
京都の街並みを織りなす伝統的な木造家屋「京町屋」が減少を続けている。老朽化や所有者の高齢化、高い維持費などを理由に、取り壊されることが多いためだ。「長年培われてきた文化が失われるのは残念」。危機感を持つ人たちが保存の道を模索している。
京町家は建築基準法が施行された1950年以前に建てられたものが多く、間口が狭く長い奥行きが一般的。その造りから「うなぎの寝床」とも呼ばれる。土で塗り固めた「虫籠(むしこ)窓」や、内側から見えやすく外からは見えにくい「京格子」など、特徴的な意匠が風情をかきたてる。
京都市によると、京町屋は市内に約4万軒(2016年度時点)あるが、調査を開始した09年度から約15%減少。相続時に子どもの世代が手放すことが多いといい、18年には室町時代に建てられた市内最古の「川井家住宅」が不動産開発会社に売却され、取り壊された。
こうした中、景観維持などのため、京町屋の保存・再生に知恵を絞る動きが広がる。
国の重要文化財で、築150年超の歴史を誇る「杉本家住宅」。管理団体は総工費2億円をかけ、初の大規模な改修工事を今秋に計画しており、費用の一部を賄うためのクラウドファンディングを始めた。
同団体によると、維持費の確保が大きな負担となっており、これまで細かな修繕は京都府の補助金で賄っていた。ただ、雨漏りするなど老朽化が進んでおり、初めて屋根の全面ふき替えなどを決めたという。団体幹部は「京町家の暮らしや文化を次の世代につなぎたい」と意気込む。
明治初期に建てられた京町屋の雰囲気を残しつつ、クラフトビールのパブとして再生されたのは「家守(やもり)堂」。既存の柱や梁(はり)の傾きを補強するなどし、建物の「歴史」を可能な限り残した内装にこだわった。
オーナーの堀輝也さん(53)は「一度壊した街並みは元に戻らない。歴史を大切にしていきたい」と次世代に引き継ぐ思いを語った。
JIJI Press