アラブニュース・ジャパン

日本食レストラン木村屋は2020年にアラブ首長国連邦（UAE）に初出店し、既にディラ地区のシェラトン ドバイ クリーク ホテル & タワーズに4号店を開いた。

このレストランは、手頃な価格で料理を提供し、「日本にいるような気分になれる」カジュアルで典型的な料理屋体験によって、10年以上にわたって街で主導的であった高級日本料理界と対照をなす、新たな展望を加えようとしている。

木村屋は本国において既に根強い人気を得ており、日本全国の約200店で成功を収めている。本物の日本料理への関心が人々の間で高まっていることから、UAEへの進出が決まった。

「ドバイには多国籍な要素を取り込んだ日本食レストランは数多く存在するため、本当の意味での日本食レストランを開くことを目指しました」と、木村屋の取締役総支配人である茂木貴洋氏はアラブニュース・ジャパンの独占インタビューで述べた。

UAEには日本食レストランの選択肢が数多くあるものの、貴洋氏は日本国内のレストランの味や雰囲気を再現した真の本物といえる店を見たことはないという。そのため、同氏は伝統に忠実な店を開くことにした。 

「多くの現地の人々は日本が大好きで、かなりたくさんの人が日本に旅行に行こうとしていると聞きますが、日本にあってここにないものは、食事なのです。『ドバイでどこに行けば本物の日本食を食べられるか』と聞く人がいても、ドバイには実は本物の日本食レストランがないので、これは私にとって難しい質問ですが、今では本物の日本食をお求めなら私たちのレストランに来てくださいと言います」と貴洋氏は語った。

貴洋氏は、彼の言う「本物である」とは何かについて詳しく説明してくれた。同氏は、日本のレストランと専門とする料理分野の経験を積んだ日本人がレストランを経営することで、日本のエッセンスを本当にとらえることができるのだという。現在の業界にはこの点が欠けていると、同氏は考えている。

「ドバイには非常に多くの日本食レストランがありますが、普通日本人シェフがいるのは寿司部門だけです。ところが、テーブル選び、内装選び、キッチンの設計、メニュー選定についてはどうでしょう。こういったものは普通、外国人オーナーが選びます。しかし『本物』というのは、日本発、日本製ということですから、経営陣に日本人がいたほうがいいのです。そういった理由から、私たちのレストランには日本人シェフ、日本人マネージャー、日本人オーナーがおり、そのおかげで日本らしいコンセプトを実現することができるのです」と貴洋氏は述べた。

店に来る客は、照明に照らされた木製パネルに迎えられ、着物などの伝統的な日本の衣装が並ぶ場所へ導かれる。ここでは衣装を身につけて写真を撮影することで、日本文化の一面を体験することができる。

日本食レストラン木村屋の、伝統料理がそろった居酒屋スタイルのメニューは幅広く、多彩だ。（提供）

周囲には昔ながらの日本の食事処を象徴するあらゆる物が配されている。洗練された内装、テラスを見渡せる窓、そして反対側の窓には、食材を丁寧に切り分けるシェフの姿。柔らかで温かな雰囲気で、日本のおもちゃを並べた棚が全体を囲み、天井に飾られた独特なデザインのカラフルな漢字のタペストリーが、レストランの楽しいムードを高めている。

UAEのドバイにある日本食レストラン木村屋の内装。（ANJP）

カジュアルな内装は本物のテーマに沿ったものだと、貴洋氏はいう。

「内装を日本と全く同じようにしたかったのです。華麗でも贅沢でもありませんが、入って来たお客様に、別の国にいるように、日本にいるように感じてもらえます」と貴洋氏は語った。

日本食レストラン木村屋の、伝統料理がそろった居酒屋スタイルのメニューは幅広く、多彩だ。（提供）

伝統料理がそろった居酒屋スタイルのメニューは幅広く多彩で、海老としいたけのだし巻き、たこ焼き、和牛とん平焼きなどの日本独自の料理を含む数百の選択肢がある。目玉メニューはしゃぶしゃぶと焼肉だ。

日本食レストラン木村屋の、伝統料理がそろった居酒屋スタイルのメニューは幅広く、多彩だ。（提供）

木村屋の焼肉が他と違うのは、和牛が供され、量も無制限だという点で、客は高額な料金を払うことなく和牛を楽しめる。

日本食レストラン木村屋の、伝統料理がそろった居酒屋スタイルのメニューは幅広く、多彩だ。（提供）

量が豊富だとはいっても、木村屋が最も大事にしているのはやはり品質であり、品質と味を維持するために食材の多くは日本から輸入されている。

日本食レストラン木村屋の、伝統料理がそろった居酒屋スタイルのメニューは幅広く、多彩だ。（提供）

木村屋は、日本から牛肉を輸入する新たな和牛ブランドも立ち上げた。

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「ステーキにするようなサーロインやテンダーロインといったプライマリーカットが使われるため、ドバイでは和牛は非常に高価です。しかし1頭の牛はこれらの部位だけでできてはいません。多くの供給業者はプライマリーカットだけを輸入しますが、私たちのレストランではその他の部分を使える鍋や焼肉を提供しています。私たちはこういったメニューで牛全体を使うことができると気付き、こういった部位を日本からドバイに輸入しようと取り組んでいます。それを他のレストランに売ることもできるでしょう」と貴洋氏は語る。

同氏はまた、UAEでの顧客対応における成功は、本物の日本の食と文化をより広めること、さらにはもっと重要な「アジアの力」を示すという目的のために、サウジアラビアなどの他のGCC（湾岸協力理事会）加盟国への進出を検討することにつながったと述べた。