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サウジアラビア、新プラットフォームで世界のサイバーセキュリティを主導

2022年のグローバル・サイバーセキュリティ・フォーラムは「世界のサイバー秩序を再考する」をテーマに、サイバーセキュリティにおける女性、サイバー空間における子供の保護、サイバー犯罪の心理学などの幅広い問題を扱った。(グローバル・サイバーセキュリティ・フォーラム)
2022年のグローバル・サイバーセキュリティ・フォーラムは「世界のサイバー秩序を再考する」をテーマに、サイバーセキュリティにおける女性、サイバー空間における子供の保護、サイバー犯罪の心理学などの幅広い問題を扱った。(グローバル・サイバーセキュリティ・フォーラム)
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10 Jul 2023 08:07:10 GMT9
10 Jul 2023 08:07:10 GMT9
  • GCF協会は「知力を活用し多国間協力を先導する」

レベッカ・アン・プロクター

リヤド:サルマン国王陛下が6月に出した国王令を受けてリヤドに設立されたグローバル・サイバーセキュリティ・フォーラム(GCF)協会は、サイバー空間の急速な発展・進化に、そしてそれが社会に利益をもたらし変革する可能性に対応するための組織だ。

サイバーセキュリティとは何か。簡単な言葉で言えば、PC、モバイルデバイス、電子システム、ネットワーク、サーバー、データなどを悪意ある攻撃から保護することだ。

中東最大の情報通信ハブであるサウジアラビアは近年、サイバー攻撃の増加に直面している。スマートフォン、タブレット、PCなどのデジタルデバイスの普及が大きな要因だ。

2022年のグローバル・サイバーセキュリティ・フォーラムは「世界のサイバー秩序を再考する」をテーマに、サイバーセキュリティにおける女性、サイバー空間における子供の保護、サイバー犯罪の心理学などの幅広い問題を扱った。(グローバル・サイバーセキュリティ・フォーラム)

サウジアラビアは2021年1~2月の2ヶ月間で700万件のサイバー攻撃の標的となった。

サウジのサイバーセキュリティ専門家であるアブドゥラー・アル・グマイジャン氏はアラブニュースに対し、「地域に政治的緊張が存在するとサイバー攻撃がにわかに増加する」と指摘する。「また、サイバー兵器が使用されることが増えた。それらが威力と破壊力を証明し続けるにつれ、攻撃者がその価値に気づいたためだ。そういうわけで、サイバー攻撃に投資する傾向が高まっている」

サイバーセキュリティ関連機関の設立は、国内外におけるこの種の攻撃の頻度を抑制することだけでなく、社会的利益としてのサイバーセキュリティの重要性に対するサウジアラビアの決意を反映している。

GCF協会の広報担当者はアラブニュースに対し次のように語る。「GCF協会は、共通の優先事項、目的志向の対話、影響力のある取り組みを通して社会の強靭性を高めることを目指す世界的プラットフォームだ」

「GCF協会は、世界の利害関係者が全ての社会や国に利益をもたらすために協力し行動するための空間として機能する。知力を活用し多国間協力を先導することで、全ての人のためのより安定した安全なサイバー空間の実現に貢献することを目指している」

GCF協会は、各国政府、企業、個人が直面する最も困難なサイバーセキュリティ上の問題の数々に取り組むことを目的としている。設立時の声明によると、「アイディア交換の触媒」として機能することを通して「ソートリーダーシップを推進し研究を発展させることで、政策上の解決策や行動に知見を提供する」ことが意図されているという。

同協会はまた、国際プロジェクトや、サイバー空間に関する新しい取り組みや既存の主要な取り組みについての文化横断的・世界的なアイディア交流を促進することも計画している。

設立時の声明にはこうある。「当協会は、社会経済的変化を触媒し、知識の境界線を押し広げ、世界の優秀な人々を結束させることでサイバー空間の安定性、安全、繁栄を推進するためのプラットフォームとして機能する。その目的は、サイバー空間の利益を最大化し対話、投資、研究、イノベーションを通して強靭性を構築するような世界的取り組みを開拓することである」

この取り組みはサイバーセキュリティにおける世界のリーダーになるというサウジアラビアの決意を示していると専門家は指摘する。同国は現在、スイスの国際経営開発研究所が公開している世界で最も包括的な報告書とされる「世界競争力年鑑」の2022年版において、サイバーセキュリティ・インデックスで世界第2位にランクされている。

(サイバーセキュリティは)デジタル活動のための安全なプラットフォームを提供することで、デジタルコマースにおける信頼を育み、新技術の開発を促進し、各業界のデジタル変革を容易にする。

モアタズ・ビンアリ氏(トレンドマイクロ地域担当バイスプレジデント)

国家サイバーセキュリティ庁、およびサウジ・サイバーセキュリティ・プログラミング・ドローン連盟や通信情報技術省などの機関は、法律、規制、人材開発の推進を通してサウジアラビアのサイバーセキュリティ分野における台頭に貢献している。

トレンドマイクロの地中海・中東・中央アジア・アフリカ地域担当バイスプレジデント兼マネージングディレクターであるモアタズ・ビンアリ氏はアラブニュースに対し次のように語る。「世界のサイバーセキュリティにおけるサウジアラビアのリーダーシップは、規制、人材育成、技術革新、国際的協力の間でバランスが取れた全体論的な戦略に由来している。GCF協会設立についてのサルマン国王陛下の国王令は、サイバーセキュリティ対策を世界的規模で向上させることを目指すという決意を明確に示すものだ」

トレンドマイクロ地域担当バイスプレジデントのモアタズ・ビンアリ氏

トレンドマイクロはサイバーセキュリティの世界的大手としては初めて、サウジアラビアに中東本部および地域クラウドデータレイクを設置した。サイバーセキュリティにおけるグローバルリーダーである同社は、企業や消費者が安全にデジタル情報をやり取りできるようにすることを目指している。

ビンアリ氏は、「GCF協会は、サイバーセキュリティにおける国際協力や社会経済的成長を育むことでこれらの取り組みを補完するためにある」と続ける。「国際的な理事会と世界の専門家から成る諮問委員会を擁する同協会は、知識交換や協力機会を促進するだろう」

トレンドマイクロの2022年年間サイバーセキュリティレポートによると、サウジアラビアでは同社のサイバーセキュリティソリューションにより合計1億1000万件の脅威が検出・ブロックされたという。

サウジアラビアはアラブ世界のサイバーセキュリティ分野を主導している。同国はサイバー攻撃の主な標的となっているが、「逆境を強みに変え、中東最大のサイバーセキュリティ市場として台頭している」とビンアリ氏は言う。

同氏は、サウジアラビアのサイバーセキュリティに対する先回り的アプローチは「サイバーセキュリティの世界的重要性」に対する理解と「国境を越えたビジョン」を反映しており、「国際的なサイバーセキュリティ・エコシステムに大きく貢献している」と指摘する。

過去数年間、サイバーセキュリティ啓発活動やトレーニングイニシアティブから、学生のサイバーセキュリティへの関心を喚起するためのコンテストまで、同国の一般市民や企業の間のサイバーセキュリティ意識を高めるための取り組みがいくつか行われてきた。

今年、サウジ政府がサイバーセキュリティ規制の遵守を強化したのに加え、同国ではサイバーセキュリティ関連のスタートアップが台頭し、サイバーセキュリティ関連の雇用機会も増えた。

ベンアリ氏は、ビジョン2030のもとでの社会的変革が同国のサイバーセキュリティの前進にいかに貢献しているかも強調する。

サウジアラビアでは、女性の労働参加率を高めるための協調的な取り組みの結果、サイバーセキュリティ分野の技術職や指導的地位に就く女性が急増している。そのような前進を歴然と示す数字がある。サウジ・サイバーセキュリティ・プログラミング・ドローン連盟によると、今や同国のサイバーセキュリティ分野の労働者の45%を女性が占めているのだ。

国家サイバーセキュリティ庁の包括的な「2023年国家サイバー評価計画」は、コンプライアンス監査や重要なシステムの技術的サイバーレビューに重点を置きつつ、国家機関を対象に広範なサイバーセキュリティ評価を実施するとしている。この計画は、同庁が定めた基準や規制への適合性を確保しつつ、国家レベルでサイバーリスクを先回り的に特定・管理することを目指している。

同じく要となるのが、同庁が2022年に立ち上げた「ハシーン・イニシアティブ」だ。これはサイバーセキュリティに対する全体論的なアプローチを具現化したもので、国家機関におけるサイバー脅威や事件に関する情報共有を促進することで集団的セキュリティを育むことを目指している。

このプラットフォームは、「国家サイバーセキュリティフレームワーク」や「一般データ保護規則」などの規制を各機関に遵守させることで、コンプライアンス管理の支援も行っている。また、堅牢なメール認証サービスを通してフィッシングやメール詐欺を阻止することで、サイバー脅威に対する国家の強靭性を強化している。

サウジ政府が行っている施策は他に、統合的なセキュリティ・ガバナンス、効果的なサイバーリスク管理、サイバー空間保護と重要インフラ・情報システムのセキュリティ強化、サイバー脅威から身を守る国家的能力の強化、協調的セキュリティのための連携強化、サウジアラビアにおけるサイバーセキュリティ・エコシステムを強化する国家的能力の構築などがある。

立ち上げられた主要なイニシアティブとしては、サイバーセキュリティの取り組みに対する意識向上のための国家サイバーセキュリティセンターの設立、サイバーセキュリティのための法的枠組みを提供するサイバーセキュリティ法の制定、市民や居住者を教育するための国家サイバーセキュリティ意識向上プログラム、国内のサイバーセキュリティ人材の育成・スキルアップのための国家サイバーセキュリティアカデミーの設立などが挙げられる。

こういったイニシアティブが明確に示すように、またビンアリ氏が強調するように、堅牢なサイバーセキュリティは究極的には生活の質を高めるだけでなく経済的・デジタルなイノベーションを促進する。

ビンアリ氏は、「このデジタルファーストな世界においては特に、サイバーセキュリティは生活の質を高めるうえで不可欠な役割を果たしている」と言う。「オンライン上の我々の存在や、我々が日常的に依存するようになったデジタルサービスを守っている。オンラインバンキング、eコマース、ヘルスケア、教育から、ソーシャルネットワーキングなどに至るまでだ」

「オンラインでの我々の個人情報やプライバシーを守ることで、なりすまし、詐欺、プライバシー侵害などを恐れることなくデジタル世界の恩恵を享受するために必要なセキュリティを提供しているのだ」

サイバーセキュリティは、必要不可欠なサービスをシームレスに機能させるためのカギだ。電力網、交通機関、医療システム、金融サービスなどの重要インフラは、ますますデジタルネットワークに依存するようになっている。堅牢なサイバーセキュリティ対策は、サイバー攻撃によって引き起こされる障害を予防することで、これらの重要サービスの信頼性と可用性を維持しているのだ。

ビンアリ氏は語る。「最後に、サイバーセキュリティは経済成長とイノベーションを促進する。デジタル活動のための安全なプラットフォームを提供することで、デジタルコマースにおける信頼を育み、新技術の開発を促進し、各業界のデジタル変革を容易にするのだ」

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