


宇宙ベンチャー企業、アイスペース ISPACE(東京)が開発し、昨年12月に打ち上げられた探査機が26日未明、月面への着陸を試みたが、確認できないまま通信が途絶えた。同社は同日午前、月面へ衝突した可能性が高いと発表。民間開発の探査機としては世界初となる月着陸だったが、失敗した。
記者会見した袴田武史最高経営責任者(CEO)は「着陸直前までデータが得られたのは非常に大きな達成。次に向けた大きな大きな一歩だ」と述べ、2024年以降に計画する後続機に意欲を示した。
同社によると、月からの高度約100キロを周回していた探査機は午前0時40分から降下態勢に入った。約1時間かけて減速し、同1時40分ごろ着陸する予定で、約20分前に高度約20キロで最終噴射を開始した時点までは正常だった。
その後、探査機が認識する高度と、実際の高度にずれが発生。高度計の数値が0になっても実際には着陸しておらず、逆噴射を続けたが燃料が尽きて一定の高度から落下し、月面に衝突したとみられるという。
同社は高度計などの機器やソフトウエアなどに問題があったとみて、通信途絶までに探査機から送られてきたデータを詳しく解析する。
同社が進める月面探査プロジェクト「HAKUTO(ハクト)―R」の最初のミッション。30キロまでの貨物を搭載可能で、今回は宇宙航空研究開発機構(JAXA)とタカラトミーなどが開発した小型変形月面探査ロボットなどを載せていた。
探査機は昨年12月、米スペースX社のファルコン9ロケットで打ち上げられ、約4カ月かけて月周回軌道に到着。月の「氷の海」と呼ばれる地域にあるアトラスクレーター付近に着陸する予定だった。
月面着陸はこれまで旧ソ連、アメリカ、中国の3カ国が成功させたが、いずれも国家プロジェクトだった。
時事通信