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イスラエルとハマスの停戦が実現しなければ、ガザの人道危機が悪化すると支援責任者が考える理由

NGOによれば、イスラエルの新たな攻撃の中、ガザの230万人の住民は誰も、十分な食料と清潔な水を入手できない。(AFP)
NGOによれば、イスラエルの新たな攻撃の中、ガザの230万人の住民は誰も、十分な食料と清潔な水を入手できない。(AFP)
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12 Dec 2023 11:12:52 GMT9
12 Dec 2023 11:12:52 GMT9
  • 米国は最近、イスラエルとパレスチナの過激派組織ハマスとの即時停戦を求める国連決議に拒否権を発動した。
  • NGOリーダーたちは、孤立した戦地の苦しみを表現する言葉を使い果たしてしまったと語った。

アナン・テッロ

ロンドン:国連人権高等弁務官のフォルカー・ターク氏が「世界の終わりのよう」と表現した人道危機の中、8日に米国が即時停戦を求める国連決議に拒否権を発動し、ガザの200万人近いパレスチナ人は過酷な運命に直面している。

アントニオ・グテーレス国連事務総長が6日に国連憲章第99条を発動して警鐘を鳴らし、投票が行われた。条文には、国連総長は「国際の平和及び安全の維持に対して脅威だと認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる」とある。

最近の仮想メディアブリーフィングで、ガザで活動する支援団体の関係者たちは、人道危機と、孤立した戦地となったガザの恐怖を表現する言葉を使い果たしてしまったと語った。

会議を開催したのは、「飢餓に反対するアクション」、「アムネスティ・インターナショナル」、「ドクターズ・オブ・ザ・ワールド」、「国境なき医師団フランス」、「ヒューマニティ・アンド・インクルージョン-ハンディキャップ・インターナショナル」、「ノルウェー難民評議会」、「オックスファム」、「難民インターナショナル」、「セーブ・ザ・チルドレン」の各NGOである。

ガザで活動する支援団体の関係者たちは、人道危機を表現する言葉を使い果たしてしまったと語った。(AFP)

11月24日から6日間続いた停戦の終了と戦闘再開の後にイスラエルは、自国軍が以前、「安全な」地域と宣言していたガザ南部の奥深くまで地上侵攻を拡大した。現時点で180万人以上のパレスチナ人が避難を余儀なくされている。

ガザのハマス政権の保健省当局者によれば、10月7日以来、7,000人以上の子どもを含む17,700人以上のパレスチナ人がイスラエル軍の砲撃で死亡したという。

その日、イスラエル国防軍は、1,440人以上のイスラエル人と外国人が殺害されたり人質となったりしたハマスの攻撃への報復として、ガザで軍事作戦を開始した。

12月10日の時点で、イスラエル国防軍とハマスの武装勢力は南部主要都市ハーン・ユーニスを含むガザのいくつかの地域で戦闘を繰り広げている。同市住民はその前に、避難を求める「緊急要請」を受け取っていた。

「セーブ・ザ・チルドレン」の人道ポリシーおよびアドボカシー責任者、アレクサンドラ・サイエ氏は7日のメディアブリーフィングで、ガザ南部の人道的状況についてこう述べた。「人々は過密状態の避難所やその場しのぎのテントにいて、清潔な水は手に入らず、衛生施設は崩壊しています」

「いわゆる安全地帯のアル・マワシで、子どもたちが飢えています」

アル・マワシはガザ南部の海岸沿いの幅1キロの砂漠地帯で、イスラエルが10月に、「安全地帯」だと宣伝していた。

「ノルウェー難民評議会」のコミュニケーション・アドバイザー、シャイナ・ロウ氏によると、約77万人の国内避難民が133の避難所におり、南部の他の人々はホストファミリーの家に身を寄せたり、路上で寝たりしているという。

ラファ国境付近のサウジアラビアの支援トラック。(SPA)

支援関係者も混乱の影響を避けられない。「ノルウェー難民評議会」のスタッフの何人かは乳幼児とともに、「避難する安全な場所がないため、路上で寝ている」とロウ氏は付け加えた。

「イスラエルによる空、陸、海からの容赦ない攻撃のため、多くの家族が危険地帯から危険地帯への移動を余儀なくされています。何十万人もの人々がガザ北部から逃れてきており、ガザ南部への流入が急増しています」

「セーブ・ザ・チルドレン」のサイエ氏は、「南部では、何百人もの子どもたちがひとつのトイレに列を作り、子どもたちや家族が、食料もなく、行くところもなく、生き延びるすべのないまま、凸凹の道をうろうろしている」との同僚の証言を紹介した。

「私たちのチームは、傷口にウジが湧いたり、麻酔なしで切断手術を受けたりしている子どもたちについて報告しています。100万人以上の子どもたち、事実上ガザの子どもたちすべてが、行き場を失っています」

「ドクターズ・オブ・ザ・ワールド」のアドボカシーおよび保健ディレクター、サンドリーヌ・シモン氏は、ガザ南部の現状は「伝染病のアウトブレイクにつながりつつある」と警告した。

シモン氏は、下痢、急性呼吸器感染症、皮膚感染症の症例が大幅に増加していると述べ、「間もなく、飢餓と伝染病が、爆撃よりも確実に命を奪ってゆくでしょう」と付け加えた。

世界保健機関は、70,000件以上の急性呼吸器感染症、少なくとも44,000件の下痢を記録しており、その半数は5歳以下の子どもたちだ。しかし、実数はもっとずっと多いと思われる。

「飢餓に反対するアクション」の中東担当責任者、キアラ・サッカルディ氏はメディアブリーフィングで、「下痢は、世界的に子どもの死亡率の主な原因」だと述べた。

同氏は、ガザの多くの子どもたちが病気で、健康危機が迫っているのは、「ガザの水と衛生のインフラが完全に崩壊しているため」だと述べた。

「トイレはありません。人々は砂に穴を掘ってトイレにしています。紙おむつ、おしりふき、洗剤などの基本的な衛生用品は、もはや手に入りません」。

「国境なき医師団」のイザベル・デフールニー会長は、ガザにおける医療ニーズは「かつてないほど高く、医療システムは最低の状態」だと述べた。

16年にわたるイスラエルによる封鎖で、ガザの医療システムは、現在の戦闘激化以前から崩壊寸前だった。WHOによれば、現在、荒廃したガザの医療システムは「絶望的状況」だ。

イスラエル国防軍はガザのいくつかの病院を包囲し、ハマスがそれらの施設の中で(あるいは地下で)、司令部を運営していると主張している。ハマスはこれを否定している。

デフールニー氏は、「国境なき医師団」のスタッフは「ガザ北部の病院が死体安置所や廃墟と化すのを」を目撃したと述べ、医療施設がイスラエルの戦車や銃で砲撃され、撃たれ、包囲され、襲撃されており、患者や医療スタッフが殺されていると付け加えた。

「自分の命か患者の命か、想像を絶する選択を迫られて患者のもとを去らざるを得ない医師もいます。現在、ガザ地区北部では手術はもはや行えません。手術サービスはありません」と、彼女は述べた。

ガザの230万人の住民は誰も、十分な食料と清潔な水を入手できない。(AFP)

ガザの「国境なき医師団」国際チームは現在、中央地区のアル・アクサ病院、および南部のハーン・ユーニスのアル・ナセル病院で活動している。

デフールニー氏によると、「国境なき医師団」のチームは11日の夕方、アル・ナセル病院周辺の「砲撃の激しさのため」避難せざるを得なかったという。

「現在、(ガザでは)65,000人が負傷している」と「ドクターズ・オブ・ザ・ワールド」のサイモン氏は述べ、「麻酔薬がないため、耐え難い痛みの中で亡くなる人もいる」と強調し、「さらに何千人もの人が、恒久的障害を避けるのに必要な手術や早期のリハビリを受けられないでしょう」と述べた。

人道支援活動家でさえ、重要な医療サービスを受けることができない。サイモン氏によれば、同僚のひとりは避難先の学校が戦車の攻撃を受けて負傷したとき、病院にたどり着くまでに何時間もかかったという。

「そしてそこでは、何百人もの患者が地面に横たわっていて、疲労し、トラウマを抱えた看護師たちがその患者たちを踏んで歩いていたそうです」

60日以上にわたって、ガザの支援活動家たちは多くの障壁に直面してきた。ガザで活動する27のNGOが12月6日に発表した声明によると、現在、ガザの230万人の住民は誰も、十分な食料と清潔な水を入手できない。

「オックスファム」のパレスチナ占領地ポリシー責任者、ブシュラ・ハリディ氏は、「カレム・シャロームのような重要な検問所が閉鎖されたため、支援物資の輸送は非常に困難で、私たちのチームも限界を超え、ガザで死に直面しています」と述べ、ガザの状況は「パレスチナの人々に取り返しのつかない結果をもたらす」かもしれないと付け加えた。

イスラエル国防軍とハマスの武装勢力はガザのいくつかの地域で戦闘を繰り広げている。(AFP)

「支援物資の配給に際し、現地の仲間たちは極度のリスクにさらされています。水のような基本的な必需品でさえ、死に物狂いの人々の闘争や緊張を引き起こしています。支援不足が水をめぐる必死の闘争を引き起こし、社会構造を引き裂いています」

世界食糧計画(WFP)の推定によると、ガザ北部で1日に入手できる安全な飲料水は1人あたり平均1.8リットルで、南部では2リットルだ。

「飢餓に反対するアクション」のサッカルディ氏は、「(人体は)このような少量の水では生き延びられない」と述べた。

サイエ氏は、「イスラエル政府の攻勢が激しく、包囲が続いているため、人道支援を差し伸べたくてもなかなかできません」と嘆いた。

「効果的な仕事ができません。人々は非常に狭い地域にぎゅうぎゅう詰めで、基本的必需品や、生きていくのに最低限必要なものから切り離されています」と彼女は語った。

7日のブリーフィングに出席した担当者たちは、さらなる民間人の死亡を防ぎ、人道危機の深刻化を食い止め、現地の状況が完全に崩壊するのを回避するための、国際社会の即時介入を求めた。

「アムネスティ・インターナショナルUS」の政府関係担当ディレクター、アマンダ・クラシング氏は、「武器が暴力行為に使用される実質的なリスクがなくなり、効果的な説明責任メカニズムが確立されるまで、イスラエル、ハマス、その他のパレスチナ武装勢力に対する、国連安全保障理事会による包括的な武器禁輸措置」を実施するよう求めた。

安保理による武器禁輸措置が実施されない場合、クラシング氏は各国、特に米国に「直ちに独自の停止措置をとる」よう求めた。

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