活動を自由闊達にできずにいる。

アラブ湾岸諸国では41%が職探しの心配をしている。この数字は北アフリカでは45%へ上昇し、地中海東岸地域では36%に落ち込む。などといったことも今回の研究からわかっている。

失業を最大の問題としたのはモロッコ(68%)とオマーン(56%)で、これは政治腐敗よりも多い数値となった。

アラブ世界で失業が問題となる原因は、政治や行政の問題を脇に置けば、高等教育のカリキュラムと労働市場が求める一連のスキルとの間に乖離があるためだとみられる。

この地域の教育システムには「パラダイムシフト」が必要だと、アルナジャル准教授は本紙に語る。「専攻科目、専門領域には見直しが必要です。技術は新しくなり、足元の教育資源は適切に活用すべきだからです」

今年に入って国際労働機関(ILO)の示した数値によると、アラブ世界で25歳未満の若者5人に1人が「無職かつ職務能力なし」とされた。

イスラム協力機構の独立恒久人権委員会で事務局長を務めるマルグーブ・ブット氏は、先にアラブニュースの意見記事で若者について次のように述べている。「あらゆる社会の未来」だと。

目下、若者の相当数が非正規労働者であるとブット氏はしている。精力的に職探しをしても深刻な問題に直面することが多いという。「社会的流動性の機会が制限されており、社会生活・文化生活・経済生活・政治生活への参与に規制があるのです」

アラブの若者たちにはどういった政治観が受け入れられやすいのか、という問題ではYouGov調査で次のことがわかった。「過激な論調はイスラム教と相容れない」との主張を聞いても、18~24歳の層ではまったくこれに与しそうにないのだ。

アルナジャル准教授の見解ではこれはまったく驚くに当たらない。その理由は、統治や宗教や経済の政策に関わる問題をきちんと理解するには、「情報にアクセスする手段・報道の自由・良識的なジャーナリズム」が必要だからだ。この三つはアラブ諸国では「いちじるしく制限されている」。

とはいえ情報源ということではこの世代は史上どの世代よりも潤沢とも映るが、ほとんどは、ネット上の「情報過多により失われてしまう」のだと准教授は語る。

「注目が集まるほど収益も上がるというアテンション・エコノミーは特定のコンテンツを優先する仕組みであることから、残念ながらアラブの若者たちもイスラム過激派の意見表明にさらされやすくなっている」。ここで同氏の語るコンテンツとは、低質で人目を最大限引くようなたぐいのもののことだ。

多くのアラブの若者たちは日々の生活に真摯に取り組み、情報を求めて不断に努力している。

しかしながら、広く公開されている情報はしばしば、「若者たちを日常生活や将来とはほとんど関わりのないイデオロギー闘争へと注意を振り向ける」ことを目標とする者たちにより「統制・操作されている」のだという。

アラブの若者たちの大半は基本的にイスラム教と関わりがあり、これが彼らの自己認識の重要な支柱ともなっているのだ、ともいう。

「しかし、彼らは損なわれた形でしか世界と向き合えない。イスラム教を自己の地政学的な目的に到達するための手段として利用しつづけている特定の集団ないし国家があるからです」

これについては、アラブの知識層や指導者らにその責任の一端は帰するとし、現代の若者たちとより幅広い話題で対話できる「機微な話題」をそうした層は論じていないのだとしている。

中東の目下の強権的な風土では、若者たちは政治や教育の紛争においては「おまけ」扱い、イデオロギー闘争では「火に注ぐ油」程度にしか見られていない、と同氏は語る。

アラブ世界の若者たちは、教育が行き届かないかぎり、その希望や熱意が満たされることはない、とアルナジャル准教授はいう。

カリキュラムは見直す必要があるし、アラブの人々への生涯教育には、メディア・リテラシー、クリティカル・シンキングをぜひとも科目として取り入れるべきだ、というのが彼女の意見だ。

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