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アラブ首長国連邦、ガザの負傷者を医療関係者らは「いままで見たこともないようなものだ」 と形容

エティハド航空のフライトは、さらなる治療のためにエジプトのアリーシからアブダビに渡航するガザの患者のための 「空飛ぶ病院 」となった。(AN Photo: Mohammed Fawzy)
エティハド航空のフライトは、さらなる治療のためにエジプトのアリーシからアブダビに渡航するガザの患者のための 「空飛ぶ病院 」となった。(AN Photo: Mohammed Fawzy)
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03 Dec 2023 11:12:59 GMT9
03 Dec 2023 11:12:59 GMT9
  • 子供たちの身体には重度の火傷、怪我、骨折、変形があったと医療関係者らが報告した
  • 過酷な環境下で働くアラブ首長国連邦の医療関係者らは、避難便でのあらゆるシナリオに備えていた

アラブニュース

アブダビ:パレスチナ人の小児科看護師エティマド・ハッスーナ(Etimad Hassouna)看護師は、アラブ首長国連邦の任務でガザから避難してきた負傷したパレスチナの子供たちを手当てする際、想像を絶する光景を目にした。

ガザ出身のハッスーナ看護師は、アラブ首長国連邦のブルジェール病院、NMCロイヤル病院、シェイク・ハリファ・メディカル・シティから集まった約30人の医療専門家からなるボランティアチームの一員である。同チームは、24時間に及ぶ予測不可能で困難な避難任務において、戦争で負傷した患者を支援するために精力的に働いてきた。

停戦終了後の激しい攻撃の後、120人のパレスチナ人負傷者とその家族を乗せたエティハド航空の12月1日の避難便で、ハッスーナ看護師はアラブニュースに対し、ガザの人々の負傷は、看護師としての22年間の経験の中で「いままで見たこともないようなものだ」と語った。

「救急部、外科、小児科病棟での経験の中で、ここまで重度の火傷、怪我、骨折を負った子供たちの症例を見たことはありません。瓦礫の下から救出された患者のほとんどは、一生障碍を背負うことになるのです」

ハッスーナ看護師は、様々な専門分野の同僚とともに、負傷した避難民がさらなる治療のためにアブダビに着陸するまで、エジプトのアリーシ発の「空飛ぶ病院」で安定した状態を保てるように努めている。

予測不可能な状況のため、同チームはあらゆるケースに対応できるようロジスティック面での準備を整え、その場で行動するよう求められているが、ハッスーナ看護師は、苦しみの大きさを目の当たりにするのはやはり辛いと語った。

「罪のない子供たちがこれほど苦しんでいるのを見る悲しみと、子供たちを救う手助けをする機会を得た喜びとが入り混じった気持ちです。私たちが無力だと感じていたことを考えると、このささやかな貢献は恩返しをしているという気持ちになります」と30年前にガザを離れたハッスーナ看護師は語った。

故郷ガザから避難してきた負傷したパレスチナの子供やがん患者を看護するエティマド・ハッスーナ看護師。(AN Photo: Mohammed Fawzy)

同郷の重傷患者の治療にどのように対処しているのかと尋ねられたハッスーナ看護師は、「信仰と希望」が彼女を支えていると答えた。「このような任務に就く理由も同じです。特に子供たちを助けるときには」

ガザで避難し、悲惨な状況で暮らしている親族を持つハッスーナ看護師は、「簡単なことではありませんが、女性や子供たち、患者のために強くならなければなりません」と述べた。

負傷したパレスチナの子供たちやがん患者2000人を避難させるというアラブ首長国連邦の目標に携わるハッスーナ看護師の同僚の中には、紛争地帯で働いた経験を持つ者もいる。

しかし、アブダビのブルジェール医療センターで看護部長を務めるヨルダン人のサーブリーン・タワルベ看護師は、過去のどのガザ紛争よりも深刻な負傷をチームは目の当たりにしていると語った。

タワルベ看護師は2014年の戦争中、ガザ内の医療チームの一員として働いていたが、10月7日以降のイスラエルの砲撃による子供たちの火傷や負傷は、より深刻で激しいものだという。

「下半身全体に火傷を負った2歳の乳児を受け入れました。私が手当てした子供たちは、深刻な変形を負っていました」と、アラブ首長国連邦の3度目のミッションに参加したタワルベ看護師は語った。

極度のショックとトラウマを抱えた患者には、医療ケア以上に希望に満ちたアプローチが必要だ。

「はじめて故郷を離れて新しい場所に移動すること、ましてやトラウマを抱えていることを考えると、避難中の患者たちに安心感を与えることが重要です」

2014年のガザ戦争に従軍したサーブリーン・タワルベ看護師は、現在進行中の戦争における子供たちの負傷ははるかに深刻だと言う。(AN Photo: Mohammed Fawzy)

タワルベ看護師は、「状況は一時的なものであり、強くなり完全に回復して、いつか故郷に帰ることができるという希望を患者たちに与える必要があります」と付け加えた。

リビア、アフガニスタン、コンゴで戦争負傷者の手当てをしてきたこの医療専門家は、頭蓋骨を骨折した7歳の少年と2歳の幼児の2人の従兄弟の付き添いとしてやってきた11歳の少年のことを決して忘れないだろうと語った。2人の従兄弟の家族は殺されていた。

「子供がヒーローになるのを見ました。彼はおそらく子供時代を子供として送ることができなかった人です」とタワルベ看護師は語った。「長い間、医療分野で勤務してきて、私はこの使命に選ばれたのだと感じました。人助けに携わることができて嬉しいです」

任務の絶え間ない改善

アラブ首長国連邦の医師や看護師は、事前にどのような症例を担当することになるのかが不明なため、任務中は臨機応変に対応し、あらゆる種類の機器と様々な専門知識を準備しておかなければならない。

将来の備えを強化するため、医療スタッフは各任務の課題から常に学び、次の任務に向けての改善を目指している。

たとえば、最初の避難任務では、脊髄損傷の患者の首を固定する器具が不足していたため、患者を飛行機に乗せるのに苦労した。別の任務では、予想をはるかに上回る数の患者を受け入れた。

「任務のたびに新しいことを学んでいます」とタワルベ看護師は言う。

医療従事者たちは、ガザからの患者あらゆる症例に対応するため、柔軟で機敏な計画に従っている。(AN Photo: Mohammed Fawzy)

シェイク・ハリファ・メディカル・シティ(SKMC)のコンサルタント救急医であるケネス・チャールズ・ディトリッチ(Kenneth Charles Dittrich)医師によると、彼のチームは、麻酔科医、呼吸器技師、身元確認のための管理アシスタント、4人の看護スタッフで構成され、あらゆる年齢層の患者の不測の事態に備えているという。

「避難してきた患者は、いくつもの国境で何度も審査を受けます。その間に、安定していた患者の容態が変化することがあります。そのようなダイナミックな病状に対処するために、私たちは常に立ち回り、さまざまな役割を果たす必要があるのです」

スタッフは、患者の初期評価を行い、搭乗してくる患者の症例のリストを渡すラファとアリーシの現場の医療スタッフ、およびエジプトの医療従事者と連携している。

患者を受け入れると、アラブ首長国連邦の医師が再評価を行い、機内で行う治療計画を立てる。

医師はまた、アラブ首長国連邦当局と連携して、患者を国内の様々な専門病院に振り分ける。

アラブ首長国連邦の任務には様々な国籍の者が参加し、人道的大義を支援する団結力を示している。

救急専門医であるケネス・チャールズ・ディトリッチ医師は、特に紛争地帯における仕事の重要な側面は、人間であり続けることであると語った。(AN Photo: Mohammed Fawzy)

紛争地帯での困難な活動を42年のキャリアを通じて経験してきたディトリッチ医師は、仕事上で折り合いを設けることを学んだが、ストレスの感情は事後に処理することを自らに許しているという。

同医師は、自分の仕事の重要な側面は「人間であり続ける」ことだと述べ、「死から逃れてきた人々を想い、彼らが後に残してきたものを考えると圧倒されます」と付け加えた。

「私たちが最初にすることは、様々な感情やストレス、トラウマを抱えたまま長旅を続けてきた患者たちに栄養と水分を提供することです」

「私たちは支援をする立場にあり、それは常にポジティブな側面です」

 

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