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物資だけではガザの病院の患者は救えず、退避は依然として危険:専門家

イスラエルによる爆撃で負傷し治療を待つパレスチナ人ら。2023年10月23日(月)、ガザ市のシファ病院。パレスチナ当局はガザ地区最大の病院である同病院にいる人々を退避させることを提案しているが、専門家らは、脆弱な乳児や患者を移送することは、たとえ最良の状況下であっても危険な判断だと警告している。(AP)
イスラエルによる爆撃で負傷し治療を待つパレスチナ人ら。2023年10月23日(月)、ガザ市のシファ病院。パレスチナ当局はガザ地区最大の病院である同病院にいる人々を退避させることを提案しているが、専門家らは、脆弱な乳児や患者を移送することは、たとえ最良の状況下であっても危険な判断だと警告している。(AP)
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16 Nov 2023 05:11:02 GMT9
16 Nov 2023 05:11:02 GMT9
  • イスラエル・ハマス戦争が勃発して以降、シファ病院は、紛争が激化する中で自宅から逃れた数万人の住民の避難所として機能してきた

ロンドン:ガザ地区最大の病院の中に取り残された患者らについての懸念が高まる中、専門家らは、乳児を含む脆弱な人々を移送することは、たとえ最良の状況下であっても危険な判断だと警告した。

シファ病院は、ガザ市中心部の数ブロックを占める広大な施設である。パレスチナ当局は14日、同病院にいる人々を監督下で退避させることを提案した。その数時間後、イスラエル軍が同病院を襲撃し、事態をさらに悪化させた。

ニューヨークのコロンビア大学のアーウィン・レドレナー医師は、健康問題のある新生児や未熟児を移送することは困難だが、訓練された人間がいて適切な設備と移送計画があれば可能だと指摘した。

小児科医で災害対応専門家の同医師は、イスラエルによる同病院の襲撃前に次のように語った。「保育器に入れられている乳児には複雑な健康上のニーズがあり、温度管理、水分補給、感染対策の投薬、呼吸補助が必要だ」

同医師によると、2012年のハリケーン・サンディによってニューヨークの病院から人々が避難した際、医療従事者は乳児を抱えながら何段もの階段を降りて待機する救急車のもとに向かったが、少なくとも乳児に関しては知られる限り悲劇は起こらなかったという。

米国で最も人口の多い都市圏を襲ったこのハリケーンは、海岸沿いのコミュニティーを壊滅させ、停電を引き起こし、各地で火災を発生させた末に数十人の死者を出した。

「彼らがそのようにできた理由は、計画を立てる時間があったことと、あらゆる適切なリソースが利用可能だったことだ」と同医師は言う。「ガザ地区の現状とは正反対だ」

シファ病院はガザ地区で最大かつ最も設備の整った病院であり、500以上の病床、集中治療室、透析設備などを備える。数週間前にイスラエル・ハマス戦争が勃発して以降、同病院は、紛争が激化する中で自宅から逃れた数万人の住民の避難所として機能してきた。

しかし、シファ病院は今や戦争の中心的な焦点となっている。イスラエルは、ハマスが同病院を軍事目的で使用していると主張しているが、明確な証拠は提示していない。ガザ保健省やハマスはそれを否定している。

物資が残り少なくなり、電気もなく、出口が不確かな状況の中、医療従事者、未熟児、その他の脆弱な患者など数百人が院内に閉じ込められている。

イスラエルは15日早朝に同病院を襲撃した。同軍によると、兵士らには医療チームが同行し、医療用品、ベビーフード、保育器などの設備を持ち込んだという。

しかし、保健関係者によると、物資や追加の設備は患者を救うのに十分ではなく、今も続く戦闘のせいで患者を安全に移送することはほぼ不可能である。

エルサレムで「国境なき医師団」の副医療コーディネーターを務めるナタリー・サートル医師は、多くの患者が何週間も適切な医療を受けられずにいるとしたうえで、彼らが退避に耐えられる保証も回復する保証もないと指摘する。

電気がないことを考えると、保育機はバッテリー駆動型か自家発電型でなければらない。また、レドレナー医師によると、乳児を移送するには訓練を受けた人間が必要だという。

「移送は迅速に行う必要があるため、行き先が分かっていなければならない」と同医師は言う。「酷い災難があった後に現場から人々を安全に移送することは可能だが、重症患者を扱うための専門技能を持ったスタッフが救急車に乗っている必要がある」

ハマスが運営するガザ保健省によると、シファ病院の非常用発電機の燃料がなくなった11日以降、乳児3人を含む40人の患者が死亡し、36人の乳児が死亡の危機に瀕している。

世界保健機関(WHO)は先週、がんや血液疾患を患う子供数十人が治療を続けられるようガザ地区からエジプトやヨルダンへと安全に移送されたと発表した。

シファ病院で外科医として活動している「国境なき医師団」のモハメド・オベイド医師は、最近手術を受けた患者が約20人おり、彼らは歩くことができないと語った。

「患者全員を退避させられるだけの救急車がない」と話す同医師は、自分が去るわけにはいかないと言う。「私や他の外科医がいなければ、誰が患者を看るのか」

赤十字国際委員会は声明の中で、ガザ保健省などの関係各所と連絡を取り合っていると述べた。

さらに、シファ病院の状況を「非常に懸念している」としたうえで、全ての病院は国際人道法のもとで保護されており、暴力の対象となることがあってはならないと主張した。

「病院や医療施設は人道的な聖域であるはずのものだ」

援助団体「パレスチナ赤新月社」は14日遅く、シファ病院の南にあるアル・クッズ病院に残っていた患者、医師、家族らが退避したと発表した。同団体の広報担当者であるネバル・ファルサフ氏は同日のそれ以前にAP通信に対し、院内にはまだ300人が残っていると語っていた。

AP

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