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ハマスが壊滅的な攻撃を計画している間、イスラエルはいかに騙されていたか

破壊されたイスラエルの戦車の傍でパレスチナの旗を振って祝うパレスチナ人たち。2023年10月7日、ハーン・ユーニスの東、ガザ地区のフェンスの近く。(写真:AP)
破壊されたイスラエルの戦車の傍でパレスチナの旗を振って祝うパレスチナ人たち。2023年10月7日、ハーン・ユーニスの東、ガザ地区のフェンスの近く。(写真:AP)
2023年10月7日、イスラエル南部のアシュケロンにて、ガザ地区からのロケット攻撃による負傷者を運ぶイスラエルの治安部隊員(『AFP通信』)
2023年10月7日、イスラエル南部のアシュケロンにて、ガザ地区からのロケット攻撃による負傷者を運ぶイスラエルの治安部隊員(『AFP通信』)
2023年10月7日、イスラエルの都市アシュケロンにて、ガザ地区から発射されたロケット攻撃による火災の消火にあたる消防隊員(『ロイター通信』)
2023年10月7日、イスラエルの都市アシュケロンにて、ガザ地区から発射されたロケット攻撃による火災の消火にあたる消防隊員(『ロイター通信』)
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09 Oct 2023 02:10:44 GMT9
09 Oct 2023 02:10:44 GMT9
  • ハマスは経済に重点を置いているという印象を与えていたと情報筋は語る
  • ハマスは攻撃に向けた訓練を白昼堂々と行っていたと情報筋は言う
  • 「これは我々にとっての9.11だ」と軍報道官は述べた。「奴らにやられた」

パレスチナのイスラム主義組織ハマスが壊滅的な攻撃を開始した際にイスラエルが不意を突かれたのは、ハマスによる注意深いカモフラージュが功を奏していたからだった。ハマスはそのおかげで、ブルドーザー、ハンググライダー、オートバイを使って中東最強の軍隊と戦うことができた。

イスラエルの国防にとってはアラブ諸国の軍隊に戦争を仕掛けられた1973年以降で最悪の裂け目となった7日の攻撃の2年前から、ハマスはカモフラージュを行っていた。軍事計画を秘匿しつつ、イスラエルには自分たちが戦闘を望んでいないと信じ込ませていたのだ。

イスラエルが戦争で疲弊したハマスを(ガザ地区の労働者に経済的インセンティブを提供することで)封じ込めていると信じ込まされていた間、ハマス戦闘員は訓練や演習を行っていた。それらは白昼堂々と行われることも多かったと、ハマスに近い情報筋は語る。

この情報筋は、今回の攻撃とその準備に関してロイターがまとめた報告のために多くの詳細を提供してくれた。イスラエル治安当局内の3人の情報筋(他の情報筋と同様に匿名を希望)も、この報告に貢献した。

ハマスに近い情報筋は、エジプトとシリアがイスラエルの不意を突くことで始まり生き残りのための戦いとなった50年前のヨム・キプール戦争(第四次中東戦争)以降で最も驚天動地なものとなった今回の攻撃の計画について説明する中で、「ハマスは戦闘の準備ができていないという印象をイスラエルに与えていた」と言う。

「ハマスはここ数ヶ月、前例のない情報戦術を用いてイスラエルを欺いていた。イスラエルとの戦闘や対立に入ることを望んでいないという印象を公には与えつつ、今回の大規模な作戦に向け準備を進めていたのだ」

イスラエルは、ユダヤ教の安息日かつ宗教的な祭日である日に合わせて行われた今回の攻撃に不意を突かれたことを認めている。ハマス戦闘員はイスラエルの町を襲撃し、700人のイスラエル人を殺害、数十人を拉致した。イスラエルはその後、ガザ地区への報復で400人以上のパレスチナ人を殺害した。

「これは我々にとっての9.11だ」とイスラエル国防軍の報道官であるニル・ディナール少佐は述べた。「奴らにやられた」

「奴らは不意を突き、多くの場所から押し寄せてきた。陸海空の全てからだ」

レバノンにおけるハマスの代表者であるオサマ・ハムダン氏はロイターに対し、パレスチナ人が「イスラエルの軍事力や能力に関係なく」自分たちの目標を達成する意志を持っていることを今回の攻撃は示したと語った。

「彼らは暴れ回った」

ハマスに近い情報筋によると、ハマスは今回の攻撃に向けた準備における最も印象的な要素の一つとして、ガザ地区に模擬的なイスラエル入植地を建設し、軍事上陸の演習や入植地襲撃の訓練を行っていた。これらの演習の動画まで作成していたという。

この情報筋は次のように語る。「イスラエルは確かにそれらを目にしていたが、ハマスには戦闘に踏み込む気はないと思い込んでいた」

ハマスは一方で、自分たちはガザ地区(200万人以上が住む狭く細長い土地)の労働者が地区外での仕事に就けるようにすることの方に関心を持っており、新たな戦争を始めることには関心がないと、イスラエルに思い込ませようとした。

情報筋は語る。「ハマスは、自分たちにはイスラエルに対する軍事的冒険を行う用意がないという完全なイメージを作ることができた」

イスラエルは2021年のハマスとの戦争以降、ガザ地区に基本的レベルの経済的安定を提供するべく、ガザ住民に(建設、農業、サービス業などの給与がガザ地区の10倍になることもある)イスラエル領内やヨルダン川西岸地区での労働許可を数千件与えるなどのインセンティブを提供してきた。

イスラエル軍の別の報道官は次のように述べた。「我々は、彼らが働きに来てガザ地区にお金をもたらすことで一定レベルの平穏が実現すると信じていたが、それは間違っていた」

イスラエル治安当局内の情報筋の1人は、自分たちがハマスに騙されていたことを認めた。「彼らは、自分たちはお金が欲しいのだと我々に思い込ませた」と、この情報筋は言う。「そして常に演習や訓練を行い、ついに暴れ回ったのだ」

ハマスは過去2年間のカモフラージュの一環として、イスラエルに対する軍事作戦を差し控えていた。ガザ地区を拠点とするもう一つの武装組織「イスラム聖戦」が一連の襲撃やロケット弾攻撃を実施した時でさえもそうだった。

パレスチナ組織「イスラム聖戦」の創設36周年を記念する集会に旗を持って参加する支持者ら。ハマスがイスラエルに対し多方面攻撃を開始する1日前の2023年10月6日、ガザ市。(AFP)

全く知らなかった

ハマスが示したこのような自制は一部の支持者から公に批判されたが、これもまた、自分たちは経済に関心があるのであり新たな戦争を起こすことは念頭にないとの印象を作ることが目的だった。

パレスチナのマフムード・アッバース大統領と同大統領が率いるファタハが支配するヨルダン川西岸地区では、大人しくしているハマスを嘲笑する人々がいた。ファタハは2022年6月に出したある声明の中で、ハマスの指導者らがガザ地区の人々を貧困の中に置き去りにしてアラブ諸国の首都に逃亡し「高級ホテルや別荘」で暮らしていると非難した。

イスラエル治安当局内のもう1人の情報筋によると、イスラエルはある時期、ハマスのガザ地区指導者であるヤヒヤ・アル・シンワル氏は「ユダヤ人を殺すことよりも」ガザ地区の管理に執心していると信じていた。イスラエルはそれと同時に、ハマスから注意を逸してサウジアラビアとの国交正常化交渉を推進した。

イスラエルは長年、イスラム主義組織に潜入し監視する能力を誇ってきた。そのため、情報漏洩を回避することがハマスの計画の極めて重要な部分だったと、同組織に近い情報筋は言う。

ハマスの指導者の多くはこの計画について知らなかった。また、今回の攻撃に投入された1000人の戦闘員は訓練中、その正確な目的を全く知らなかったのだという。

ハマスの情報筋は、攻撃の日が来ると作戦は4つの部分に分けられたと話し、その様々な要素について説明した。

第1段階としてガザ地区から3000発のロケット弾が連続で発射され、同時に戦闘員らがハンググライダーに乗って境界を越えイスラエル領内に侵入した。イスラエルは先日、当初発射されたロケット弾は2500発だと発表した。

ハンググライダーで着陸した戦闘員らはその土地を確保した。(侵入を防ぐためにイスラエルが建設した)ガザ地区と入植地を分離する要塞化された電子センサー付きのセメントの壁を、精鋭奇襲部隊が襲撃できるようにするためだ。

戦闘員らは爆発物を使ってこの壁を破り、オートバイで駆け抜けた。ブルドーザーが壁の穴を広げ、さらに多くの戦闘員が四輪駆動車で突破した。目撃者が証言した光景はそのようなものだった。

「大失敗」

イスラエル軍の南部ガザ地区司令部を襲撃した奇襲部隊は、通信を妨害して兵士が司令官や他の兵士を呼ぶのを阻止した。

最終段階として、人質がガザ地区に運ばれた(人質の大半は攻撃の初期に捕らえられていた)。

ガザ近郊のレイムのキブツで行われていたレイヴパーティーから逃げる参加者たちを戦闘員らが拉致したことは広く報道された。ソーシャルメディア上の動画には、銃声の中で数十人の人々が野原や路上を逃げる様子が映っている。

イスラエル治安当局内の情報筋は、「このパーティーはよりによって、こんな(ガザ地区の)近くで行われていたのか」と言う。

この情報筋によると、ガザ地区に近い南部ではイスラエル軍は十分な戦力を持っていなかったという。イスラエル人入植者とパレスチナ過激派との間の暴力の急増を受け、入植者を守るために一部の兵士がヨルダン川西岸地区に再配置されていたからだ。

「彼ら(ハマス)はそこにつけ込んだのだ」

かつてベンヤミン・ネタニヤフ首相の国家安全保障顧問を務めた退役将軍のヤーコフ・アミドロール氏は8日に記者団に対し、今回の攻撃は「南部の情報機構と軍事機構の大失敗」だと語った。

2011年4月から2013年11月まで国家安全保障会議の議長を務め、現在はエルサレム戦略安全保障研究所の上級研究員であるアミドロール氏は、イスラエルの同盟国の一部はハマスが「以前より責任感」を持つようになったと言っていたと述べた。

「我々は愚かにもそれが真実だと信じ始めていた」と同氏は言った。「我々は間違いを犯したということだ。この間違いは繰り返さない。徐々に、しかし確実にハマスを壊滅させるつもりだ」

AFP

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