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イスラエル・ハマスの戦争がパレスチナの子どもたちのメンタルヘルスに与える影響

ガザで武力紛争にさらされたパレスチナの子どもたちは、その結果、愛着障害、悪夢、不安障害に苦しむ可能性が高い。(AFP)
ガザで武力紛争にさらされたパレスチナの子どもたちは、その結果、愛着障害、悪夢、不安障害に苦しむ可能性が高い。(AFP)
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28 Oct 2023 07:10:29 GMT9
28 Oct 2023 07:10:29 GMT9
  • イスラエルとハマスの紛争地帯にいる子どもたちは、身体的な負傷だけでなく、永続的な心の傷とも闘わなければならない。
  • 専門家によれば、武力紛争にさらされた場合、愛着障害、悪夢、フラッシュバック、不安障害につながる可能性があるという。

アナン・テロ

ロンドン:過去2週間以上にわたってイスラエル軍のガザ空爆が続いている。一連の攻撃は、紛争の終結が見えない中、すでに10年以上も危機的な状況にある地区の子どもたちを、さらに追い詰めている。

ガザ地区の保健当局によれば、10月7日のパレスチナ過激派組織によるイスラエル南部への攻撃を受けて勃発したイスラエルとハマスの戦争で、2300人以上の子どもたちが死亡したという。

国際連合児童基金(UNICEF)の報告によると、この暴力により毎日平均400人の子どもが死亡または負傷しているという。国際NGOセーブ・ザ・チルドレンは、さらに870人ががれきの下敷きになっていると懸念している。

27日にエジプトとガザを結ぶラファ検問所が再開され、援助物資や医薬品を積んだトラックが何十台も運び込まれたが、援助の必要性は依然として非常に高い。(AFP)

しかし、時に忘れ去られがちなのは、紛争地域の子どもたちは身体的な負傷だけでなく、深く、永続的な心の傷とも戦わなければならないということだ。

UNICEFは最近の記事『ガザにおける子どもの犠牲者 – 我々の集団的良心に刻まれる汚点』の中で、「ガザ地区のほとんどすべての子どもたち」が悲惨な出来事やトラウマを目撃していると述べ、米ラジオネットワークNPRは、2021年の戦争後、ガザの子どもたちの91%が心的外傷後ストレスに苦しんでいると指摘した。

セーブ・ザ・チルドレンの人道・保健上級アドバイザーであるアイーシャ・カディール氏は、「紛争にさらされた子どもたちは、不安、抑うつ、心身症の割合が高いことがわかっている」と述べた。「しかし、子どもたちはその心理的苦痛を一様に表現するわけではない。行動的になる子もいれば、引きこもる子もいる」

「年齢より幼く見えたり、おねしょをしたり、眠れなくなったり、食事を拒否したり、胃痛や頭痛といった内面的な影響を受けることもある。精神的外傷を経験したすべての子どもがトラウマを抱えるようになるわけではない。しかし、紛争体験は有害なストレスの一形態であり、身体的・心理的な害をもたらす」

さらに、セーブ・ザ・チルドレンが昨年作成した報告書によれば、ガザの子どもたちの半数以上が自殺願望を抱いており、5人に3人が自傷行為に及んでいた。そして、今回の暴力の急増で、直接の犠牲になっているのはガザの子どもたちだけではない。

UNICEFは、10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃で30人の子供が死亡し、数十人がガザ内で人質にされているか、または家族が拘束されていると報告している。

ガザ地区の保健当局によれば、2300人以上の子どもたちが死亡したという。(AFP)

ロンドン大学シティ校のカウンセリング心理学者であるジーダ・アル・ハキム氏は、爆撃やミサイル攻撃、家族の喪失に直面した子どもたちにとって、その衝撃が内面に与える影響は、さらなる身体的問題を引き起こしかねないと述べた。

「自分でコントロールできないほど震える、無言、または話すことができなくなる、感情的になる、パニック発作を起こすなどの影響が現れる」と、彼女はアラブニュースに語った。「体内では、トラウマがコルチゾールやアドレナリンのようなストレスホルモンの分泌を誘発する。これが頭痛、胃痛、心拍数の上昇、睡眠不足といった身体的問題を引き起こす」

アル・ハキム氏は、密接な関係があるとはいえ、「ショック」と「トラウマ」は異なると付け加えた。彼女は、ショックとは「被害者の身体と心が切り離され、何も現実味を感じなくなる解離状態」であり、トラウマとは「幸福を乱し、圧倒するような突然の恐ろしい体験」であると説明した。

ショックはトラウマに対する一般的な反応であり、ストレスや圧倒されるような出来事に脳が対処するための手段であるが、すべてのトラウマ的な出来事がショックを引き起こすわけではなく、すべてのショック反応がトラウマの結果であるわけでもない、とアル・ハキム氏は付け加えた。

紛争のさなか、ガザの子どもたちの精神的健康に影響を与えているのは、暴力にさらされることだけではない。強制的な移住、教育、医療、衛生といった基本的なニーズへのアクセスの欠如、家族や友人が直接暴力を経験するといった出来事は、子どもの幸福と発達に打撃を与える可能性がある。

カディール氏は「戦闘が起こっている場所から遠く離れた子どもたちであっても、直接的・間接的な曝露は子どもたちのメンタルヘルスに有害である」と述べ、そのような体験は「しばしば複合化される」と指摘した。

中東のトラウマに関連する課題に従事してきたアル・ハキム氏によれば、武力紛争への曝露は愛着障害にもつながる可能性があるという。悪夢やフラッシュバック、不安障害も、戦争にさらされた子供たちの間で広く見られており、これらはすべて、しばしば発達および学習の障害を引き起こす可能性がある。

シリア北西部、レバノン、イラクで弱い立場にある子どもたちを支援する慈善団体「ワールド・ビジョン・シリア・レスポンス」のハムザ・バルハメー氏は、子どもたちのこうした反応をすべて目撃してきたと述べ、養育者との愛着関係の崩壊は、子どもが安心できる人間関係を形成する妨げになると付け加えた。アル・ハキム氏は、自分を気にかけてくれる人とのつながりがなければ、子どもはアイデンティティの形成に困難を感じるだろうと警告した。

「トラウマ的な出来事を経験した子どもは、人間関係がうまくいかず、他人を身近に感じることができないまま成長する可能性がある」と彼女は語った。「継続的な悲しみと喪失は辛いものである。トラウマ的な出来事を経験することで、世界の安全や自分の価値についての信念など、基礎となる考えに対する子どもの信頼が崩れ、深い孤独を感じるようになる」

ガザの住民のうち、少なくとも140万人が避難している。(AFP)

暴力の停止は、こうした問題に取り組む第一歩ではあるが、子どもの頃に負った心の傷は癒えないままかもしれない。アル・ハキム氏によれば、心的外傷後ストレス、うつ病、不安障害、頭痛などの身体的不定愁訴(ふていしゅうそ)、自殺願望などは、暴力が終わった後でも現れる可能性があり、「トラウマは世代を超えて、家族にも受け継がれる可能性がある」と警告している。

しかし、アル・ハキム、カディール両氏は、シェルター、食料、安全、学校教育、医療、清潔な水、安定といった子どもたちの基本的なニーズを満たすことから始めることには意義があり、こうした影響を軽減する手段であると述べた。

27日にエジプトとガザを結ぶラファ検問所が再開され、援助物資や医薬品を積んだトラックが何十台も運び込まれたが、援助の必要性は依然として非常に高い。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は27日、エジプトのカイロで開催された和平サミットで、「ガザの人々は、必要な規模の援助を継続的にガザに届けるという、さらに多くのコミットメントを必要としている」と述べた。

ノルウェー難民問題評議会(NRC)が発表した数字によると、ガザの住民のうち少なくとも140万人が家を失い、約58万人が、国連が運営する緊急避難所で暮らしている。彼らのニーズを満たすためには、援助物資を積んだトラックが1日100台必要だという。

UNICEFによれば、「ガザの子どもたちや家族は、空爆およびすべての供給路の寸断により、食料、水、電気、医薬品、病院への安全なアクセスが事実上尽きている」という。

戦争で生き残った子どもたちを支援するために、専門家たちは、子どもたちと養育者の基本的なニーズを満たすべきだと述べている。

「養育者の心身の健康は、子どもたちの心身の健康に大きな影響を与える」とかディール氏は語る。「専門的なケアが必要な子どもたちもいるが、基本的なニーズが満たされ、適切な心理社会的支援が行われれば、大多数の子どもたちは前向きに適応していくだろう」

紛争地域の子どもたちは身体的な負傷だけでなく、深く、永続的な心の傷とも戦わなければならない。(AFP)

「家族や社会的ネットワークの支援、安全と正常性の感覚の回復、学校、そして友達と遊べる安全な場所は、子どもたちの回復を助けるために不可欠な要素だ」

アル・ハキム氏は、地域紛争後の公衆衛生的アプローチの採用を提案し、回復のための安全かつ養育的な環境を提供するために、子どものトラウマについて、大人の理解を促すことの重要性を強調した。

「カウンセリング、セラピーグループ、学校プログラム、コミュニティーのサポートは、トラウマを適切にケアし、PTSDの症状を管理し、健全な発達、対処スキル、希望を取り戻すのに役立つ」と、彼女は語る。「その他のセラピーには、文化的伝統、家族の絆、アイデンティティ、自身の価値観を回復させるための芸術、音楽、精神修養、地域活動などがある」

「回復のための非常に重要な側面は、真実と和解の努力、子どもに対する犯罪への説明責任、司法のイニシアティブである」とアル・ハキム氏は付け加えた。

「これらの努力は、個人の回復だけでなく、社会の回復を支え、促進するだろう」

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