
ベイルート:レバノンは14日、前日13日のイスラエル側からの越境砲撃により、ロイターの映像記者イッサム・アブダラ氏が死亡し、6人が負傷した件を国連に提訴すると発表した。
レバノン外務省は、同省が「言論と報道の自由に対する重大な侵害および犯罪」と表したこの件について懸念を表明するよう、レバノン国連代表部に要請した。
14日にアブダラ氏の故郷で行われた葬儀には、数百人が参列した。
同氏の棺にはレバノン国旗がかけられて、家族のもとから南部の町キアムにある地元の墓地に運ばれた。
葬儀には数十人のジャーナリストや国会議員も参列した。
アブダラ氏は13日夜、レバノン南部のアルマ・アル・シャーブ村近くで死亡した。当時、国境沿いで起こったイスラエル軍とヒズボラ戦闘員との銃撃戦を取材していた同氏を含む国際ジャーナリストの一団に、イスラエル軍の砲弾が着弾した。
レバノン外務省は、「レバノン南部で繰り返されるイスラエルによる一連の攻撃を取材し … カメラとペンで真実を伝え、真実を主張したいと願いながら、犠牲となった非武装のジャーナリスト」の死亡を批判した。
訴状では、「先週からエスカレートしているイスラエルによる挑発行為と攻撃、それらの結果による人命と財産の損失、そしてレバノンの主権と、レバノンがすべての面において実施し遵守する意思が確認された国連安保理決議第1701号の継続的な侵害」が強調された。
同省は、レバノンは「現在のエスカレーションに関してイスラエルに責任がある」と考えていることを表明した。
「(イスラエルが)行っていることを終わらせられないなら、この地域全体を刺激し、世界の平和と安全、そして全世界の利益が脅かされることになる」と警告した。
イスラエルによる砲撃で、イッサム・アブダラ氏が死亡、イーライ・ブラキア氏(アルジャジーラ特派員)、クリスティーナ・アッシ氏(AFP通信特派員)、カルメン・ジュカダル氏(アルジャジーラ特派員)、マヘル・モハメド・アブドゥル・ラティフ氏とター・ズハイル・カディム氏(ロイター通信イラク人ジャーナリスト)、ディラン・コリンズ氏(米国人ジャーナリスト)が負傷した。
最初の一発が記者の一団の近くに、二発目が取材車に命中した。
レバノン軍は至急、負傷者の救出に向かい、他のメディア関係者にも一帯から退避するよう求めた。
負傷者は今も病院で治療を受けている。
AFP通信によると、ベイルートのアメリカン大学医療センターに入院中のクリスティーナ・アッシ氏は、輸血が必要な状態だという。
アッシ氏の同僚、カルメン・ジュカダル氏は足の傷で手術を受けた。
レバノン軍は14日の声明で、イスラエル軍の砲弾が民間人の車に命中し、アブダラ氏が死亡、負傷者も出たと発表した。
同軍によると、当時、ナルワヒンやアイタ・アル・シャーブ、クファル・シュバ、アル・アディサ各村の郊外や、マルジャユーン平野など、レバノン南部の他地域も、イスラエル軍の武装ヘリコプターや砲撃の標的になったという。
同軍司令部は、イスラエルが「ジャーナリストを直接標的にしている」と非難した。
UNIFIL(国連レバノン暫定軍)広報担当のアンドレア・テネンティ氏は次のように述べた。「13日午後5時20分、アルマ・アル・シャーブ、アイタ・アル・シャーブ、アル・ダイラ、アル・アディサ、フラの各町の付近で、レバノンとイスラエルとの間で激しい砲撃戦がありました」
「大変悲しいことですが、レバノン人映像記者が砲撃戦の最中に亡くなったことを知りました。また、他にも負傷したジャーナリストがいるとの報告を受けています」
イスラエルは13日の事件について否定することはなく、同国のギラド・エルダン国連代表を通じて、「調査を開始する」と約束した。
エルダン氏は次のように述べた。「我が国は常に、民間人が犠牲者にならないように努めています」
「しかし、戦争の最中においては、不幸な出来事が起こる可能性があります。この件について調査を行います。まだ日も浅く、現場で何が起きたのかは分かっていません」
報道によると、銃撃戦が始まったのは、パレスチナ人グループがレバノン側からイスラエル領内に越境しようとして、分離壁で爆破装置を爆発させたのがきっかけだという。
しかし、イスラエル側が侵入者を発見したため、銃撃戦となり、パレスチナ側は撤退した。
その後、イスラエルがその地域に空爆を行った。
「Syndicate of Press Editors」代表のジョセフ・カシフィ氏は、イスラエルの「犯罪組織(criminal machine)」が、「レバノン南部で何が起きているのか、真実の姿を伝えようと職業人としての責務を果たしているジャーナリストを意図的に標的にした」と非難した。
カシフィ氏は、一部の国際メディア機関がイスラエルによる攻撃のニュースは報じているが、責任を負うべき当事者について言及していないと失望感を明らかにした。
同氏は、この事件についての報道は、人間らしい感覚と同時に職業的責務が反映されている必要があると付け加えた。
「Press Syndicate」の関係者によると、ロイター通信は、「SNSで批判が相次いだため、ニュースの表現を変更する」ことにしたという。
しかし、「イスラエル方面からロケット弾が発射」という、あいまいさを含む表現だったため、ロイター通信の最新の報道は依然として批判を受けることとなった。
イスラエル軍のアビチャイ・アドレー報道官は14日、SNS「X」にレバノンを脅迫する投稿を行った。「レバノン政府は、レバノン側から我が国に向けて行われるすべての攻撃について責任を負っている。我が国の領土に侵入しようとして越境する者はすべて、抹殺されることになる」
イスラエル軍は夜通し、レバノン南部地区の上空に向けて閃光弾を発射したり、レバノン西部地区の村落周辺地域、特にアルマ・アル・シャーブの町に焼夷弾を数発発射したりした。