
政府は外交・安全保障政策の中長期的な指針となる「国家安全保障戦略」の改定時期について、2022年末とする方向で調整に入った。中国の動きなどを念頭に置いた経済安保の推進を明記する方針で、敵基地攻撃能力保有の是非が検討の焦点となる。複数の政府関係者が明らかにした。
現在の国家安保戦略は第2次安倍政権下の13年12月に「おおむね10年間」の構想として策定されており、今回が初の改定となる。併せて、防衛力整備の目標を示す「防衛計画の大綱」、5年間の防衛費総額や主要装備品の数を定める「中期防衛力整備計画」も見直す。
政府関係者によると、覇権主義的な動きを強める中国の存在など、日本を取り巻く安保環境の悪化は13年当時の想定を超える。岸田文雄首相は10月の所信表明演説で、安保戦略など3文書を改定する意向を表明。その後の国家安全保障会議(NSC)で作業着手を指示し、敵基地攻撃能力の保有も「選択肢」とする考えを示した。
3文書の見直しを来年末とするのは、前のめりな防衛力強化に慎重な公明党への配慮も理由。検討の本格化を来年夏の参院選後に先送りすることで理解を得たい考えだ。官邸幹部は「選挙前は難しい」と語る。
有識者に意見を聴く場を設けた上で閣議決定する段取りを想定。これに先立ち、来年1月召集の通常国会に経済安保の基本法案を提出する。
経済安保は岸田政権の看板政策の一つ。米中の対立激化や新型コロナウイルスの感染拡大により戦略物資の確保や先端技術の流出防止の必要性が高まったが、現在の安保戦略にはこうした視点が明確に示されておらず、改定論が自民党内に広がっていた。
敵基地攻撃能力に関しては、現行の迎撃システムで対処が難しいミサイルの開発を中国や北朝鮮が進める現状を踏まえ、「抑止力強化」の観点から整備が急務とする意見が出ている。新戦略には日米豪印4カ国の連携や英仏など欧州との協力の強化なども盛り込まれる見通しだ。
時事通信