
内戦下のシリアからレバノンに逃れたイスカンダル・サラマ氏は、いつか自分が祖国と日本の架け橋になるとは想像もしていなかった。
32歳の彼は現在、東京を拠点とするシステム開発会社BonZuttnerの最高技術責任者として、シリアのIT人材と日本の企業を結びつけている。
ダマスカス大学でコンピューターサイエンスを学んだサラマ氏は、2018年に「シリア難民の未来のための日本イニシアティブ(JISR)」に参加した。
国際協力機構が運営するこのプログラムは、若いシリア難民に日本留学のための奨学金を提供している。
サラマ氏は創価大学で工学の修士号を取得した後、2020年にBonZuttnerに入社し、シリア人エンジニアに日本企業向けのソフトウェア開発を委託するプロジェクトを統括している。
Nippon.comによると、「日本で学んだことを仲間のシリア人と分かち合うことができます」とサラマ氏は語っている。
この取り組みにより、シリア人技術者は日本のIT労働力不足に対処しながら収入を得ることができる。
サラマ氏は、難民たちのスキルを日本のクライアントに納得してもらうのは難しいと説明し、シリアの未開拓の可能性を強調した。
「私たちは適切な人材を適切な役割に就かせるようにしています」と彼は語った。
BonZuttnerは、2015年に溺死したシリア人少年の衝撃的な画像が拡散されたことをきっかけに、シリア難民の苦境に感銘を受けた坂下 裕基氏によって2019年に設立された。坂下氏はNPO法人WELgeeでのボランティア活動を通じて、多くの熟練した難民が日本で仕事を見つけるのに苦労していることに気づいた。
彼は、シリア人ITエンジニアのマヘル・アル・アユビ氏、そして後にサラマ氏と組み、難民の才能を日本のIT分野に活用するためにBonZuttnerを立ち上げた。
「難民は日本社会を活性化させることができる」と語る坂下氏は、企業が難民のキャリア開発を積極的に支援するよう呼びかけている。坂下氏は、難民は日本の労働力不足に対応できる貴重な人材であると同時に、プロフェッショナルとして成長する機会を得ることができると考えている。
2022年、BonZuttnerはAIデータ注釈を専門とする日本企業Baobabと提携し、難民女性のためのリモートITワークの機会を創出した。シリア、ウクライナ、アフリカの参加者を支援するこのプログラムでは、女性が自宅で柔軟に働くことができる。
BonZuttnerは、シリアとレバノンの参加者、そしてJISR学生の配偶者を含む在日シリア人女性のための取り組みを監督している。
サラマ氏は仕事以外にも、JISRの卒業生がトルコとシリアの地震被災者のために募金活動を行っている「ジャパンブリッジ」に貢献している。この団体は2023年の震災で家を失った家族のために恒久的な住宅を建設している。
nippon.comのインタビューでサラマ氏は、日本にいるシリア人の機会をさらに広げ、遠くから母国の復興に貢献することを夢見ていると語った。
「時が来れば、日本からシリアの再建を手伝えることを楽しみにしています」と彼は語った。
難民を統合する日本の取り組みはまだ限られているが、JISRのようなプログラムやBonZuttnerのような企業は、教育や雇用が、避難民が受け入れ国に有意義な貢献をするための道筋を作ることができることを示している。