静岡県熱海市で昨年7月に発生した土石流災害で、崩落起点に造成された盛り土をめぐる行政の対応に過失があったなどとして、「被害者の会」の遺族や被災者ら113人が5日午後、県と市に約64億円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁沼津支部に起こした。
訴状などによると、市は2007年、盛り土造成について土地の前所有者から申請があった際、災害防止策の項目が不記載の届出書をそのまま受理した。また、造成された盛り土の危険性を十分認識していながら、安全対策を強制する「措置命令」を出さなかったなどと主張している。
県に対しては、熱海市に是正を求めなかったなどと訴えている。
「被害者の会」会長で、母陽子さん=当時(77)=を亡くした瀬下雄史さん(54)は記者会見で、土地の前・現所有者だけでなく「県と市にも過失があったと考えている。同様の被害を繰り返さないために、原因究明と責任追及をしっかりやる必要がある」と話した。
瀬下さんらは、前・現所有者らに損害賠償を求める訴訟も起こしていて、併合審理となる見通し。
このほか、別の遺族らが8月、熱海市長に対する業務上過失致死容疑での告訴状を県警に提出した。
土石流災害では、災害関連死を含む27人が死亡、1人が行方不明となっている。
時事通信