韓国で新たな二体の像が作られた。一人の男性が少女の前でひざまづいている。この少女は、先の大戦での旧日本軍による性奴隷制度の被害者を象徴するものだ。日韓両国の外交上機微に触れる問題として浮上しつつある。日本政府の報道官役を務める官房長官はこの男性像が日本の首相ではないのかと疑問を呈している。
山深い平昌(ピョンチャン)の街で民間の植物園を所有する金昌烈(キム・チャンニョル)氏は28日AP通信の取材に対し、8月10日に予定の銅像の除幕式は「望まぬ論争」を引き起こすとして中止するとした。
銅像の発案は自分だと金氏は語ったが、男性像は特に日本の安倍晋三首相を意図したものではない、ともした。2012年の首相就任からこの方、安倍氏は韓国人の怒りを買っている。戦時下の日本に対する国粋主義的な立場、またソウルの日本大使館前やその他の場所に設置された性奴隷被害者を象徴する同様の像の撤去を韓国政府に求めてきたからだ。
が、金園長の二体の銅像については韓国人の間でも批判が起きている。ソーシャルメディアでは、「悪趣味」「挑発が過ぎる」といった声が上がる。像の設置は、両国が歴史をめぐる軋轢を解決してほしい、との願いを込めたものだ、と金氏はしている。政治的な議論を呼び起こすことになることは想定していなかったともする。
金氏は引き続きみずからの植物園に像は置く構えだ。「男性像は安倍氏かもしれない。安倍氏でないかもしれない。この男性は、現在あるいは将来にわたって、性奴隷の被害者たちに心からの謝罪をおこないうる責任ある立場にある者なら誰を表していると言ってもいい。つまり少女の父親だっていいわけだ。像を『永遠の贖罪』と名づけたゆえんでもある」
昨年、韓日関係の落ち込みはこの数十年で最低の水準にまでいたった。戦時中の史実については両国間で長年論争が続いていたが、それがついに貿易や防衛協力の問題にまで波及したためだ。
日本の菅義偉官房長官は会見で、男性像が安倍氏を表したものであるとするなら、「国際儀礼上」容認できるものではない、と語った。
「そのようなことは国際儀礼上、許されない」と、菅氏は語った。
性奴隷をめぐる論争は、日本が1910年から45年にかけて朝鮮半島を植民支配したことの名残だ。第二次大戦中、アジア、多くは当時の朝鮮半島から数万人の女性が前線の軍慰安施設に送られ、旧日本兵へ性行為を提供したと歴史家らはしている。
韓国は現政権の前の保守政権のもとで数十年来の性奴隷にまつわる論争に終止符を打つべく努め、2015年に、日本政府がソウルに本部を置く元慰安婦への支援を目的とする財団の設置に10億円(900万ドル)を提供することで合意した。
この合意は韓国国内では悪評芬々だった。多くの韓国国民が、和解金が少なすぎるとして政府を批判し、被害者をカネで黙らせようとしているとして日本政府を難じた。2017年に政権に就いたリベラルの文在寅現政権は財団の解散に及んだ。理由は、前政権は合意にいたるまでの過程で被害者らと適切な意思疎通をしていないため、合意には正当性がない、というものだ。