
日中韓3カ国は、4年近く中断している首脳会談の開催に向け、調整を加速させる方針だ。いずれも前向きな姿勢を示しており、近く事務レベルの協議を始める見通し。ただ、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡り、日中間の見解は隔たりが大きく、開催の機運に影響を与える可能性もある。
林芳正外相は25日の記者会見で、中国外交トップの王毅共産党政治局員と14日に訪問先のインドネシアで会談した際、「首脳・外相レベルを含む日中韓プロセスを再稼働させることで一致した」と明かした。その上で、首脳会談の早期実現に向け、「3カ国の事務レベルでしっかり検討を進めたい」と強調した。
日中韓は年1回、持ち回りで首脳会談を開催。しかし、2019年12月の中国を最後に見送りが続いている。新型コロナウイルス感染が拡大したことに加え、元徴用工問題で日韓関係が急速に冷え込んだことが背景にある。
ただ、コロナ禍の影響は徐々に緩和。日韓関係も今年に入って首脳同士が会談を重ねるなど改善が進む。
今回の議長国に当たる韓国は、首脳会談の年内開催を目指しており、日本もこれを後押し。林氏は13日、韓国の朴振外相とインドネシアで会談し、「韓国の取り組みを支持する」と伝えた。日本外務省幹部は「韓国の調整を待ちたい」と期待を示す。
中国も開催に意欲的だ。王氏は14日、林氏だけでなく朴氏とも会談。首脳会談の再開へ協力することで一致した。中国としては、米国との対立が激化する中、日韓への働き掛けを強めることで、日米韓の連携にくさびを打つ狙いも透ける。
ただ、処理水を巡る問題が、今後のハードルとなりそうだ。日本が目指す「夏ごろ」の海洋放出に中国が強く反発。韓国でも世論の懸念が根強い。「3カ国とも首脳会談を開きたい気持ちは同じだが、まずは処理水を何とかしないといけない」。日本政府関係者はこう指摘した。
時事通信