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日本における心の健康と正気のスティグマ

精神の修復は、日本においてタブーのテーマであるというだけではない。中東の多数の国々では、復活力という名の下に、助けを求めることを控えるという文化が再確認されている。(Shutterstock)
精神の修復は、日本においてタブーのテーマであるというだけではない。中東の多数の国々では、復活力という名の下に、助けを求めることを控えるという文化が再確認されている。(Shutterstock)
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25 May 2022 11:05:15 GMT9
25 May 2022 11:05:15 GMT9

ナダル・サモーリ

大阪:音速よりも速く旅をしているようなせわしない世界において、「あなたの正気はだいじょうぶ?」と尋ねるのは今、至極まともな問いとなってきている。

メンタルヘルス(心の健康)は多次元の概念であり、感情的、心理的、社会的な健康状態のことだ。単に精神の疾患や症状がない状態を言うのではない。メンタルヘルスは広範な概念を網羅しており、とりわけ主観的健全性、感得された自己有効感、自律性、力量、世代間の依存、そして知的および感情的な潜在力を含んでいる。

「メンタルヘルスは、単に精神疾患がないことを言うのではありません。幸せや健康の感覚と密接に関係しています」。臨床心理学の有資格者で、東京のSignant Health社の臨床科学部門副所長であるマチザワ・サヤカ博士は、このように話した。

日本の人々は、自分にメンタルヘルスの心配があっても、スティグマ(不名誉な烙印)のために、専門の治療を受けることに消極的で、ためらう場合が多い。それはなぜなのか?

「日本においては、メンタルヘルスの問題は、個人的な弱さの印だと捉えられることがよくあります。その弱さは、他の人に話したり、助けを求めたりせず、自分で解決するべきものとされているのです」。マチザワ博士はこう話した。

注目すべきは、日本は常に、世界の幸福度指数のランキングが低いということだ。2021年の世界幸福度報告によると、日本は146ヵ国中55位で、先進国の中では相対的に低かったのである。ランキングを比較してみると、例えば台湾は24位、シンガポールは32位だった。この幸福度ランキングは、一人当たりのGDP、社会的支援、健康寿命、人生選択の自由、他者への寛容さ、汚職・腐敗の認識度を含めた6つの要因によって決定されている。

「日本のランキングは、一人当たりのGDP、社会的支援、健康寿命では他の多くの国々よりも高くなっている一方、人生選択の自由や寛容さでは低かったのです。日本におけるメンタルヘルスを長期的に改善するためには、精神疾患の罹患率を減らすことに注目するだけではなく、社会規範と慣行を変えることにより、人々の主観的健全性を改善させることにも力を入れるべきなのです」。マチザワ博士はこのように述べた。

日本におけるメンタルヘルスは、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響も受けている。日本生産性本部の最近のレポート(2021年)によると、日本の約40%の組織はパンデミック以降、コミュニケーション、同僚との関係、仕事環境の変化や将来の不確実性により、従業員・職員のメンタルヘルスが悪化していると述べた。日本では自殺者が2020年に急増した。特に女性やティーンエイジャーに多かった。しかし、他者に犠牲を強いる精神的苦痛や、甚大ではあるが見えにくい感情的影響について、議論されることはほとんどない。パンデミックが続く中、スティグマと戦い、メンタルヘルスの医療関連サービスへのアクセスを高めることが、非常に重要になってきている。

「私のアドバイスは、自分が制御できる物事に集中するということです。毎日繰り返す活動や習慣的行為を設定することは、制御、安全、安定の感覚を高める一助となる可能性があります。私たちは他者をサポートし、自分たちのコミュニティに奉仕することにより、仲介やつながりの感覚を取り戻せるのです。他者を助けることを通して、自分が無力な犠牲者ではなく、変化を起こせる素晴らしい仲介者であると実感することはよくあります。最後に、何かに圧倒されたり、絶望的な気分になったりした時には、自分の気持ちや懸念によって孤立しないように、他者とつながり続けることが大切です。私は、精神疾患に関連するスティグマと戦い、心の健全性について人々に教育し、メンタルヘルスの医療関連サービスをもっと身近なものにすることは、極めて重要だと考えます。加えて、学校、職場、コミュニティといったさまざまな場でのプログラムを通して、メンタルヘルスのリテラシーを高めることも肝要です」。マチザワ博士は、このように付言した。

精神の修復は、日本においてタブーのテーマであるというだけではない。中東の多数の国々では、復活力という名の下に、助けを求めることを控えるという文化が再確認されている。

ひょっとすると、発生を繰り返す問題を認め、精神疾患と戦い、メンタルヘルスの問題自体をある種のパンデミックとみなす時期が来たのかもしれない。人々は、助けを求めることが弱さではないと認識する必要があるのかもしれない。自我を脇に置き、己の限界を認め、助けを求めようとするのは、勇気のいることなのだ。

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