防衛省が他国に比べ立ち遅れている自衛隊のサイバー要員確保に本腰を入れている。今後5年間で専門の隊員を現在の4倍超に増やすなどし、サイバー攻撃の対処要員を約2万人体制とする計画だ。
ただ、精通した人材は民間も含めて不足しており、同省は自前での育成を目指し、教育体制を強化させる。
防衛省によると、2022年度末時点で自衛隊の対処要員は21年発足の「サイバー防衛隊」約540人と陸海空各自衛隊の専門要員合わせて約890人。サイバー攻撃部隊だけで約3万人とされる中国には遠く及ばず、米国(約6200人)や北朝鮮(約6800人)と比べても相当少ない。
計画では、サイバー防衛隊など専門部隊を23年度末までに約2200人、27年度末には4000人に増やす。陸海空のシステム運用員もサイバー攻撃に対応できるように教育し、計約2万人体制で防衛に当たるとしている。
防衛省は増員に当たり、教育体制を抜本的に強化する。23年度末に神奈川県横須賀市の陸自通信学校を「陸自システム通信・サイバー学校」に改編。各自衛隊から人を集めて専門教育をするほか、システム運用員らに対処知識の講習を行う方針だ。指導役を担うサイバー教育部も発足させる。
また、中学校の卒業生が入る陸自高等工科学校では「システム・サイバー専修コース」の内容を充実させるほか、この分野に強い幹部を育成するため、防衛大の新学科設置を検討。既に技術を持つ隊員も民間企業や海外機関で最新の技術を学ぶ。防衛省担当者は「人材は民間でも取り合いだ。機密保持を考えると自前育成がいい」と話す。
昨年12月に改訂された国家安全保障戦略では、サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入を明記。システムへの侵入を防ぐだけでなく、相手への妨害や無力化といった反撃的な運用を打ち出しており、同省はこれに備えた体制整備を加速させる。
時事通信