自民党総裁選の論戦が本格化する中、世論調査で支持を集める小泉進次郎元環境相(43)と石破茂元幹事長(67)への追及が激しさを増してきた。日本記者クラブ主催の14日の討論会では他候補の質問が2人に集中し、さながら「包囲網」の様相を呈した。衆院解散・総選挙の時期を巡る両氏の違いも浮かび上がり、「選挙の顔」選びに血眼になる党内の動向に影響を及ぼす可能性もある。
◇軌道修正
「事故が起きたときに責任を担う主体をどう考えるのか」。高市早苗経済安全保障担当相(63)は14日の討論会で、一般ドライバーが有償で客を運ぶ「ライドシェア」全面解禁を提唱する小泉氏をやり玉に挙げ、対抗意識をあらわにした。
性犯罪やストーカー被害の懸念もあるとたたみかける高市氏に、小泉氏は「海外では乗客を警備会社とつなぐサービスもある」と反論。加藤勝信元官房長官(68)は小泉氏の看板政策の解雇規制見直しについて「どういうイメージか」とただし、上川陽子外相(71)は得意の外交で小泉氏に論戦を挑んだ。
同様に3人から質問が集まったのが石破氏だ。林芳正官房長官(63)は石破氏の持論の「防災省」新設を「指揮系統をどうするのか」と疑問視。茂木敏充幹事長(68)は石破氏が公約した「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」創設を「現実的ではない」と厳しく批判した。
追及の矛先が小泉、石破両氏にもっぱら向けられる背景には、世論の支持を集める2人を失速させなければ、決選投票進出がおぼつかないとの計算が透ける。自民関係者は「決選投票に残りそうな候補に追及が集中するのは自然だ」と語る。
集中砲火を浴びる2人は「炎上」を懸念し、公約の一部の軌道修正を余儀なくされている。小泉氏は13日、解雇規制見直しについて「緩和でも自由化でもない」とトーンダウン。石破氏は自民派閥裏金事件の関係議員への対応について「説明責任を果たす」と述べるにとどめ、非公認もあり得るとした当初の発言を後退させた。
◇衆院解散巡り違い鮮明
7候補による追及の中、小泉、石破両氏による論戦も熱を帯びる。14日の討論会では衆院解散のタイミングを巡って激しく火花を散らした。
自民は新首相を指名する臨時国会を10月1日に召集する方向で調整。党内では同9日にも衆院を解散し、衆院選を「同15日公示―27日投開票」の日程で行う案が取り沙汰されている。
討論会で主催者側から「解散は衆参予算委員会での与野党論戦を経てからにすべきだ」とただされた小泉氏は「できるだけ早期に解散する」と改めて強調。「(国民の)判断材料がないというのは全く当たらない。史上最長の総裁選だ。改革プランは明確に話している」とまくしたてた。
これに対し、石破氏は「本当の(与野党の)やりとりは予算委員会だ。国民の判断材料を提供するのは政府・与党の責任だ」と力説。「世界情勢がどうなるか分からないのに、すぐ解散するという言い方を私はしない」と付け加え、小泉氏との考え方の違いを鮮明にした。
党内では新政権の「刷新感」が薄れないうちに衆院選を乗り切りたいとの期待感が強く、両氏の発言は議員心理を左右する可能性もある。総裁選に向けた討論会や演説会は15日以降も連日のように続く。「首相の座」を目指す9候補の論戦が過熱しそうだ。
時事通信