
菅義偉首相は、看板政策の「大阪都構想」で挫折した日本維新の会との連携を引き続き重視する考えだ。政策で維新と重なる部分が多いことに加え、今後の国会運営で維新の協力が必要な場面も否定できないからだ。ただ、維新が勢いを失えば、首相の政権運営にも影を落としかねない。
首相は2日、都構想の賛否を問う住民投票が反対多数となったことについて、記者団に「大都市制度の議論において一石を投じた」と配慮を示した。首相は「経済を回復させていく中で、地方を元気にするためにいろんな議論をしていくことは大事だ」とも語り、地方活性化などで維新と協力していく姿勢に変わりない考えをにじませた。
維新の松井一郎代表(大阪市長)と信頼関係を築いてきた首相は、2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)の誘致実現をバックアップ。カジノを含む統合型リゾート(IR)の大阪誘致でも連携してきた。国際金融都市構想の実現など、力を注ぐ政策課題で維新との連携を期待する。
国会運営でも安倍前政権時、「共謀罪」法などの与野党対決法案で維新の協力を得てきた。首相は、政権の「補完勢力」として今後も「維新カード」を保持しておきたい考えだ。
自民党大阪府連が都構想に反対する中、首相は10月30日の参院本会議で、維新の片山虎之助共同代表の質問に対し「二重行政の解消と住民自治の拡充を図ろうとする大都市制度の大きな改革だと認識している」と答弁。維新に最大限配慮したのは今後のことが念頭にあるためだ。
それだけに、松井市長が23年4月の任期満了で政界を引退すると表明したことは首相にとって痛手だ。求心力がなくなった維新が次期衆院選で議席を減らす可能性もある。首相が衆院選を乗り切ったとしても、国会で「応援団」が減ることになる。
JIJI Press