
シンガポール時事:約3年半ぶりとなる4日の日韓防衛相会談は、懸案となっていた韓国軍艦艇による自衛隊機への火器管制レーダー照射問題について、再発防止策を実務者間の協議に委ねることとした。
事実上の棚上げで、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対し、連携して対応することを優先した形だ。
浜田靖一防衛相と李鐘燮国防相の会談は約40分間行われた。浜田氏はレーダー照射問題を含むさまざまな問題で意見交換を行ったと説明したが、具体的なやりとりは明らかにしなかった。
会談後、防衛省関係者は「韓国側の主張に大きな変化があったとは捉えていない」と説明。再発防止を求める日本側に対し、韓国側は事実関係を否定する従来の立場を繰り返した。
日韓がレーダー照射問題を実務者協議の枠組みとするのは、問題を沈静化させる狙いがあるとみられる。先の防衛省関係者は「日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中、課題があっても韓国との協力が必要だ」と説明する。
防衛省によると、巡航ミサイルを含めた北朝鮮のミサイル発射は2022年に37回と過去最多を記録。先月末には、日米韓の自制要求を無視して「軍事偵察衛星」打ち上げを強行。今回は失敗したものの成功すれば「自衛隊や在韓・在日米軍の動きを把握される」と自衛隊関係者は危機感を示す。
日韓関係は、岸田文雄首相と尹錫悦大統領が徴用工問題で「政治決着」を図ったことを契機として急速に改善。北朝鮮対応でも日韓、日米韓の協力が不可欠との認識を確認している。3日の日米韓防衛相会談では、北朝鮮のミサイル情報を年末までに即時共有することで一致した。
「レーダー照射は日本に強硬姿勢だった文在寅政権の時に発生した。今の政権とは関係ない」。政府関係者はレーダー問題の早期解決にはこだわらない姿勢を示した。
時事通信