韓国のオリンピック委員会（大韓体育会）が17日（土）、国際オリンピック委員会によって挑発的であると裁定されたことを受け、16世紀の朝鮮・日本間の戦争を引き合いに出した東京のオリンピック選手村の横断幕を撤去したと述べた。

横断幕の撤去に同意するに際し、韓国側は、IOCから日本の「旭日」旗をスタジアムや他のオリンピック会場で掲げることは禁止されるという約束を受けたと述べた。外に向けて広がる16本の光線のついた赤い太陽を描いたこの旗は、これを日本の戦時中の過去の象徴とみなす韓国やアジアのほかの地域の多くの人々から憎まれている。

日本のいくつかの右翼集団からの抗議を招いた韓国の横断幕は、韓国選手の部屋のベランダにかけられたもので、個々の旗を合わせて「私にはまだ5千万の韓国民の支持が残っています」というメッセージをつづっている。

これは、16世紀の朝鮮の海軍将軍李舜臣の有名な言葉からとられている。歴史伝承によると彼は、1592～1598年の日本の朝鮮侵略の際、規模で勝る日本の船団に対する決定的な勝利を勝ちとる前に、李氏朝鮮の国王宣祖に「私にはまだ12隻の軍船が残っております」と述べた。

大韓体育会は、IOCから、横断幕は戦争を連想させ、「オリンピックの用地、競技会場、またはその他の区域では、いかなる種類のデモンストレーションも、 あるいは政治的、 宗教的、 人種的プロパガンダも許可されない」と記されたオリンピック憲章第50条に違反していると告げられたと、述べた。

大韓体育会は、同じ規則を旭日旗にも適用しすべてのオリンピック会場で旭日旗を禁止するとIOCが約束したことを受け、横断幕の撤去に同意したと述べた。

「この同意の下、IOCがすべてのオリンピック会場で旭日旗の掲示を禁止し、政治的な問題が起きないようにする一方、選手たちが競技に完全に集中できるよう、私たちははさらなる論争はおこしません」と大韓体育会は声明のなかで述べた。

東京オリンピック組織委員会の武藤敏郎専務理事は、IOCは韓国の横断幕は「適切ではない」とみなし、撤去するよう要請したと述べた。

組織委員会の橋本聖子会長は、この問題については「さまざまな考え方がありえる」ことを認めた。

「メッセージが政治的とみなされるのであれば、それはオリンピック及びパラリンピックの世界をひとつにするというメッセージに反します」と彼女は述べた。

日本の関係者は、IOCがオリンピックにおいて旭日旗も禁止したという韓国側の発表については、コメントしなかった。

韓国は、旭日旗をナチスのかぎ十字になぞらえてオリンピックの場で禁止するよう、2019年に初めて、IOCに正式に要請した。韓国のオリンピック関係者は、その後、東京オリンピックの組織委員会は、旭日旗は日本で広く使われており政治的な主張とはみなされないとして、禁止を求めた彼らの要請を拒否したと述べた。

多くの韓国国民は、1910年から1945年にわたる日本による朝鮮半島の植民地支配に対し今も恨みを抱いており、近年では、歴史、通商、軍事協力をめぐる論争のために2国の関係は戦後最悪の状況である。

両国は、北朝鮮の核の脅威と中国からの挑戦に直面するなか米国の伝統的な同盟国である日韓との3者間の協力を強化することを訴えたジョー・バイデン米大統領の就任以来、関係を改善しようと努力してきた。しかし、今のところ進展は遅い。

韓国の外務省は17日（土）、日本大使の相星孝一氏をよび、他の日本の高位外交官による発言に抗議した。地元の放送局によると、この外交官は、記者との懇談の際に、文在寅 （ ムンジェイン ）韓国大統領の2国間の関係の改善に向けた努力を、卑俗な言葉を用いて愚弄した。

両国は、文大統領がオリンピックの開会式に出席するために東京を訪れ、日本の菅義偉首相と関係改善について会談する可能性について検討してきた。

AP