
アンマン:ヨルダンは21日、イスラエルとの国境沿いの軍隊の配備を増強したと発表し、イスラエルが強制的にパレスチナ人にヨルダン川を渡らせようとするいかなる試みも、隣国ヨルダンとの平和条約違反になると警告した。
ヨルダンのビッシェル・アル・ハサーウネ首相は、イスラエルがヨルダン川西岸からパレスチナ人を集団で追放するいかなる移動政策の実施をも阻止するため、ヨルダンは「全力であらゆる手段」に訴えるつもりだと述べた。
イスラエルとガザ地区の紛争は、多くのパレスチナ難民とその子孫が暮らすヨルダンが長年にわたって抱えきた恐怖心を掻き立てている。現在のイスラエル政府の右派勢力である超国家主義強硬派は、イスラエル・パレスチナ問題に対し、ヨルダンはパレスチナとする解決策を長年唱えてきている。
多くの犠牲者を出した10月7日のイスラム主義組織ハマスによるイスラエル南部への攻撃をきっかけに、イスラエルはガザ地区への大規模な砲撃を開始し、ガザ地区住民230万人のうち約170万人が同地区内で避難民となっている。
ヨルダンの国営メディアは、1994年のイスラエル・ヨルダン平和条約に言及したハサーウネ首相の発言として、「いかなる強制退去、あるいは、それを招く状況が創出されれば、それはヨルダンに対する宣戦布告であり、重大な平和条約違反に相当すると我々はみなす。このことはパレスチナの大義の清算とヨルダンの国家安全保障を害することへと通じるだろう」と報じた。
ヨルダンはアラブ諸国において、エジプトに次いで2番目にイスラエルとの平和条約に調印した国であり、イスラエルとは安全保障面で強い結びつきがあった。しかし、イスラエル史上最も右翼的な政権の1つが誕生して以来、両国の関係は急速に冷え込んできている
ハサーウネ首相は、「イスラエルが平和条約の義務を尊重せず、それに違反するとしたら、平和条約は埃をかぶった棚の上の紙切れになるだろう」と述べ、さらに、ヨルダンの国家安全保障に対するいかなる脅威も「あらゆる選択肢をテーブルの上に載せることになる」とし、最近のイスラエルとの国境沿いへ軍隊の配備は、国の安全を守るための措置の一環であると付け加えた。
住民らはここ数日、ヨルダン川西岸の反対側にあるヨルダン渓谷へと通じる主要幹線道路に沿って、装甲車や戦車の大規模な隊列が移動しているのを目撃しており当局筋は、軍はすでにあらゆる事態に備えて警戒を強めていたと話している。
ハサーウネ首相は、10月7日の事件以来、ユダヤ人入植者によるパレスチナ市民への攻撃が増加していることを引き合いに出し、ヨルダン川西岸におけるイスラエルの行動がさらに暴力拡大の引き金になる可能性があると述べた。
これについては米国もまた対立の拡大を危惧し、入植者の暴力を抑えるようイスラエルに求めている。
「イスラエルはヨルダン川西岸のいかなる状況の悪化も避けるべきだ。これはヨルダンが認めない、超えてはならない一線だ」とハサーウネ首相は付け加えた。
ロイター