
東京オリンピックが新型コロナ感染症により1年間延期となったことで、主催者側はかつてない難題に直面し、費用・スポンサー・安全面で頭を悩ませている。
1年延期となっても、こういった問題の多くには解決策が示されていない。世論調査によると東京都民はコロナが世界的に大流行する真っただ中、オリンピックを開催することへの熱意を失いつつあるようだ。一言で言えば「簡素化」- オリンピック委員会役員向けの新しい流行語。
東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長はいみじくもこう語った。オリンピックは「かつて華美なお祭り騒ぎだった。しかし新型コロナに直面するなか、昔のようなオリンピックが人々の共感を得られるのかという問題がある」
世界中で何百万人もの失業者が出て、世界恐慌以来最悪の経済状況の下、役員たちはオリンピックを簡素化すべく苦労している。
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は先月AFPとのインタビューでこう語った。「日本側関係者や仲間たちと力を合わせ、オリンピック開催組織を簡素化し延期により発生する費用をどう浮かせるかを探っている」
しかし、具体策は不明なままだ。東京五輪組織委はコスト削減案が200ほど議論されているというが、具体例は明らかにされていない。
観客数を削減し開会式や閉会式の参加者数を減らすことなどを検討中と伝えられている。
くどいようだが、実際のところは不明だ。
最新の予算案によると、開催費用は組織委員会、日本政府、東京都が分担し126億ドルとなる見込みだ。
しかし延期により莫大な追加費用が発生した。会場や交通機関の再予約にかかるお金や、組織委で働く多数の人員をもう1年確保するための人件費などだ。
IOCではすでに8億ドルを確保し、オリンピック延期に伴う主催者やスポーツ団体にかかる追加負担を軽減する手はずを整えているが、そのうち6億5千万ドルが開催費用に割り当てられている。
東京五輪組織委は追加費用に関して口を閉ざしている。費用を計算する前に主催者側の費用を確定させる必要があるからだという。オリンピックというものは、7年間の準備期間を経ても、あらゆる面を見直してやり直す必要が出てくるものだ。主要な問題を2つ取り上げよう。スポンサーと会場だ。
開催までちょうど1年となった時、東京五輪組織委は翌年の会場が100%確保済みと発表した。各種競技のスケジュールもほぼ変更なしという。
しかし会場の再配置にどれほどの費用が発生するかは不透明なままだ。2021年に向け会場をすでに予約した団体に対する補償金の問題もある。
もう1つの大きな問題は選手村で、その多くがすでに湾岸沿いの豪華マンションとして売却されている。
オリンピックが延期となり状況が不透明な状態が続いているため、スポンサー側も神経質になっている。33億ドルを超える額を支払う予定だったからだ。この金額は東京都の歳入額の半分を超える。
NHKが先月発表した調査結果によると、スポンサーの65%がもう1年財政的支援を継続するか否かを決めかねているとみられる。日本政府高官は2度目の延期が実質不可能であり、来年開催されない場合は中止もやむを得ないことを認めている。
IOCのバッハ会長は、2021年が東京オリンピック開催の「最後の選択肢」であるという日本の見方を理解すると述べ、永遠に延期を繰り返すことは不可能だと強調した。
いかに楽観的に考えても、コロナが猛威を振るう状況下でオリンピックを開催できる保証などない。
神戸大学の岩田健太郎教授(感染症学)は、「正直言って、来年オリンピックは開催されないと思います」と述べた。
「日本が来年の夏までに新型コロナをコントロールできるようになる可能性はあり、そうできればとは思いますが、世界中で可能となるとは思えないので、オリンピック開催については非常に悲観的にみています」と語った。
東京都の小池百合子知事は先月AFPに対し、大会参加者全員の安全を確保するため「120%」の努力をすると語ったが、これは決して容易なことではない。
組織委は「今年の秋以降に世に出る」コロナ対抗策を注視すると確約したが、いかに困難となるかをジョン・コーツIOC調整委員長がまとめて述べた。
「選手村を隔離するのですか?到着した選手を全員隔離所に入れるのですか?
観客の会場立ち入りを制限するのでしょうか?メディアがいるミックスゾーンへの選手立ち入りを禁止するのですか?」
「206の国から選手を迎え入れなければならないので、本当に頭を抱えているのです」とコーツ委員長は述べた。「莫大な人数になります」と付け加えた。
AFP