
政府は22日、防衛装備品の輸出拡大に向け、防衛装備移転三原則と運用指針を改定した。外国企業に特許料を支払って製造する「ライセンス生産」の武器・弾薬に関し、ライセンス元の国への完成品輸出と、第三国への条件付き移転を解禁。第1弾として、地対空誘導弾パトリオット(PAC2、PAC3)を米国に提供することを決定した。
国際共同開発の装備品に関しては、第三国への部品や技術の直接移転を容認。完成品は与党協議で公明党が難色を示したため見送った。政府は英国、イタリアと次期戦闘機の共同開発で合意しており、両国との作業分担などに関する交渉が本格化する前の来年2月末までに結論を得たい考えだ。
岸田文雄首相は22日、首相官邸で記者団に「(改定で)法の支配に基づく国際秩序を守り、インド太平洋地域の平和と安定を実現していくことに貢献したい」と述べた。
ライセンス生産品の輸出は、米国の装備品を対象に部品のみ可能だった。新たな指針は、対象を米国以外のライセンス元国に拡大し、完成品も含む輸出を解禁。輸出先から第三国への移転も、戦闘中の紛争当事国を除いて認める。
ライセンス生産の装備品は、8カ国の計79品目。米国のF15戦闘機、英国の155ミリりゅう弾、フランスの120ミリ迫撃砲などがある。PAC3や旧型のPAC2の輸出は米国が要請していた。
移転を「救難、輸送、警戒、監視、掃海」に限定した「5類型」に関しては、掃海艦が機雷を処分するための機関砲など、本来任務や防御に必要な武器は認める。ただ、5類型自体の見直しは自民、公明両党間の折り合いが付かず議論を続ける。
これまで明確な規定がなかった部品の輸出は、ミサイルやバルカン砲など単体で殺傷能力があるものを除いて容認。政府は、退役するF15のエンジンをインドネシアへ供与することを検討している。米軍以外の同志国への修理など役務提供や、被侵略国への殺傷能力のない装備移転も認める。
輸出に当たっては、日本と世界の安全保障に与える影響や装備の性質を、国家安全保障会議(NSC)で審査。輸出先から第三国への移転は事前の同意を要件とする。国会の関与は「行政権の範囲内」(政府関係者)として盛り込まなかった。
時事通信