
ガザ:2カ月に渡って続く戦争の停戦を求める国連の臨時決議は米国が拒否権を発動したため否決され、9日にはイスラエルがガザ地区でのハマス戦闘員に対する攻勢を強めた。
ハマスが運営する保健省の発表によると、ガザ地区の最新の死者数は1万7487人に上り、その大半は女性と子どもだという。ハマスとパレスチナ当局は、この状況で拒否権を発動した米国をすぐさま批難した。
同保健省は9日、南部の街ハーン・ユーニスに対するイスラエルの攻撃により6人が死亡、ラファに対する別の攻撃でも5人が死亡したと発表した。
ハマスは10月7日にガザ地区の軍事境界線を突破し、前代未聞の攻撃を行った。イスラエルの当局発表では、この攻撃で約1200人が死亡し、ハマスによって人質となった人々のうち138人は依然解放が実現していない。イスラエルはこの攻撃を受け、ハマスの壊滅を宣言している。
ガザ地区は膨大な範囲が瓦礫の山と化しており、国連の報告によると人口の約80%が住居を失い、食料、燃料、水、医薬品の深刻な不足に直面しているという。
「とても寒く、テントはとても狭いです。着ている服以外には何も持っていませんし、今後どうなるのかは未だにわかりません」北部ベイトゥ・ラヒアの自宅を追われたマフムード・アブ・ラヤンさんはそう話す。
8日に行われた即時停戦を求める国連安保理決議は、米国が拒否権を発動し否決された。
米国のロバート・ウッド大使は、この決議は「現実を踏まえておらず」、「現場に目立った変化をもたらすことはないだろう」と述べた。
イスラエルのエリ・コーヘン外務大臣は、停戦が「戦争犯罪と人類に対する犯罪を行っているテロ組織ハマスの壊滅を妨げ、同組織によるガザ地区の支配継続を許すことになる」と述べた。
ハマスは9日、「同胞たちを殺害するという形で直接占領に加担し、さらなる虐殺と民族浄化を行っている」として、米国が停戦決議に拒否権を発動したことを批難した。
パレスチナのムハンマド・シュタイエ首相は、米国の拒否権発動は「恥ずべきことであり、占領国による虐殺、破壊、人々への移動の強制を容認する行為だ」と述べた。
米国による拒否権発動はすぐに人道団体から批難を受け、国境なき医師団は安保理が「現行の虐殺の共犯」だと述べた。
イスラエル軍は8日、24時間でガザ地区450カ所を攻撃し、地中海の海軍艦艇からの攻撃の映像を公開した。
ガザ地区保健省は、北部のガザ市付近で40人が死亡、さらにジャバリアと南部の中心都市ハーン・ユーニスでも数十人が死亡したと発表した。
人道的惨事
2カ月におよぶ戦争と爆撃を受け、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は8日、「ガザの人々は絶望に直面している」と述べた。
「人々は絶望し、恐れ、怒っています」グテーレス氏はそう語る。
「これらはすべて、人道的悪夢の循環の中で起きています」
今回の戦争でガザの190万人もの人々が家を追われて南部に移動し、エジプト国境付近のラファは膨大なキャンプと化した。
今回の戦争による医療従事者の犠牲が増えているなか、8日には世界保健機関(WHO)の加盟国数十カ国が、イスラエルに対して国際法に則りガザの人道保護を行うよう求める決議草案を提出した。
草案を提出したWHO加盟国はイスラエルに対し、医療行為のみを行っている医療および人道支援従事者、さらに病院およびその他医療施設を「尊重、保護」するよう訴えた。
国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ガザ地区において何らかの形で機能している病院は、36軒中わずか14軒だという。
民間人の犠牲者が増加しているなか、米国国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は8日、米国はイスラエルが今回の戦争において民間人保護のためにもっとすべきことがあると考えていると報道陣に対して述べた。
「我々は皆、民間人の犠牲を減らすためにもっとできることがあると認識しています。この件に関しては、イスラエル側と取り組みを行っていく予定です」
イスラエルが占領するヨルダン川西岸地区でも死者数は増しており、同地区保健省によると、8日にイスラエル軍がパレスチナ人に対して発砲し、6人が死亡した。
イスラエルは8日、ガザ地区で91人の兵士が命を落としたと発表した。
さらにイスラエルは、夜間の人質救出失敗によって2名が負傷し、この作戦で「多数のテロリスト」が死亡したと発表した。
ハマスはこの作戦で人質1人が死亡したと主張しており、人質のものだとする遺体を映した映像を公開した。この映像に関して個別の裏付けは取れていない。
イスラエル軍は、ハマスのロケットの部品、発射装置やその他武器、さらに1キロメートルのトンネルがガザ市のアル・アズハル大学で見つかったと述べ、住民に対し西部に移動するよう警告した。
AFP