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サフワの聖職者は自らが壊したものを修復しなければならない

08 May 2019 10:05:39 GMT9

https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=SQM94vemTds

サウジアラビアの聖職者アイド・アル・カルニ師が今週、あるテレビ番組に出演し、サフワ(別名「覚醒」)運動のこれまでのあり方は誤りであったと謝罪した。これは重要かつ歓迎すべき行動だ。しかしアル・カルニ師とサフワの指導者らがこれまで世に広めてきた過激思想の弊害を払拭するには、まったくもって不十分である。

3月、アラブニュースは「憎しみの伝道者」を世間に知らしめる運動を開始した。毎週、問題のある、好ましからざる聖職者をさまざまな宗教から選び、その信奉者に及ぼしている悪しき影響を明るみに出してきた。憎しみを売り歩くこうした人々の共通点は、イスラム教であれ、ユダヤ教であれ、キリスト教であれ、人々の信仰心につけ込んでその心を操り、暴力をそそのかすところにある。

シリーズ第1弾は今週、ISISの指導者、アブ・バクル・アル・バグダディ師を取り上げて完結した。この第1弾にサフワ運動の主要人物が2人含まれていたが、何ら驚くべきことではない。2人とは、サルマン・アル・オダー師とサファル・アル・ハワリ師だ。

2人について調べるのは難しくもあり、簡単でもあった。難しいというのは、何十年にも渡り数百万の人々を欺き、イスラム教の守護者であると信じ込ませてきたからだ。もちろん、実際は2人が広めた憎悪と過激思想が、イスラム教に多大な害を与えてきたのであるが。一方で、簡単だったというのは、2人(特にオダー師)が人気芸能人並みの地位に祭り上げられていたからだ。名声を好む2人は、不利な証拠となるファトワ(宗教令)、ビデオ映像、説教などを公式のSNSやウェブサイトに多数載せていたので、本紙がそれらを集めて分析するのは容易だった。

サウジアラビアは今、極めて重要な岐路に立っている。中途半端な施策やいい加減な覚悟で過激思想に対処していては到底不十分なのだ

本紙はまた、これらの聖職者のうちの何人かが行った、あるいは演じて見せた、「軌道修正」や原典回帰についても記事にするよう心がけた。彼らは時勢や政治情勢に合わせて言い回しをカメレオンのように変えてきた。特にアメリカの同時多発テロ事件のあとや、サウジアラビア国内でテロ事件が起きるようになったあとでそうした動きが顕著だった。

しかしながら、彼らが広めた過激思想のほとんどはいまだに社会にはびこっている。本当にイスラム教本来の教えに立ち返ったのか、信憑性に疑いも残る。例えば、アル・オダー師が本当に過去と決別したのであれば、なぜ問題の多いファトワを公式ウェブサイトに掲載したままにしておくのだろうか。

サウジアラビアは今、歴史の上でも、今後の発展の上でも、極めて重要な岐路に立っている。国の指導者らは、サウジアラビアを穏健派イスラムに回帰させると宣言した。そのような大事な時期であるから、中途半端な施策やいい加減な覚悟で過激思想に対処していては到底不十分なのだ。

王国はいま女性の地位を高め、他の宗教とも交流を回復し、アート、音楽、娯楽なども受け入れようとしている。かつてこれらを否定するという誤ちを犯していた聖職者は、イスラム教を本来の寛容なあり方に則って解釈し、イスラム教のそうした姿を広めるよう、明確かつ断固とした態度で臨まなければならない。

これはサウジアラビアばかりでなく、全イスラム世界にとって重要だ。イスラム教の二大聖地を擁するサウジアラビアであってみれば、イスラム世界を常に主導していく役割が同国には求められているからだ。

過去のあやまちを認めたアイド・アル・カルニ師のような行動は、あるいは勇気ある振る舞いと世間では見るかもしれない。しかしこれは軌道修正の終わりではないことを肝に銘じておく必要がある。まだほんの始まりに過ぎないのだ。

ファイサル・J・アッバスはアラブニュースの編集主幹です。Twitter: @FaisalJAbbas

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