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サウジアラビアの学生の間で日本が留学先として急速に人気を集める

ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が東京の邸宅に日本の大学に留学中のサウジアラビア人学生の一団を迎える資料写真。(SPA)
ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が東京の邸宅に日本の大学に留学中のサウジアラビア人学生の一団を迎える資料写真。(SPA)
30 Jun 2019 05:06:35 GMT9

ハラ・タシュカンディ

東京:若いサウジアラビア人の間で、日本は最も人気の海外の行き先の1つとなっている。アニメや漫画が好きだったり、文化的に類似点が多いこと、またJポップやコスプレ、ロリータファッションの人気の高まりなどの理由が合わさり、日本文化はサウジアラビアに深く根ざしている。そのためサウジアラビアの学生が日本に留学に行くのも驚くべきことではない。

2007年以前は、日本留学を希望していたサウジアラビア人は、日本の大学に留学を個人で出願するほかなく、また資金も自分で用意できる場合に限られていた。しかしアブドゥッラー国王の奨学金制度が導入されてからは、手続きが簡単になっただけではなく、費用面のハードルも下がった。

日本の大学では入試競争が激しく、海外出身の学生向けの席数は限られており、さらに日本語は母語と全く異なることから、日本の大学に入るのは周知の通り極めて難しい。

しかし、『Arab News』は2014年に、2007年に奨学金制度が始まって以来、少なくとも600人のサウジアラビア人の学生が日本の大学に入学したと報じた。そして2016年には、日本学生支援機構による調査の結果、日本全国で533人のサウジアラビア人の学生が学んでいることがわかった。

『Arab News』では、何人かのサウジアラビア人留学生をインタビューし、強い憧れの的である日本留学の世界を覗いた。

現在修士課程のアブドゥルハディ・ムバラク氏は『Arab News』に対して、日本での生活はとても快適でありつつ、困りごとやコミュニケーションの問題も経験したと言う。

「サウジアラビアと日本の社会には共通性もあります。例えば、ここでは地元の友達を作るのは難しいです。サウジアラビア人も日本人も間接的なコミュニケーションをします。例えば、サウジアラビアのいくつかの地域では、昼食後または夕食後にコーヒーを出されたら、それはコーヒーを飲んで席を離れないといけないシグナルになっています。日本人は、はっきりと『No』とは言いません。もし日本人が『それは難しいです』と言えば、それは『No』と言う意味なのです」と同氏は説明する。

しかし、日本に住む中で元気が出る瞬間もあると同氏は言う。特にサウジアラビアの本当の姿に関して日本人が持っている間違ったイメージを正せる時だ。「日本人にサウジアラビアのイメージを聞くのが好きです。半数は、何のイメージも一切持っていません。まず言われるのは、石油のことか、サッカーチームが強いことです。その次に言われるのはラクダのことで、4人の女性と結婚したらどんな感じかと聞いてくる人も少数ですがいます」

オマール・アル=ガムディ氏は、神奈川工科大学の学生で、計算機科学を学んでいる。同氏は日本での生活は「快適」としつつ、深い人間関係を築くのは難しいとも言う。

「日本はとても快適に住める場所です。公共サービスから、交通、それに店に入ったら客として丁重にもてなしてくれます。でも、日本人と深い人間関係を築くのは、日本語が流暢に話せても難しいです。日本人はよそ者に対しては感情のバリアを持っているようで、そのほかの国の人たちと比べて、日本人に話しかけたり、外出に誘ったり、友達になったりするのは少し難しいです」

コミュニケーション面でのある程度の困難さは、日本人との人間関係の構築だけに当てはまるものではない。イスラム教徒のサウジアラビア人、そして実のところ日本に住むイスラム教と、知り合うことは一般的に簡単ではない。なぜなら日本にはあまりイスラム教徒がいないからだ。

ピュー研究所によれば、日本に住むイスラム教徒の数は18万5000人ほどで、世界銀行によると日本の人口は1億2680万人なので、そのわずか0.1%ほどである。日本のモスク数は200ほどで、そのほとんどは東京に位置している。そのため、地方に住むイスラム教徒は定期的にモスクに通うことが難しいのだ。

ハリド・アル=オタイビ氏は、名古屋商科大学で経営学の修士号の取得を目指している。同氏は2016年夏に日本に引っ越し、企業で乳がん検診を呼びかける活動に参加した。2018年には、アブドゥッラー国王の奨学金の受給が決まった。

手早く事実確認

  • サウジアラビアは、日本とフィリピンに次いで、アニメの人気が世界第3位である。
  • 2016年には、日本学生支援機構による調査の結果、日本全国で533人のサウジアラビア人の学生が学んでいることがわかった。
  • 日本には約18万5000人のイスラム教徒が暮らし、約200のモスクがある。

 

アル=オタイビ氏は『Arab News』に対し、数の記録があるわけではないものの、自身は多くのイスラム教徒の日本人に会ったと言う。「日本のイスラム教徒のコミュニティーは小さいですが、アラビア語を学ぶ日本人やイスラム教に改宗した日本人に多く会い、驚いています。私は時折ボランティアでアラビア語を教えています」

しかし同氏は、日本でイスラム教徒のコミュニティーと接点があっても、イスラム教の祝日はサウジアラビアで過ごす方が好きだと言う。「ラマダンは日本ではなくサウジアラビアで過ごすよう最大限努力しています。日本の職場文化は忙しく、そんな勤務時間がほとんど当然になっています。周囲が働いている中日本で断食することだったり、それに夏の暑さが重なると少し大変です。でもイードのお祝いはそんなに悪くありません。地元のモスクでお祈りして、そこで会う人と挨拶します」

サラ・タハ・ヌール女史(30)は、奨学金を得て日本で生活しながら修士号を取得した。同女史は『Arab News』に対し、イスラム教徒のコミュニティーの助けがあったからこそ、日本で過ごすことができたと言う。「日本にあるトルコのモスクに行った時、様々な国籍のイスラム教徒に会いました。祝日は大抵1人で過ごしていましたが、ラマダンの間には時折イスラム教徒の友達と一緒にイフタールをしました。その中にはアラブ人もそうでない人もいました」

しかし同女史は、まだ日本人の友達とも連絡を取り合っていて、日本に住んだ期間のことをとても楽しい思い出として思い返している。「日本に住んでいた頃、困難なことはほとんど一切ありませんでした。日本人はとても親切で他者を尊重する人たちでしたから」

近年、日本に行って学ぶことを希望しているサウジアラビア人にとっては、選択肢がどんどんと広がっており、また大学の学位取得以外を目指す場合のオプションも増えている。ミスク財団とマンガプロダクションズが、年齢も教育レベルも多岐にわたるなサウジアラビア人向けに、様々な日本の教育機関での受講を目的としたいくつかの日本渡航プログラムの資金援助を行っている。

学べる分野は自動車工学からテレビゲーム開発まで様々で、費用も全てカバーされており、日本留学を検討中だがまずは下見をしたいと考えている若いサウジアラビア人にとってはうってつけのプログラムになっている。

マシャエル・アブアルナジャ女史はホテル業界で働いており、ミスクのゲーム開発プログラムに応募した。

同女史は、日本での経験はこれまでのところ素晴らしいものであり、将来日本に引っ越すことも積極的に検討すると言う。「日本は独特なので、それだけで1つの惑星のように思う人が多いですが、実際のところ私たちと同じような人がたくさん暮らしています。類似性は、道を歩いて人々と交流していればすぐに気づきます」

ムバラク氏にとっては、東京の文化溢れる雰囲気こそ、日本に住む中で最も気に入っている側面だと言う。「東京で私が気に入っているのは、東京にサブカルチャーやホビーが数え切れないほど存在していることです。音楽シーン、ファッションシーン、フードシーン、それからオタク(アニメ)関連などです」

タハ・ヌール女史は、もっと簡潔に日本への愛を語ってくれた。「とにかく日本が大好きなのです。日本人も大好きですし、日本人と交流するのも大好きです」

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