
ソウル
韓国の文喜相国会議長は水曜日、第二次世界大戦中に日本企業で徴用工として働かされた韓国人に慰謝料を支払うための基金を設置する法案を国会に提出した。
韓国の与野党議員13人が共同で法案を提出した。
法案によると、基金は日韓両国の企業や個人の寄付金によって設立されるとのことだ。その寄付金を活用し、戦時中に強制労働をさせられた人々に対して慰謝料が支払われる。
文議長は法案について、「両国が過去を直視し、悪化の一途を辿る両国関係が未来志向の関係に変わる契機になることを望む」と述べた。
日韓関係は緊張状態が続いているが、韓国最高裁が昨年、日本企業に対して韓国人の元徴用工やその遺族への賠償を命じたこともその一因となっている。
しかし、徴用工訴訟に参加する一部原告側からの反発は根強い。専門家によると、たとえ法案が可決したとしても、最高裁の判決に基づいて訴訟の対象となった日本企業から差し押さえた資産の現金化を、原告が踏みとどまるかどうかは不透明なままとのことだ。
韓国内での反発が強まれば、法案が大幅に見直されることもありえる、と専門家は話す。この件に関して、韓国大統領府は静観を続けている。
法案には、今回提案された基金から慰謝料を受け取った場合は日本への賠償請求権を放棄するという規定も盛り込まれている。差し押さえられた日本企業の資産が現金化されることを防ぐ仕組みだ。
日本政府は、1965年に締結された財産及び請求権に関する二国間協定で元徴用工問題は完全に解決された、という立場を取っている。明らかにその点を考慮してか、法案では日本企業に基金への寄付を強制する行為を禁止している。
韓国政府は基金運営のために寄付金を拠出することで、基金の管理にもある程度関わることになるはずだ。
文議長が作成した法案の初期草案では、基金からの慰謝料の受給対象者として、元慰安婦や第二次世界大戦前や戦時中に売春婦として強制的に働かされた人々も含まれていた。しかし、このアイデアは反対により却下された。
代わりに法案では、韓国政府に犠牲者として認定された元軍人・軍属のリストを拡大させた。
こうした人々の数は約218000名に達すると推定されており、基金から支給される慰謝料の総額は、法案の初期草案で想定されていた元徴用工1500名に対する慰謝料3000億ウォンを上回る可能性がある。
アナリストによると、今回の法案の提出には、日本の安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領の会談を促進させようとする狙いもあるようだ。日韓両国は現在、首脳会談を来週中国にて実施する方向で調整を進めている。
時事通信