
岸田文雄首相は4日の衆院本会議で、国家安全保障戦略など関連3文書に盛り込まれた反撃能力(敵基地攻撃能力)に関し、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合など、武力行使の要件を満たす場合に行使し得る」と述べ、存立危機事態でも発動可能との認識を示した。立憲民主党の篠原豪氏への答弁。
存立危機事態は集団的自衛権行使の要件。2015年に成立した安保関連法(平和安全法制)は、密接な関係にある米国など他国に対する武力攻撃により日本の存立が脅かされる状態を存立危機事態と定義した。
反撃能力の保有を合憲とする根拠について、首相は1956年の政府見解に触れ、「平和安全法制に際し示された武力行使3要件の下で行われる自衛の措置にもそのまま当てはまる」と説明した。
反撃能力発動を巡る米軍と自衛隊の連携について、首相は「情報収集を含め重要だ」としつつ、「日米の統合司令部を設置することは考えていない」と否定した。
公明党の浜地雅一氏は、重要インフラの脆弱(ぜいじゃく)性対策などサイバー安保のロードマップ(行程表)を示すよう求めた。首相は「必要となる法整備等の内容がある程度具体化した段階で示せるよう検討する」と応じた。
国家安保戦略は覇権主義的な動きを強める中国を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置付けた。首相は日中関係について「建設的かつ安定的な関係を双方の努力で構築する」との方針を改めて示した。自民党の小泉進次郎氏への答弁。
質疑に先立ち、首相は安保関連3文書について国会報告を行い、「非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての歩みをいささかも変えるものではない」と強調した。
時事通信