

今回の海上自衛隊の中東派遣は、防衛省設置法の「調査・研究」規定に基づく日本独自の活動だ。米国とイランの双方に配慮した結果で、新法制定を伴わない異例の海外派遣となる。「1年間」の活動期間は必要に応じて延長でき、情報収集を目的とする派遣は長期化する懸念もくすぶる。
安倍晋三首相は2日、護衛艦「たかなみ」の出港に先立ち、艦内を視察。新たに取り付けられた防弾ガラスなどの説明を受けた後、隊員への訓示で「諸官が赴く海域は日本国民の生活を支える命綱だ」と活動の意義を語った。
政府は昨年末、米国の強い求めに応じて派遣を決定。友好国イランを刺激しないよう、米主導の有志連合への参加は見送った。一方で、バーレーンの米中央海軍司令部に連絡要員を派遣し、活動海域の治安情報を共有するなど緊密に連携するとしており、米国寄りの姿勢は否めない。
派遣期間は1年と定められたが、新たに閣議決定すれば延長できる。活動終了の時期について、河野太郎防衛相は「日本関係船舶の航行の安全に特段の懸念を抱く必要がない状況」と述べるのみで、具体的な見通しは示していない。
首相官邸関係者も「米国はできるだけ長くいてほしいと思っている」と長期化の可能性を示唆する。
海自が先月25日に隊員の家族向けに行った説明会では、「新任務で、どのような環境や仕事なのか分からない」と不安の声が上がった。政府には、今後も活動内容や派遣終了に向けた「出口戦略」について説明責任が求められる。
JIJI Press