
他国領域内のミサイル拠点などをたたく「敵基地攻撃能力」の保有について、政府が年末までの結論取りまとめを見送る方針であることが3日、分かった。「平和の党」を掲げる公明党は慎重な姿勢を崩していない。来年10月に衆院議員の任期満了が控えており、選挙協力を優先し、公明党に配慮した。複数の政府・与党関係者が明らかにした。
安倍晋三前首相が退任直前の9月に発表した談話は、「与党と協議し、年末までにあるべき方策を示す」と明記。北朝鮮の核・ミサイル能力の向上を念頭に、迎撃のみの防衛に疑義を唱え、抑止力の強化を訴えた。これを受け、防衛省や国家安全保障局は「敵基地攻撃を目的とした装備体系は保持しない」とする従来の政府見解の変更を模索している。
しかし、政府と与党の協議が始まる見通しは立っていない。公明党は「選挙前に議論はできない」(幹部)と一様に厳しい態度のためだ。山口那津男代表は10月27日の記者会見で「敵基地攻撃能力は政府自身が昨年まで否定的に捉えてきた政策判断だ」とけん制した。
菅義偉首相の周辺は「選挙前は公明党に配慮せざるを得ない」と漏らす。また、北朝鮮による弾道ミサイル発射の回数が減ったこともあり、議論の機運は必ずしも高まっておらず、政府関係者も「国民の危機感が薄れている」と指摘する。
首相は所信表明演説で「談話を踏まえて議論を進める」と述べるにとどめ、結論を出す時期を明言しなかった。一方、首相は安倍政権の「継承」を掲げ、安倍氏の談話を無視することはできないため、政府内では「年末に方向性くらいは出すのではないか」との見方も出ている。
JIJI Press