Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

石油市場は備蓄と地政学ゲームの綱引き状態

Short Url:
23 Jan 2022 10:01:24 GMT9
23 Jan 2022 10:01:24 GMT9

モハメド・アル・シャッティ

2022年第1四半期が始まって間も無いが、石油市場の見通しは供給不足が続くとされており、最終的には余剰が出るだろうと一般的に考えられているにもかかわらず、記録的な高値が続いている。

原油価格は底堅く、7年以上ぶりのレベルに達しているが、それは主要産油地域での地政学的な緊張が高まり、原油供給全体を悪化させるおそれがあると、投資家たちが警戒しているためである。

リビア、エクアドル、カザフスタンでの計画外の停電に起因する石油生産の中断や、米国、ロシア、ブラジルでの生産予想の下方修正も、日量百万バレルの供給減につながる可能性がある。

また投資家はオミクロン株流行の先を見越して、この先数カ月で世界的な石油需要は高まると見ているようである。現物市場でのファンダメンタル回復の兆しもその見方を後押ししている。

市場の供給不足に加え、米国とロシアの地政学的離反がガスの取り合いにつながり、暖房用の石油の需要増に拍車をかけるリスクもある。

UAEの石油施設を狙った攻撃は、今年同地域での供給がまた途絶するとの懸念を生んでいる。このことは同地域での地政学的リスクを増大させ、さらにイランと米国の核合意交渉が近いうちに決裂する可能性がある。

世界を見ると、イラクで生じたパイプラインの障害のニュースにより、価格が乱高下した。イラク・トルコ間のパイプラインはバサラグレードとキルクークグレードの混合原油を日量45万バレル運んでいる。

ブレント原油、WTI原油を含む価格変動の期間構造を見ると、この先数カ月の先物価格は供給減のリスクをより強く読み込んでいるが、直近の一時上昇によってエアポケットが生じ、価格が是正される可能性も出てきた。

OPECは2022年も石油市場が堅調な需要で下支えされると期待しており、強気の見通しで、2021年8月以降増産戦略を継続している。各国中央銀行が金融政策を引き締めつつあるが、市場の堅調さは続くと思われる。

中国の原油輸入量は12月に日量1,090万バレルまで増加した。これは独立系製油所が年末までに輸入割当枠を使い切ろうとしたためである。ロンシェン社は中国海域で荷揚げ待ちだった船荷の滞貨解消に忙しかった。中国の原油輸入は1月は前月並みで、少しずつ減少して3月には日量1,050万バレル程度まで下がると見られている。

米国の頁岩層からの原油産出は、2月には全体で日量854万バレルまで上昇し、2020年3月以来の量となりそうだ。

ガス市場の気配は今週は弱含みだったが、アジアでの需要の緩みと欧州のLNG輸入の堅調さを反映したものだ。しかし強気の供給は続いており、価格下落は限られたものになる可能性がある。

ヤマルパイプラインのドイツ・ポーランド部分は、1カ月近く逆送モードだった。備蓄したガスを使い切り、価格が下がったら再備蓄したいという、参加国の思惑を示している。

ロシア・ウクライナ間の緊張と、そのノルドストリーム2の調整プロセスへの影響が価格下落リスクを緩和しており、今年1年間、強気要因となり続けるであろう。このパイプラインがロシアからの輸出量を増やす唯一の手段という見方が大勢だからだ。

2021年と比較して、ロシアから欧州へのガス供給は300億㎥増加する可能性があるが、ロシア・ウクライナ間の緊張が軍事衝突にエスカレートするようなことがあれば、1㎥たりとも実現しないリスクもある。また、そうなれば、現状の輸送も途絶えるであろう。

現物市場では供給減の傾向が見えているが、12月半ばから世界的に備蓄が増え始めている。当社のファンダメンタル予測では、この先数カ月は緩やかに備蓄が増え、2022年後半には不足方向に向かう。供給は増加するより減少するリスクの方が高そうだ。

石油価格は最終的には勢いを失い、短期的には急落しそうだが、要因の一つとして備蓄量を注意して見る必要がある。

全般的な価格トレンドは、第1四半期のファンダメンタル緩和と、今年半ばまでにある引き締めを反映するはずだが、金融市場の需要によりその影響は緩和されそうである。

  • モハメド・アル・シャッティ氏はクウェートの石油アナリストである。
topics
特に人気
オススメ

return to top