
安倍晋三首相は28日、首相官邸で記者会見し、辞任の意向を表明した。持病の潰瘍性大腸炎再発により職務継続は困難と判断したと説明、任期途中での辞任を陳謝した。首相は新型コロナウイルスの収束や日本経済の立て直しに道筋を付けられないまま、来年9月までの自民党総裁任期を待たずに退陣することになった。
同党は政治空白を避けるため後継選びに着手した。
首相によると、6月の定期検診で持病に再発の兆候があるとの診断結果が出され、今月中旬に再発が確認されたという。
首相は「病気と治療を抱え、体力が万全でない中、大切な政治判断を誤ることがあってはならない」と指摘。「国民の負託に自信を持って応えられず、職に在り続けるべきでない」とし、「職を辞することになったことについて国民におわびする」と述べた。
辞任に関しては「新体制に移行するならこのタイミングしかないと判断した。今週の検査を受けて判断した」と明らかにした。「任期途中での辞任なので批判は甘んじて受ける」と述べた。
次期党総裁の選出方法については「党に任せている」と述べるにとどめた。「次の総裁選に影響力を行使しようとは考えていない」とも語った。
首相は会見に先立ち、自民党臨時役員会に出席し「前の政権のときのように突然辞任をして迷惑を掛けることがあってはいけないので辞任の決断をした」と説明した。麻生太郎副総理兼財務相、自民党の二階俊博幹事長、公明党の山口那津男代表とは個別に会い、意向を伝達した。
今月17、24両日、首相は検査のためとして東京都内の慶応大病院を訪問。24日には「また仕事に頑張りたい」と記者団に語っていた。
首相は2006年9月、戦後最年少の52歳で第1次政権を発足。しかし、持病が悪化し、07年9月に退陣した。その後、12年12月に政権に復帰。大型国政選挙で19年参院選まで6連勝し、今月24日には連続在職日数で歴代最長記録を更新した。
8年近くの長期政権を生かし、官邸主導で政策を推進。集団的自衛権の行使を一部容認した安全保障関連法を成立させ、消費税率を2段階で10%に引き上げた。一方、憲法改正や北朝鮮による日本人拉致問題の解決には至らず、森友・加計学園や「桜を見る会」をめぐる問題では「権力の私物化」との批判を招いた。
JIJI Press