果報は寝て待てとは言われているが、サウジアラビアの場合、厳密には150日近くも待たされたことになる。
今年3月にエルヴェ・ルナール氏が突然退任してから、グリーン・ファルコンズには長い間監督が不在だったのだが、ようやくその状態も解消されることになった。イタリア出身のロベルト・マンチーニが新監督に就任し、次の2026年のワールドカップまでチームを率いることが発表された。
2021年にアッズーリをEURO優勝へと導いたマンチーニ氏の獲得は、世界のサッカー界をリードする存在への探求を続けるサウジアラビアにとって見事な戦略だと言える。
カリム・ベンゼマ、ネイマール、リヤド・マフレズらがリーグに加入し、記憶に残るオフシーズンとなったサウジアラビア国内のプロリーグへの投資が主な焦点となっていたが、今度は代表チームが声明を発表する番だ。
58歳のマンチーニ氏は、マンチェスター・シティでのプレミアリーグ制覇、インテル・ミラノでのセリエA優勝、そしてもちろん、2021年には母国イタリアでEURO2020優勝を成し遂げている。
先週、イタリア代表監督を突然辞任したことで、マンチーニ氏のリヤドへの移籍の可能性が浮上したが、それが今回、確定した。
マンチーニ氏への報酬は決して安くはないが、サウジアラビアは約30年ぶりの大陸タイトルを狙っているため、彼の実績はかけがえのないものとみなされるだろう。
しかし、昨年のFIFAワールドカップでアルゼンチンに対して歴史に残る大逆転勝利を収めたルナール氏の後任として、マンチーニ氏はサウジアラビアサッカー界において決して忘れられることのない大役を果たさなければならない。
UAEで開催されたアジアカップでサウジアラビアが不本意な結果に終わってしまった後、2019年に監督に就任したルナール氏は、グリーン・ファルコンズを瞬く間にアジア屈指の強豪へと変貌させ、2大会連続のワールドカップ出場を難なく決め、さらにはワールドカップで世界に衝撃をもたらした。
最終的にグループリーグ突破こそできなかったが、アルゼンチン戦の勝利と相まって、その戦いぶりでチームは新たなファンを獲得し、ルナール氏は世界のサッカー界で最も注目される監督の一人となった。
ルナール氏は、サウジアラビア史上初めてAFCアジアカップが開催される2027年まで契約を結んでいたため、サウジアラビアサッカー連盟(SAFF)が次のワールドカップ・サイクルを見据えて安心感を覚えたとしても無理はないだろう。
長期的な計画がすべて、ルナール氏が代表監督に留まることを軸に進められている状況下で、今年の女子ワールドカップに向けてフランス女子代表の監督を務めるために退任したいというルナール氏の申し出に、当局が意表を突かれたのは無理もない。
今年3月29日に発表されたルナール氏の突然の辞任により、SAFFは予想もしていなかった「次はどうするのか」という問いに直面することになった。
SAFFは、決断を急がず、サウジアラビアのサッカー界が過去に悩まされたような間違ったやり方をするよりも、時間をかけることを選ぶとコメントした。
しかし、数日が数週間に、数週間が数カ月になり、それでも待ちぼうけは続き、水面下で「なぜこれほど時間がかかるのか」と疑問の声が上がり始めた。
数カ月前の報道では、ポルトガル人監督のジョルジェ・ジェズス氏が後任候補に挙がっていたが、公共投資ファンド(PIF)がサウジアラビアの国内リーグに投資した結果、同氏はアル・ヒラルで監督を務めることになった。
しかし、SAFFの粘り強さは結果としてマンチーニ氏との契約という形で報われた。これは同氏の前任者が築いた礎の上に新たな土台を築こうとする連盟にとって、意義深く見事な戦略である。
策略に富む戦術家のマンチーニ氏であるが、サウジアラビアの優勝への挑戦が期待される大会に備え、アジアカップまであと数カ月、それまでにわずか数試合を残すのみであり、時間を無駄にすることはできない。
アブダビに本拠地を置くマンチェスター・シティをプレミアリーグ初優勝に導いたマンチーニ氏の就任で、タイ、キルギス、オマーンと共にグループFに引き分けたグリーン・ファルコンズへの期待がさらに高まるだろう。
マンチーニ氏の最初の仕事は、来月ニューカッスルで行われる韓国とコスタリカとの親善試合であるが、こうした試合がわずか1週間余り先であることを考えれば、マンチーニ氏はメンバー構成についてほとんど発言権を持たなかっただろう。
つまり、11月のワールドカップ予選、まずはパキスタンとカンボジアによるプレーオフの勝者との対戦、そしてヨルダンとの対戦が、アジアカップまで2カ月を切ったマンチーニ氏にとって、代表チームで印象を残す最初の本格的なチャンスとなる。
時がマンチーニ氏をサウジアラビアに送り届けたのかもしれないが、今は無駄にする時間はない。