ティエス(セネガル):セネガルの都市ティエスの埃っぽい路地で、日本人レスラーの魚住彰吾さんは砂の上にうつ伏せに倒れていた。特大の対戦相手に投げ飛ばされたのだ。
彼はその後、立ち上がって体の砂を払い、周りを取り囲む腰巻を着けたレスラーたちに加わった。
再び戦いの構えを取った魚住さんは微笑んだ。母国日本ではグレコローマンスタイルレスリングの選手として全国レベルで競技した彼は昨年、東京からティエスに移住した。ラームと呼ばれるセネガルのレスリングスタイルを習得するため、またこのスポーツのオリンピック形式についての知識を地元の才能ある選手たちに伝えるためだ。
「練習をするたびに自分自身が強くなっているのを感じます」と、彼は息を整えながら言う。「すごく喜びを感じていますし、成長も感じています」
先祖から伝わる戦いの儀式に起源を持つラームは、収穫期の娯楽行事からセネガルの国技へと発展した。格闘技とアクロバットが融合したこの競技は、相手の背中を地面につけたら勝利となる。
魚住さんがこのレスリングスタイルに出会ったのは、2017年に日本の援助機関と共にセネガルを訪れた時のことだった。セネガルでは「テレンガ」、日本では「おもてなし」と呼ばれる歓待の心など、両国の文化的共通点に興味を持ったという。
2022年にセネガルに完全に移住し、現在は同国第3の都市ティエスにあるレスラーのコミュニティで暮らしている。また、2026年のユースオリンピックに向けて、三十数人の生徒が所属するアカデミーを立ち上げた。
ラームレスラーで魚住さんの親友の一人であるシェイク・バディアンさんは次のように語る。「彼は献身的な姿を示してくれました。十分な給料ももらえないのに祖国を離れ、生活するだけのぎりぎりの収入しかないことを知りながら、私たちのスポーツを発展させようというのです」
「私は自分がどうなろうと彼を助けます」
セネガルの植民地時代の首都サン・ルイで先月開催されたオリンピック形式の全国大会には数百人の観客が押し寄せた。魚住さんとバディアンさんはサイドラインからレスラーたちをコーチした。
彼らの生徒たちの一人は、体重クラスの銀メダルを持ち帰った。
魚住さんはティエスへの帰路で、「セネガルの人たちは家族や友人と一緒に暮らし、このように支えあっています」と語った。「私はそんな文化が好きです」
ロイター